「歯がかゆい」「歯茎がムズムズする」というとき、歯茎の炎症が原因になっていることが少なくありません。症状が続くと集中力が落ちるなど、日常生活に影響をおよぼすこともあるため、早く何とかしたいと思う人も多いのではないでしょうか?
この記事では、歯や歯茎がかゆいと感じるときに考えられる6つの原因と、それぞれの原因に対する応急処置や治療法などを紹介していきます。
この記事の目次
1.歯や歯茎が“かゆい”以外の症状から考えられる原因
歯や歯茎がかゆいときに考えられる原因として「歯周病」「金属アレルギー」「口腔アレルギー症候群」「ごく初期の虫歯」「親知らず」「ストレス」などが挙げられます。
かゆみにともなう症状のあらわれ方や程度などは人によります。そのため自己判断で原因を特定することは難しいですが“かゆい”以外にあらわれている次のような症状から、原因をある程度絞り込むことができるかもしれません。
かゆみ以外にみられる症状 | 考えられる原因 |
歯茎の腫れ、歯茎からの出血 | 歯周病、親知らず |
口内炎など粘膜の荒れ、皮膚の炎症 | 金属アレルギー |
イガイガ・ヒリヒリした痛み、口の腫れ | 口腔アレルギー症候群 |
かゆみ以外に目立った症状がない | ごく初期の虫歯、親知らず、ストレス |
それぞれの原因に対する応急処置や治療法は、2章以降で詳しく説明していきます。
2.歯周病
【応急処置】
歯周病によって歯茎が炎症を起こしている場合、歯ブラシで歯や歯茎を“やさしく”マッサージしてみましょう。強めに擦ると歯茎を傷つけ、逆効果になってしまうことがあります。
歯磨きやデンタルフロス、歯間ブラシ、デンタルリンスを使ったケアなどで口腔内を清潔にしておきましょう。口の中の歯周病菌をなるべく減らすイメージです。
【原因】
歯周病は、磨き残した歯垢(プラーク)が歯と歯茎の間(歯周ポケット)に溜まり、そこで細菌が繁殖することによって発症します。歯茎の中で炎症が起こるため、かゆいと感じることがあります。
歯周病が進行して歯周炎になった場合も、歯茎がムズムズしてかゆいと感じることがあります。
【治療法】
歯医者さんで歯石を除去してもらうのが基本的な治療法です。併せて、自宅では丁寧なブラッシングを心がけ、歯周病の悪化を防ぎましょう。
歯周病は気づかないうちに症状が進行します。最悪のケースとして歯が抜け落ちてしまうため、歯茎に異変を感じたら、歯周病かどうかの診断も含めて一度、歯医者さんを受診することをおすすめします。
3.被せ物による金属アレルギー
【応急処置】
金属にアレルギー反応を起こしている可能性があるときは、考えられる原因物質との接触を避けるようにします。金属アレルギーは、口の中だけでなく、手や足、体にも症状がみられることがあります。
アクセサリーや入れ歯は外すことができますが、銀歯などは外すことができません。そのため、原因によっては応急処置が難しいこともあります。冷やしたり、ほかのことで気を紛らせたりするようにしてみましょう。
【原因】
銀歯は銀、銅、パラジウムなど複数の金属(パラジウム合金)で作られていることが多く、唾液によって反応を起こし、微量ながらイオン化する(溶け出す)ことがあります。
溶け出した金属が少しずつ体内に蓄積し、それまで金属アレルギーの症状がなかった人も、ある日突然アレルギー反応を起こすことがあります。
【治療法】
金属アレルギーかどうかの診断はパッチテストでおこないます。疑わしいときは、金属アレルギーと診断されたら、診断書を発行してもらうことができます。
症状がなかなか改善しないなど状況によっては、銀歯の代わりに金属以外の被せ物にするなどの対策が必要かも知れません。歯医者さんと相談しましょう。
4.口腔アレルギー症候群(食物アレルギーの一種)
【応急処置】
まずは原因となっている食物の摂取を避けることです。摂取後すぐに症状が出始めることが多いです。すでに病院に通っており、抗アレルギー薬を処方されている人は、医師や薬剤師から指示された用法用量を守って、正しく服用しましょう。
口腔アレルギー症候群の症状は重症化することは少ないと言われていますが、症状の出方は人によって差があります。万が一、息苦しい・意識が低下しているといった症状があれば、すぐに医療機関を受診しましょう。
【原因】
桃やメロン、キウイなど、果物や野菜に含まれる成分に対して免疫が過剰に反応し、口の中がイガイガしたりかゆくなったりすることがあります。
口腔アレルギー症候群は、花粉症とも関わりがあると言われています。花粉に含まれるタンパク質と似たタンパク質を含んだ食物があるためです。
花粉症の種類 | 口腔アレルギー症候群を招く恐れがある果物・野菜 |
ヒノキ科 (ヒノキ・スギ) |
トマト |
カバノキ科 (シラカンバ・ハンノキ) |
リンゴ・さくらんぼ・桃・アーモンド・セロリ・にんじん じゃがいも・大豆・ピーナツ・キウイ・マンゴー・スイカ あんず・ビワ・アボカド など |
イネ科 (オオアワガエリ・ホソムギ) |
メロン・スイカ・トマト・じゃがいも・キウイ・オレンジ など |
キク科 (ヨモギ・ブタクサ) |
セロリ・にんじん・マンゴー・メロン・スイカ・バナナ ズッキーニ・キュウリ など |
同じ科の植物でも、花粉の種類によってかゆみの原因となる食べ物は異なります。また、加熱したものより生で摂取したときに症状が出やすいと言われています。
【治療法】
原因となる食物を避けるとともに、抗アレルギー薬や、抗ヒスタミン薬を服用するのが基本です。はじめて症状が出たという人や、自分が口腔アレルギー症候群かどうか分からない人は、アレルギー科がある総合病院などで診てもらいましょう。
また、花粉症の人は花粉対策をしっかりおこない、症状がひどいときはアレルギー科や花粉症の治療に対応している医療機関を受診しましょう。
5.ごく初期の虫歯
【応急処置】
ごく初期の虫歯は、ほとんど痛みをともなわないため気づかないことが多いです。かゆいと感じる部分の歯の表面が白く濁ったように見えるなら、初期虫歯かもしれません。
応急処置としては、しっかり歯磨きをして口の中を清潔にすることです。このとき、フッ素配合の歯磨き粉を使用するのがおすすめです。フッ素には、歯の表面を修繕し、ごく初期の虫歯を改善する作用が期待できるからです。
【原因】
虫歯は、飲食物に含まれる酸や、虫歯菌が作り出す酸が、歯の表面を少しずつ溶かしていくことで進行します。ごく初期の段階で、歯や歯茎がかゆいと感じる人もいるようです。
【治療法】
ごく初期の虫歯は経過観察することが多いです。その間も、歯磨きといったセルフケアを丁寧におこないましょう。
歯医者さんでは「フッ素塗布」もおこなってくれます。歯にフッ素を塗って歯質を強化したり、ごく初期の虫歯を改善したりする処置です。費用は歯医者さんごとに異なるため、予約のときに確認すると良いでしょう。
穴があくほど進行すると自然治癒は期待できません。ごく初期の段階で進行を抑えるため、歯や歯茎がかゆいと感じ、かつ原因がよく分からないときは歯医者さんを受診することをおすすめします。
6.親知らず
【応急処置】
奥の歯茎にムズムズとしたかゆみを感じるようであれば、歯ブラシで歯茎を軽くマッサージしてあげましょう。腫れていたり痛みを感じたりする場合は、濡れタオルなどで患部を頬の外側から冷やしたり、市販の痛み止めを飲んだりして様子を見ましょう。
※市販薬を使用する際には、薬剤師の指示に従い、用法用量を守って使用してください。
【原因】
親知らずは、横向きや斜めなど、まっすぐに生えてこないことが多くあります。親知らずが生える向きや、生えようとするわずかな動きによって、歯茎などが刺激を受けてかゆいと感じることがあるようです。
【治療法】
親知らずがまっすぐに生えてこなかった場合、歯ブラシが届きにくく食べカスなどが溜まりやすい部分ができ、虫歯や歯周病にかかるリスクが高くなります。
また、生え方の問題で歯茎や隣の歯に与える影響が大きい場合、痛みが生じたり炎症が起こったりすることもあります。歯医者さんを受診して、抜歯するかどうかも含めて慎重に検討しましょう。
7.ストレス
【応急処置】
ストレスによって体に起こる反応には個人差があるため、適した応急処置は個人によって異なります。
とりいそぎ、かゆみに対しては、「濡れタオルや解熱シートなどで頬側から冷やす」「歯や歯茎を優しくブラッシングする」「口腔内を清潔に保つため殺菌作用のあるうがい薬でうがいをする」といった方法を試してみましょう。
ストレスで唾液の分泌量が減り、口腔内が乾燥するとかゆみを感じることもあります。
【原因】
ストレスによって直接的に歯や歯茎がかゆくなる訳ではありませんが、免疫力が低下したタイミングで、歯茎がかゆいと感じる人もいるようです。
また、ストレスに起因する歯ぎしりや食いしばりは、歯に強い圧力がかかります。神経や歯茎などが刺激を受け、ムズムズしたり、かゆいと感じたりすることがあります。
【治療法】
気持ちを落ち着ける時間を作ったり、適度な息抜きを採りいれたりなど、自分に合った“疲労やストレスを溜め込まない方法”を探しておきましょう。生活リズムが乱れている人は、規則正しい生活を心がけることも大切です。
精神的なことが原因の場合、心療内科などの受診を検討しても良いでしょう。
また、歯ぎしりや食いしばりがある人は、歯医者さんに相談し、自分の口に合ったマウスピースを作製してもらうと歯にかかる負担が軽減できることがあります。
8.まとめ
歯や歯茎がかゆいと感じるとき、さまざまな原因が考えられます。自己判断で誤った対処をしてしまうと、症状が悪化してしまうことがあります。
原因がはっきりしないまま歯や歯茎がかゆい状態が続くとき、まずは歯医者さんを受診して先生に相談しましょう。そのためにも、かかりつけの歯医者さんを見つけておくことをおすすめします。
歯医者さんで定期健診を受けておけば、歯や歯茎の異常を予防・早期改善できることもあります。
口の中の不調や違和感を人に伝えるのは難しいことだと思います。歯がかゆいという表現が正しいかはわかりませんが、皆様によってさまざまな表現をされることが多いです。異常を感じた場合はまずは歯科医師にゆっくりと話を聞いてもらうとよいと考えます。
執筆者:
歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。