ひどい虫歯の治療法と費用+虫歯がひどくなると起きる悪影響

ひどい虫歯で歯がボロボロ。けれど歯医者さんに行くのは恥ずかしい、人前で口を開けるのも躊躇してしまう。それに歯医者さんは怖いし…という人もいるかもしれません。また、自分の虫歯は治療可能なのか抜歯になるのか、治療費はどのくらいかなど、不安も尽きないものです。

この記事では、ひどい虫歯の治療法と費用の目安とともに、知っておきたい虫歯の知識も解説しています。ひどい虫歯でも治療法はあるはずです。ぜひ参考にして、自分に合った治療法を見つけてください。

この記事の目次

1.ひどい虫歯の治療法

虫歯菌が、神経や血管が入っている「歯髄腔(しずいくう)」にまで感染している場合、抜髄や抜歯が必要になる可能性があります。

1-1 抜歯

虫歯で歯を抜くのは、髄床底(ずいしょうてい=歯髄の底で、歯の床にあたる部分)まで感染しているケースや、治療が困難と診断されたケースなどです。

抜歯により失われた「歯の機能を取り戻すための方法」には、次のようなものがあります。

■部分入れ歯

大きな欠損やいちばん奥の歯など、ブリッジが適用できない場合でも失った歯の機能を補える方法が「部分入れ歯」です。残っている歯に、金属などの止めがね(クラスプ)をかけて、人工歯を固定します。

メリット
・取り外して洗浄剤で洗えるため清潔さを保ちやすい
・保険のものなら安価に作れる
・クラスプをかける歯を削る必要がない
・連続した歯など大きな欠損でも適用できる
・他の方法と比べて治療期間が短く済むことが多い
デメリット
・口を開けたときに金属が見えてしまうことがある
・健康な歯に比べて噛む力が弱くなる
・強度を保つため厚めに作られており異物感となることがある
・入れ歯や土台となる歯の定期的なメンテナンスが必要
・金属以外のクラスプを希望する場合は保険外になる

■ブリッジ

抜いた歯の両隣の歯を削って土台とし、人工歯をつなげて両隣から橋を架けるようにかぶせる治療法です。

メリット
・保険が適用される症例であれば安く済むことが多い
・入れ歯と比べて異物感が少なく噛む力も強くなる
・固定式なので取り外しの手間がかからない
・天然歯に近い自然な見た目になる(保険外の場合)
・インプラントよりも治療期間が短く済む
デメリット
・土台のために削った健康な歯の寿命が短くなるおそれがある
・2本の歯で3本分の噛む力を支えるなど、土台の歯に負担がかかる
・保険で使える素材や適用可能な歯は限られている(白い歯は前から3番目までなど)
・保険外では白い材料が使用できるが費用が高くなる
・装着している部分と歯茎との間が不衛生になりがちなためブラッシングが重要

■インプラント

人工の歯根(インプラント)を顎の骨に埋め込み、上部に義歯をつける治療法です。

メリット
・ブリッジと違い、健康な歯を削らずに治療が可能
・顎の骨に土台を固定するためクラスプが不要で異物感もない
・噛む力を損なわないため硬いものでも噛める
・残っている歯には負担がかからない
・天然歯と変わらない見た目にできる
デメリット
・インプラントを埋め込むためには手術が必要
・原則として保険外のため高額な治療費がかかる
・治療期間が長期にわたる場合がある
・土台(顎の骨)の状態によっては適用できないことがある
・ケアやメンテナンスを怠ると「インプラント周囲炎」を招くことがある

1-2 抜歯以外の治療法

歯の中にある神経や血管が通る「歯髄腔」まで虫歯菌が侵入していても、感染の度合いにより抜歯せずに済むことがあります。

その場合、歯髄(神経)を取りのぞく「抜髄(ばつずい)」、そして歯髄や歯の内部をきれいに洗浄・消毒して薬剤を詰める「根管治療」をおこないます。

抜髄や根管治療が必要になるのは、以下のような状態です。

■神経を取り除かなければならない状態

以下のような状態を放置すると、歯の根の方まで虫歯が進行して膿が溜まり、突然激しい痛みを感じたりすることもあるため、注意が必要です。

・虫歯が深く、歯髄にまで達している
・すでに歯髄が死んだり腐敗したりしている
・歯髄がひどい炎症を起こし、激しい痛みがある
・歯の打撲や破折で歯髄が断裂したり感染を起こしたりしている

抜髄・根管治療をした歯の機能を取り戻すには、次のような方法があります

■根管治療後の治療

A:クラウン法

クラウンとは「被せもの」のことです。虫歯による歯冠の欠損が大きい場合に適用される治療です。根管治療をした人の多くは、この方法で欠損部分を補います。クラウンには、例えば次のような種類があります。

-硬質レジン前装冠-
金属のフレームの上にレジン(樹脂)を被せたものです。前歯のみ保険内です。

-オールメタルクラウン-
金属のみで作られた、いわゆる「銀歯」です。奥歯のみ保険内です。

-オールセラミッククラウン-
セラミックのみで作られた被せものです。原則として保険外になります。

-CAD/CAM冠(ハイブリッドセラミッククラウン)-
CAD/CAMと呼ばれるシステムを用いて作られた、セラミックとレジンが混ざり合っている被せものです。保険のケースと保険外のケースがあります。

B:インレー法

インレーとは「金属の詰めもの」です。奥歯の歯冠の欠損がそれほど大きくない場合に適用される方法で、前歯に入れることは基本的にありません。保険のものは「メタルインレー」、保険外のものは「ゴールドインレー」「セラミックインレー」などがあります。

C:レジン法

レジンとは「樹脂(プラスチック製)の詰めもの」です。歯冠の欠損が小さい場合に適用されます。前歯にも奥歯にも使えるうえ、原則として保険が使えます(歯医者さんや施術の内容などにより、保険外のケースもあります)。

1-3 ひどい虫歯でも抜歯をしない治療法とは?

これまで、ひどい虫歯は「抜歯して義歯にする方法」が主流でしたが、現在ではできるだけ自分の歯を残すという方向で技術が進んでいます。

■クラウンレングスニング治療

歯茎を少し下げて、歯茎の下にある歯根の部分を出し、そこに土台を立てて被せものをする治療法です。

歯冠がほとんどなく、歯茎が覆いかぶさった状態になるひどい虫歯では、土台が作れないためほとんどの場合で抜歯になります。しかし、クラウンレングスニング治療を適用すれば、抜歯をせずに治療できる可能性が高くなります。

■エクストルージョン治療

エクストルージョンとは、歯科矯正を応用した治療法です。矯正力で歯を引っ張り出すことで「歯根」を露出させて土台を立てます。そのうえに被せものをして歯冠を作る治療法です。

2.ひどい虫歯の治療費

2-1 虫歯の数と状態により異なる

虫歯の本数あるいは深さには個人差があるため、具体的な治療費はさまざまです。ただし、もちろん虫歯がひどければ治療期間が長くなり、それに応じて治療費も高くなるといえるでしょう。

根管治療では、虫歯1本の治療費は保険内で2000円~5000円程度、保険外で14万円前後が目安となります。また、抜歯する治療では保険内で1000円~1万円程度が目安です。

あくまでも目安で、初診料や検査費用、被せものなどの作製費用などにより、実際の治療費は異なります。

2-2 「保険」が使える治療と使えない治療

虫歯の治療には「保険診療」と「自由診療」があります。歯科治療はほとんどが保険内でできますが、全てではありませんので注意してください。

■「保険内」と「保険外」の違い

保険診療は、国が定めた制度のもとでおこないます。保険が適用されるため費用は抑えられますが、材料や治療法が限られています。これに対し、自由診療では材料や治療法に制限はありません。しかし、保険が適用されないため、治療費は自由診療となります。

■保険外の歯科治療とは?

-予防のための施術-
保険は「治療」が必要とされる虫歯や歯周病といった病気に対して適用されるため、予防には使えません。

-見た目をよくすることが目的の治療-
治療ではなく、美容面のみを目的とした白い被せもの・ホワイトニング・矯正などは原則として保険が利きません。より良い使い心地を目的としたインプラントなどの治療も、原則として保険は適用されません。

-新しい治療法-
先進医療といった新しい治療法の多くは、保険が適用されません。臨床研究などを経て、何年か経過してから保険適用になることがあります。

2-3 高額な歯科治療費は医療費控除で還付

医療費控除とは、本人あるいは家族が1年間に支払った医療費が10万円を超える場合に、確定申告で税金の還付が受けられることがある制度です。その年の総所得が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得の5%を超える場合に、医療費控除の対象になります。

計算対象になる「支払った医療費」とは、保険が適用されない部分、実際に患者さんが支払った金額を指します。

歯科治療も含まれますが、全ての治療が対象となるわけではありません。特に、美容のみを目的とした処置は、基本的に対象外となります。

「実際に支払った医療費の合計」-「保険などで補填される金額」-「10万円(※)」

※その年の総所得が200万円未満の人は、総所得の5%

■医療費控除の対象となる歯科治療の例

・虫歯や歯周病治療
・被せものや入れ歯などの義歯(保険外の金やセラミックも対象)
・年齢や目的などからみて必要と認められた矯正治療
・インプラント治療
・エムドゲインや骨移植などの保険外治療
・交通機関を利用した際の交通費(自家用車のガソリン代や駐車場代などは対象外) など

■医療費控除の申請について

-申請期間-
毎年2月16日~3月15日(※)
※2月16日が休日の場合は翌平日からとなります。また、3月15日が土曜日の場合は翌々日、日曜日あるいは祝日の場合は翌日まで申請が可能です。

-申請先-
所轄の税務署

-申請に必要なもの-
医療費控除の明細書(平成29年~31年分までの確定申告については、申請の前年1月1日~12月31日の間に発行された医療費の領収書でも可)、交通費のメモ(氏名・理由・日付、利用した交通機関・金額などを記載)、印鑑、給与所得者の源泉徴収票、マイナンバー確認書類、確定申告書など

■医療控除のヒント

医療費控除は、家族の中でもっとも所得の高い人が申請した方が、より高い節税効果が見込めます。また、申請を忘れてしまった場合でも、5年以内であればさかのぼって申請できます。該当する人はぜひ申請しましょう。

※医療費控除に関する情報は執筆時点のものです。制度を利用する際は、税務署または国税庁のホームページなどでご確認ください。
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)

3.虫歯をひどくする原因とひどい虫歯による弊害

虫歯の原因は「歯垢(プラーク)」です。

歯垢は食べカスではなく細菌の塊で、この細菌が口の中の糖を分解して作る「酸」が歯の表面を溶かしてしまいます。一度溶けた歯は、ごく初期の段階を除いて自然治癒することはありませんので、早めの治療が大切なのです。

3-1 虫歯をひどくしてしまう人の傾向

歯をあまり磨かない人や、甘いものをダラダラ食べる習慣がある人は虫歯になりやすいので、この機会に見直しましょう。

「痛みが出てからしか歯医者さんを受診しない」「忙しくてつい後回しにしてしまう」という人も多いですが、痛みが出る頃にはすでに虫歯が進んでいます。

虫歯をひどくしてしまう原因になりますので、そういった人はぜひ、この機会に定期健診を検討しましょう。

そのほか、次に挙げるような「歯科恐怖症」の人もいます。虫歯をひどくしてしまう“心理的な原因”のひとつと言えます。

3-2 「歯科恐怖症」

歯科恐怖症とは、過去の不快な治療経験がトラウマとなり、治療だけでなく歯科自体に恐怖を感じ、心と体が過剰反応する現象です。ひどい場合は、緊張で極度の脂汗をかいたり、震えが止まらなくなったり、呼吸困難を起こしたりすることもあります。

そのため歯科恐怖症の方は、虫歯や痛みがあっても歯科治療を後回しにしてしまい、ひどい虫歯を引き起こすことが少なくありません。虫歯がひどくなれば、それだけ治療にも時間がかかり、歯科恐怖症の方にとっては悪循環となるばかりです。

しっかり治療するためには、この悪循環を断ち切り、心と体の過剰反応を修正する必要があります。

最近では「痛みへの配慮」を取り入れている歯医者さんや、治療の前に十分なカウンセリングをおこなうことで、苦手な気持ちを軽減できるよう尽くしてくれる歯医者さんも増えています。上手く活用して、歯科恐怖症を克服しましょう。

3-3 ひどい虫歯による弊害

ひどい虫歯は歯髄まで細菌感染が広がっている場合が多く、根管治療が必要なケースも少なくありません。根管治療には時間がかかり、精神的にも金銭的にも負担が大きくなります。

また、体調を崩したときや抵抗力が衰えたときに歯の痛みや腫れが出ることが多く、ひどい虫歯が引き金となり口内から細菌が体内に入り込んで、病気を引き起こす場合もあります。

これらの弊害を避けるためにも、ひどい虫歯は放置せずに、できるだけ早く歯医者さんを受診するようにしましょう。

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4.虫歯治療後の注意点

4-1 虫歯のできにくい環境を作る

虫歯のできにくい環境を作ることが大切です。まず、口の中の歯垢(プラーク=細菌)を減らすことを心がけましょう。

「プラークコントロール=歯磨き」と思われがちですが、歯磨きで全てのプラークを取り除くことはできません。デンタルフロスや歯間ブラシなども使用して、口内を清潔に保つことが大切です。

4-2 定期健診を受ける

ひどい虫歯を治療した後は、再発しないように3~6カ月毎に定期健診を受けることをおすすめします。虫歯の有無、歯のクリーニング、歯石取り、フッ素塗布などのメンテナンスを受けることが可能です。

基本は、メンテナンスは保険外の治療となり、1回あたりの費用は5000円~1万円前後が目安となります。

5.まとめ

ひどい虫歯でも治療は可能なうえ、医療技術も進化して抜歯をせずに自分の歯を残すこともできるようになってきています。

費用に関しては一概にいえませんが、虫歯の状態と予算、保険内でできる治療とできない治療を考慮し、歯医者さんと相談のうえで治療を進めることが大切です。

また、高額な医療費を支払った場合は、医療費控除を申請することも検討しましょう。同時に、虫歯に関する知識を身につけ、ひどい虫歯の再発を防ぐようにすることも重要です。

経歴

1987年 日本歯科大学 卒業
1987年~1996年12月 氷川下セツルメント病院歯科勤務
1997年 歯科大橋 開業
現在に至る

執筆者:歯の教科書 編集部

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