歯の色にはそもそも個人差があります。
歯の形をつくる「象牙質(ぞうげしつ)」が本来の歯の色を決めていますが、一人ひとりの肌色が違うように、象牙質の色も違うためです。肌や髪の色とのバランスがいい色が、自分に適している歯の色とも言われています。
しかし、さまざまな原因によって、歯が茶色くなることがあります。変色の理由は主に7つあり、いずれも日常的に、誰にでも起こりえます。
この記事では、歯が茶色く変色する主な原因と対処法・自宅での予防法を紹介します。
この記事の目次
1.歯を茶色くする7つの主な原因
1-1 ステインによる変色
ステインとは、歯の着色汚れのことです。
象牙質を覆う歯の表面「エナメル質」に、食べ物や嗜好品などの色素が付着・蓄積し、茶色く変色してしまうことがあります。
付着したばかりの色素は、歯磨きやうがいで取り除けることもありますが、色素が付きやすいものを日常的に摂取していると蓄積してしまい、自宅でのケアでは落ちにくくなることがあります。
・ステインの元となる飲食物や嗜好品
コーヒー、紅茶、赤ワイン、チョコレート、カレーなど、色素の強い食べ物はステインの元です。
例えば、コーヒーならタンニンとカテキン、チョコレートならポリフェノールなどによって歯が着色されます。
これらを食べたあとは、蓄積を少しでも防ぐためにこまめな口内ケアを心がけましょう。
また、食べ物ではなくタバコのヤニなども、ステインの元となることがあります。
1-2 加齢による変色
加齢による老化現象のひとつとして、象牙質の色が濃くなったり、エナメル質が薄くなったりして歯が茶色く見えるようになることがあります。
歯茎が下がって象牙質の露出が増えると、より茶色や黄ばんで見えるようになります。
変色の度合いには個人差がありますが、加齢による老化現象のため防ぐことは難しいです。
1-3 脱灰(だっかい)による変色
「脱灰」とは、歯のエナメル質からカルシウムやリンといったミネラル成分が溶け出すことです。
飲食物に含まれる酸や、虫歯菌が作り出す酸によって起こります。
唾液の働きで溶けたミネラル成分が補われ、元の歯に修復されることを「再石灰化」と言います。
脱灰と再石灰化は日常的に繰り返し起こるため、健康的な口内を維持できています。
しかし、甘いものの食べ過ぎなどで再石灰化が追いつかなくなると、脱灰が進んでエナメル質の輝きが損なわれ、歯が茶色く見えてしまうことがあります。
脱灰が進むと虫歯になることから「虫歯の初期症状」と言われることもあります。
1-4 虫歯による変色
脱灰が進み、穴が開くほどの虫歯になると、菌の増殖などによって歯が茶色や黒色に変色していきます。
その時点では痛みがなくても、放置すれば悪化して痛みが出るようになります。
気づいた段階でできるだけ早く歯医者さんを受診しましょう。
1-5 歯の神経が死んだことによる変色
虫歯治療や外的要因による損傷で歯の神経が死んでしまうことがあります。
神経が死んだ歯には十分な栄養が届かなくなり、少しずつ変色して茶色くなってしまうことがあります。
着色汚れではないため、ブラッシングで元の色に戻すことは期待できません。
1-6 抗生物質による変色
抗生物質の一種「テトラサイクリン」が原因となって歯が茶色くなることがあります。
テトラサイクリンは、現在では使われることが少なくなりましたが、以前はマイコプラズマ肺炎や百日咳などの治療に用いる抗生物質に使われていました。
歯が生える時期(8歳頃まで)に多量摂取すると、人によっては歯が茶色やグレー、縞模様などに変色してしまうことがあると言われています。
また、妊娠中のお母さんが服用したことで、子どもの歯が変色することもあるようです。
1-7 詰め物の劣化による変色
詰め物を長期間使用していると、経年劣化や色素沈着により茶色くなってしまうことがあります。
表面を磨けば元の色に近づけることもできますが、内部まで変色しているケースも少なくないようです。
2.茶色くなった歯に対して歯医者さんでできる処置
- ■茶色く変色する原因と改善が期待できる処置の例
・ステインによる変色…クリーニング、ホワイトニング
・加齢による変色…ホワイトニング、コーティング
・脱灰による変色…フッ素塗布(再石灰化)
・虫歯による変色…虫歯治療
・神経が死んだことによる変色…ホワイトニング、セラミック
・抗生物質による変色…コーティング、セラミック
・詰め物の劣化による変色…詰め物を削る、作り直す
※この処置で必ずしも改善するとは限りません。歯質や変色の度合い、その他の条件などにより、処置を受けられないケースや、思ったほどの改善が期待できないケースもあります。まずは歯医者さんを受診し、自分の希望に合う処置があるか相談してみましょう。
2-1 クリーニング
エナメル質に付着した汚れを落とし、もとの歯の色を取り戻す施術です。
ステインや歯石が原因の茶色い変色などに有用です。
ただし、もとの歯の色以上に白くなることは期待できないため、人によってはイメージしていたような色にならないかもしれません。
2-2 ホワイトニング
ホワイトニングには2種類あります。
歯の表面にこびりついたステインなどの着色汚れが気になる場合はもちろん、加齢や神経が死んでしまったことによる茶色の変色に対してなど、幅広く解消が見込める場合もあります。
自分が希望する白さを選ぶことができます。
・オフィスホワイトニング
歯にホワイトニング専用の薬剤を塗り、レーザーなどの光を当てて歯を白くしていきます。
短い期間で白さを感じられます。
色が後戻りしやすいため、「ホームホワイトニング」と両方おこなうこともあります。
・ホームホワイトニング
毎日自分で2時間ほど薬剤を入れたマウスピースを装着し、2~4週間かけて歯を白くしていきます(※)。
マウスピースは歯医者さんで型取りして作製します。
装着中は目立たないので、運転しながら、テレビを見ながら、など時間を活用できます。
経済的負担をおさえられ、色も後戻りしにくいと言われています。
※人によっては1日おき、4時間~8時間など装着条件が異なります。詳しくは先生に教えてもらえます。
2-3 フッ素塗布
歯の表面にフッ素(フッ化物)を塗布する処置です。
主に虫歯予防の一環としておこなわれます。
フッ素には歯質を強化する作用や、歯の再石灰化を促進する作用、虫歯菌を抑制する作用などがあります。
脱灰などごく初期の虫歯が原因の変色であれば、フッ素塗布で再石灰化を促すことで改善されることがあります。
2-4 コーティング
歯が茶色く変色している部分に白いコーティング剤を塗る処置です。
歯のマニキュアと呼ばれることもあります。
変色が進行していて、ホワイトニングでは大きな変化が見込めないときに用いられることが多いようです。
変色が強い場合は、歯の表面を少し削ってから施術することもあります。
2-5 セラミックの治療
天然の歯と見分けがつかないほど精巧につくられた、人口歯(じんこうし)を取り付ける方法です。
神経が死んだりしたことによる茶色の変色、抗生物質による変色など、他の方法では対処が難しい原因の場合に用いられることがあります。
歯の表面にセラミックを貼り付けるラミネートベニアや、セラミックでできた被せ物(クラウン)を使った方法などがあります。
そのセラミックには、金属の被せ物にセラミックを付けた「メタルボンド」と、すべてセラミックでつくられた「オールセラミック」などの種類があります。
先生とよく相談しながら、自分が納得のいく方法を選びましょう。
2-6 虫歯治療・詰め物の入れ替え
穴が開いてしまっているほどの虫歯で茶色く変色している場合、フッ素塗布では改善が見込めません。
虫歯の部分を削り、詰め物や被せ物をするといった治療があります。
また、詰め物の劣化が原因の変色は、詰め物を新しくすることで対応できます。
詰め物の品質は年々進化しており、新しいものほど劣化が起こりにくいと言われています。
3.歯の変色を防ぐ自宅ケア
3-1 ステインの元となる飲食物の摂取量を減らす・ケアする
ステインの元となる飲食物の摂取量を減らすことは、歯の変色を直接的に予防する方法のひとつです。
日常的に色素が強い飲食物を摂取している人は、意識的に減らすなどの工夫をしましょう。
ただし、そうした飲食物のすべてを控えるのはなかなか難しいことです。
そこで、色素が強い飲食物を摂取したあとは歯磨きやうがいを習慣化するなどし、色素の付着や蓄積をできるだけ抑えるよう心がけましょう。
3-2 喫煙を控える
歯が茶色く変色している人で、喫煙が習慣化している人は、喫煙を控えることで改善が目指せます。
とはいえ、今すぐ禁煙するのは難しいという人も多くいます。
その場合、喫煙後はうがいをする、歯磨きをするといったことでヤニの付着を少しでも減らしながら、将来的な禁煙も視野に入れておくことをおすすめします。
3-3 ステイン除去用・ホワイトニング用の歯磨き粉を使う
近年、ステイン除去用、あるいはホワイトニング用といった歯磨き粉が続々と登場しており、コンビニやドラッグストアなどでも手軽に購入できるようになりました。
すでに付着しているステインを落としたり、新たに着色するのを防いだりする成分が含まれているので、毎日のブラッシングに用いて変色の改善や予防につなげましょう。
4.まとめ
歯が茶色に変色することは、誰にでも起こる可能性があります。
クリーニングやホワイトニング、コーティングなどの施術を受けて茶色かった歯が改善されても、生活習慣によっては再着色したり、少しずつ茶色く変色したりしてしまいます。
長く白い歯を維持するためにも、食習慣や歯磨きといったケアを見直すことや、歯医者さんで定期健診を受けることをおすすめします。
1987年 日本歯科大学 卒業
1987年~1996年12月 氷川下セツルメント病院歯科勤務
1997年 歯科大橋 開業
現在に至る
執筆者:
歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。