親知らずを今から抜こうとしている方や、今さっき抜いたという方の中には、すこし小腹がすいてきたという方もいらっしゃるのでは?
でも、麻酔が切れるまではガマンが必要です!この記事では、親知らずを抜いた後に食事をとるタイミングやNGな食べ物、注意点をまとめています。
この記事の目次
1.親知らず抜歯後はじめての食事について
1-1 最初の食事は麻酔が切れてから
食事をするタイミングは、麻酔が切れてからにしましょう。麻酔は抜歯後2~3時間で切れるので、それまではお腹が空いても我慢しましょう。
何か飲みたい場合は、常温または冷たい飲み物を選ぶようにしましょう。ただし、口の中で血の味がするなど出血中は、飲み物を飲むのもNGです。出血量が増やしてしまったり、血がなかなか止まらなくなってしまいます。
1-2 麻酔が切れる前に食事をとるデメリット
◆ケガをしてしまう恐れ
麻酔が切れないうちに、食事をすると、舌や頬の内側の粘膜を噛んでしまってケガをしてしまう恐れがあります!
とくに、下の親知らずを抜いた場合は気を付けてください。なぜなら、下アゴの奥は麻酔が効きにくいため『伝達麻酔』という麻酔を使用することが多く、ふつうの麻酔(浸潤麻酔)と比べて麻酔が効く範囲が広いからです。
◆やけどをしてしまう恐れ
麻酔が効いているときは、温度の感覚もマヒしているので、やけどをしてしまう恐れがあります。
「スープなら大丈夫なのでは?」と思って、熱いスープを飲もうとしている方、注意してください。麻酔が効いていると、温度の感覚がマヒし、熱すぎるスープを口の中に長くとどめてしまうので、やけどをしてしまうリスクがあるんです。
1-3 麻酔が切れる前にしておくこと
◆傷口にあてるガーゼを30分間噛む
親知らずを抜いたときに、歯医者さんで「30分くらい噛んでいてください」と、ガーゼを噛まされるはずです。なかには、面倒だからとすぐに吐き出してしまう人もいらっしゃるようですが、きちんと30分間噛んでいてください。
ガーゼを噛むと、『圧迫止血』といって、傷口にガーゼ・脱脂綿を押しあてて止血を早めることができます。30分間きちんと噛んでいれば早く血がとまります。
しかし、30分を超えてもいけません!今度は、ガーゼに唾液が溜まりすぎて、かえって止血を遅らせてしまうからです。
◆痛み止めの服用
麻酔が切れると、それまで麻酔のおかげで抜いた後の痛みを感じていなかった傷口の痛みが出始めます。なので、歯医者さんで処方された鎮痛剤を麻酔が切れる前に服用してください。
なぜそのタイミングなのかというと、痛みが出てきてから服用すると鎮痛剤の作用を実感しにくいからです。痛みが出てきてからだと感覚が過敏になってしまい、薬の効き目が弱くなったり、効き始めるのが遅くなってしまうからです。
2.抜歯後の食事での注意点
2-1 治りが遅れる!ドライソケットのリスク
親知らずの抜歯後に気を付けなければいけないのは、『ドライソケット』を引き起こしてしまわないように食事をすることです。
『ドライソケット』とは、傷口がうまくふさがらずに歯を支える骨である『歯槽骨』まで直通の穴が空いたままふさがらず、激しい痛みが続いてしまう状態のことです。
ふつう、抜歯後の傷口は『血餅(けっぺい)』とよばれるゼリー状に固まった血液でふさがれていき、これは『かさぶた』と同じように傷口を保護したり修復してくれるもので、痛みも2~3日で緩和され1週間もすれば解消されるのですが、ドライソケットになってしまうと、治りが大きく遅れてしまいます。抜歯2~3日後には痛みが悪化し、痛みの解消まで1か月ほどかかる場合もあります。
ドライソケットにならないように、食事についてのアドバイスを参考にしてみてください。
2-2 抜歯後にNGな食事
◆アルコール類
もっとも避けたいのは、アルコール類です。アルコールは、血管を拡張させ、血の巡りをよくする働きがあるので、摂取すれば傷口からの出血量を増やすことになってしまいます。
出血量が増えると、血液がなかなか固まらず、抜歯後の穴をふさぐかさぶたのような役目を果たす『血餅(けっぺい)』ができにくくなります。
◆硬い食べ物(おせんべい・バゲットなど)
おせんべい・バゲットに代表されるような「硬く、歯ごたえの強い食品」は避けてください。噛んだときに破片になるような食べ物をたべてしまうと、その破片が傷口に食い込んでしまいます。
また、傷口をふさぐ『血餅』は外れやすいです。硬いものを食べて傷口に刺激を与えるのは治りがおそくなってしまう原因です。
◆「吸う動作」が必要な食べ物(うどん、スパウトパック類)
うどんやラーメン、スパウトパック※に入った栄養食品などを食べるときの、「すする」、「吸う」という動作は、傷口の『血餅』を同時に吸い出してしまう恐れがあるのでNGです!ストローで飲み物を飲むのも避けましょう。
※スパウトパックとは:栄養食品・ゼリーなどが代表的な、アルミ製のパウチに入った食品のこと。
◆香辛料などの刺激物
カレーやキムチ、香辛料などを使った食品は、出血量を増やしたり、『血餅』に刺激を与えることは直接的にはありませんが、傷口に刺激をあたえると痛みを感じることがあるので、あまりおすすめしません。
また、香辛料の刺激で痛みが走ったとき、辛味成分を流そうと「ブクブクうがいをする」のはNGです。ブクブクうがいの物理的刺激で、血餅が外れることがあります。この場合のリスクまで加味するなら、「間接的にではあるものの、香辛料はドライソケットのリスクを上げる」と表現しても良いと思います。
3.抜歯後におすすめの食事
親知らずを抜いた当日や翌日におすすめのメニューをご紹介します。「抜歯後でも、栄養バランスもしっかり考えたい」という方に向けて、傷口に負担をかけにくく栄養価の高い食品をご紹介します。
3-1 豆腐料理
抜歯後すぐにタンパク質源としておすすめなのが『豆腐』です。肉や魚は歯ごたえが強いので、痛みがある状態では食べづらいですよね。大豆からつくられている豆腐には、植物性タンパク質がたくさん含まれているため、抜歯後におすすめの栄養源です。
3-2 野菜・フルーツのスムージー
温野菜なら噛まなくても食べられる程柔らかくすることはできますが、美容や健康のために生野菜も食べたい方もいらっしゃるのでは?そんなときにおすすめなのがスムージーです。ほうれんそうや、にんじん、バナナなどの野菜やフルーツをお好みでミキサーにかけてみてください。
3-3 ゼリーや杏仁豆腐
中には「どうしても食欲が湧かない」という人もいらっしゃると思います。そんな時は、スプーンですくって食べるゼリー・杏仁豆腐などで最低限のカロリーだけでも摂取してみてはいかがでしょうか?
「吸いこむタイプのゼリー」をNG食品として紹介しましたが、スプーンで食べるタイプのゼリーなら抜歯後にもおすすめです。
3-4 おかゆ
体調が悪いときの定番メニュー「おかゆ」もおすすめです。
大切なのは、「無理をせずに食べられるメニューで、最低限の栄養を摂取すること」なので、あまり難しく考えすぎず食べられそうなものを食べましょう。
4.まとめ
抜歯後は、口の中に不便を感じるかもしれませんが、注意点をしっかり守って早く治せるように気を付けましょう。
また、抜いたあとの傷口が糸で縫ってあるときは、気になるかもしれませんが、舌や指などで触らないようにしてください。細菌に感染する可能性が高まります。
また、血が止まらなくなってしまった場合は早めに歯医者さんで相談するようにしましょう。
1980年 岐阜歯科大学 卒業
1980年 (医)友歯会ユー歯科 箱根、横浜、青山、身延の診療所に勤務
1984年~1994年 アクアデルレイ ダイビングショップ 非常勤スタッフ
1985年 コージ歯科 開業
1996年 日本大学松戸歯学部生化学教室研究生
~2002年 歯学博士
2014年 昭和大学 客員講師
現在に至る
電話:03-3601-7051
執筆者:
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