歯科検診の診断結果を示す専門用語「CO」「C1」など、聞いても意味まで分かる方は少ないと思います。用語の意味がずっと気になっていた方、これから歯科検診を受ける方へ、気になる歯科検診の用語を紹介しましょう。
なお、用語や記号の使い方は、場合によって一部変わることもあります。歯科検診の結果で不明な点は、歯医者さんに確認しましょう。
この記事の目次
1.歯科検診の用語を覚えよう
1-1 歯の状態
◆乳歯と永久歯を指す用語
歯の一本一本には、アルファベットや数字が振られています。前歯から始まり、左右上下それぞれの奥歯へ向かう順番になっています。
乳歯 | A → B → C → D → E |
永久歯 | 1 → 2 → 3 → 4 → 5 → 6 → 7 → 8 |
※8番は「親知らず」です。生まれつきない方もいます。
また、アルファベットや数字以外に、次のような名称があります。
分類 | 乳歯の名称 | 永久歯の名称 |
前歯 | A 乳中切歯 | 1 中切歯 |
B 乳側切歯 | 2 側切歯 | |
C 乳犬歯 | 3 犬歯(糸切り歯) | |
奥歯 | D 第一乳臼歯 | 4 第一小臼歯 |
E 第二乳臼歯 | 5 第二小臼歯 | |
6 第一大臼歯 | ||
7 第二大臼歯 | ||
8 第三大臼歯(親知らず) |
◆歯並びを指す用語
M | 歯並びが悪い |
MO | 歯並びが少し悪い |
◆虫歯以外の状態を示す用語
記号の例 | 主な意味 |
/ | 現在歯、健全歯(虫歯になったことがない歯) |
- | 健全歯(連続している場合にまとめて「-」を用いることがある) |
〇 | 虫歯治療が済んでいる歯 |
× | 補綴処置不要の永久歯(学校の歯科検診などでは「要注意乳歯」の意味) |
シ | シーラント処置済みの歯 |
△ | 喪失歯(欠損歯・虫歯で失った永久歯・補綴が必要な歯) |
▲ | 虫歯以外が原因の喪失歯 |
無印 | 外傷や便宜的な抜歯による喪失歯・乳歯の喪失歯 |
(△) | インプラントを施した喪失歯・欠損が補綴されている歯 |
※例えば歯科検診では「右上の〇番~〇番が/(斜線)」などと伝えてくれます。
※補綴(ほてつ)とは、入れ歯や被せものなどで欠損した部分を補うことを言います。
※シーラントとは、主に乳歯の奥歯の溝を、プラスチック樹脂で埋めて虫歯予防する処置です。
◆虫歯を指す用語
虫歯は、口の中に入った糖分を虫歯菌が食べ、出した酸で歯を溶かすことでなります。以下の表は虫歯の進行状態を表しています。数字が大きいほど症状は重いです。
用語 | 虫歯の進行状態 |
CO | 虫歯になりかけの状態。歯磨きなどでしっかりケアすることで、自然に治る可能性があります。 |
C1 | 虫歯菌が表面のエナメル質を溶かして浅い穴をあけた状態。痛みを感じることは少ないです。 |
C2 | エナメル質の内側にある象牙質まで虫歯菌が進んだ状態。何らかの刺激でしみることがあります。 |
C3 | 虫歯菌が象牙質を破壊して、奥にある歯髄にまで進行している状態。常に痛みを感じます。痛みの度合いは個人差があります。 |
C4 | 虫歯の最終段階。歯髄が死んでしまい、歯冠部まで溶けた状態。痛みはもう感じられなくなりますが、虫歯は進行し続けます。 |
※「C」の語源は英語の「Caries(カリエス=虫歯)」です。
※「CO」の「O」は「observation(オブザベーション=観察)」です。
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1-2 歯茎の状態
歯茎の状態は「プローブ」という専用器具で測ります。歯周ポケット(歯と歯茎の境目にある溝)がどれだけ深いかで、歯周病の進行が分かります。数字が大きいほど症状は重いです。
歯周ポケットの深さ | 進行状態と主な症状 |
P1(3mm以下) | 正常な状態です。 |
P2(4~6mm程度) | 初期~中期の歯周病。歯のぐらつき、出血、腫れなどの症状が見られます。 |
P3(7~9mm以上) | 重度の歯周病。歯のぐらつき、出血、膿、口臭などの症状が見られます。 |
※「P」の語源は英語の「Periodontitis(ペリオドンタイティス=歯周炎)」です。
また、歯茎の検査と一緒に、歯肉の炎症の有無も分かります。
G | 歯肉炎 |
GO | 軽い歯肉炎(歯周疾患要観察者) |
※「G」の語源は英語の「Gingivitis(ジンジバイティス=歯肉炎)」です。
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1-3 歯の動揺
歯がどれだけぐらぐら揺れているかを度数で表しています。数字が大きいほど抜けやすい状態です。
動揺度 | 状態 |
0 | ほとんど動かない状態(0.2mm以内)です。 |
1 | 軽度。0.2~1mm程度、前後に動く状態です。 |
2 | 中等度。1~2mm程度、前後・左右に動く状態です。 |
3 | 重度。2mm以上、前後・左右および垂直方向に動く状態です。 |
1-4 歯石
歯石とは、口の中に残った歯垢(プラーク)が、唾液中のカルシウムなどのミネラル成分と結びついて石灰化し硬くなったものです。歯石は歯磨きでは落とせず、付着したままになると歯周病のもとになります。
記号 | 状態 |
ZS | 歯石沈着(歯茎の炎症はない) |
2.歯科検診ですること
ここからは、歯科検診でチェックする4つのことをお伝えします。虫歯の早期発見や虫歯予防に欠かせない歯科検診は、良いことがたくさんあります。虫歯の進行が重くなってからでは、治療の時間も費用もかかってしまいます。
2-1 虫歯があるかチェック
◆日頃どれだけ磨き残しがあるか分かる
虫歯のほとんどは磨き残しが原因です。歯科検診では、薬剤で歯垢を染め出し、どれだけ磨き残しがあるかを調べたうえで、歯のブラッシング指導をしてくれます。
◆虫歯がどれだけあるか判明する
虫歯は症状の進行によっては自覚できない場合があります。C2までの虫歯の状態で歯医者さんに診てもらえれば、歯をあまり削らなくて済みますし、治療の期間も短くて済みます。
C2とC3の間には、治療にかかる負担に大きな開きがあるので、早期発見を心がけましょう。
2-2 歯並びのチェック
歯並びに問題があると、磨き残しが多くなって虫歯や歯周病になりやすくなります。顎の発育に悪影響を与えたり、顔の形のバランスが崩れたり、滑舌が悪くなったりすることもあります。
歯医者さんで歯並びに問題があると判断されたら、矯正治療も含めて改善方法を相談してみましょう。
かみ合わせが正常でないことを、正式には「不正咬合(ふせいこうごう)」と言います。不正咬合の代表的なパターンは次の通りです。
◆叢生(そうせい)
八重歯、乱杭歯(らんぐいば)とも呼ばれます。生えてくる歯が大きかったり、顎の幅が小さかったりして、歯が生えるスペースが足りないことで、でこぼこな歯並びになってしまいます。
◆上顎前突(じょうがくぜんとつ)
出っ歯とも呼ばれます。前歯や上顎の骨が前に出すぎているため、前歯の傾きが目立ってしまいます。
◆反対咬合(はんたいこうごう)
受け口とも呼ばれます。下の前歯あるいは下顎の骨が前に出すぎている状態です。下顎の骨が原因の場合で治療を検討する際は、骨の成長との兼ね合いも含め、適したタイミングを歯医者さんとよく相談しましょう。
◆開口(かいこう)
口を閉じたときに奥歯の数本しかかめずに、前歯が上下にかみ合わない状態です。前歯がかみ合わないと、発音や力の分散などにも悪影響を与えることがあります。
特に成長期に開口を放っておくと、顎の骨格の変形にもつながると言われています。
2-3 歯石がどれだけあるかチェック
歯石は歯にこびりついていて、どんなにブラッシングしても落とせません。無理に強く擦っても、歯の表面が傷ついてしまうことがあります。
歯石の表面はザラザラしており、細かい凹凸がいくつもあるため、歯垢が溜まりやすいです。その歯垢は2日ほどで石灰化が始まり、数日~数カ月かけて徐々に成熟した歯石へと変化していくと言われています。
このことからも、3カ月に一度の定期検診が、いかに大切かが分かります。
2-4 歯周病の進行をチェック
歯を失う原因として歯周病があげられます。
厚生労働省が発表した「平成28年歯科疾患実態調査結果の概要」によれば、歯周病の疑いがある人(4mm以上の歯周ポケット保有者)の割合は25歳以降で3割を超え、40代では4割、50代では5割という結果になっています。
虫歯と違い、進行しても強い痛みを感じることが少ないため、本人は気づかないことが多いです。
しかし、痛みを感じていなくても、歯が揺れると感じるときは注意が必要です。
歯が揺れる原因のほとんどは歯周病です。
歯周ポケットに溜まった歯垢を落とせないでいると、歯周病菌が増殖して炎症が起こり、歯茎が赤くなったり、腫れたりします。これが歯周病の初期症状です。
進行すると、歯周ポケットがどんどん深くなります。
歯周病が進行すると歯を支える骨が溶かされ、歯がグラグラするようになります。歯を支えられなくなると自然に抜け落ちたてしまったり、他の歯を守るために抜歯しなければならなかったりします。
歯周病の進行を止めることが、歯の寿命を延ばすことに直結するのです。
【参考】厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査」
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3.まとめ
歯科検診は、虫歯や歯周病の予防のため定期的に受けることが大切です。その際、歯科検診の用語を知っておくと、歯医者さんの説明がよく分かりますし、日頃から自分の歯の状態への関心が高まるでしょう。
虫歯予防は、自分の歯の状態をよく知るところから始まります。
虫歯も歯周病も一度罹ってしまうと元に戻らない病気です。細目に検診を受け、早期発見・早期治療を心がけましょう。
執筆者:
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