歯根治療の方法と費用の目安、治療中や治療後の痛みの原因と対策も紹介!

歯根治療は、歯内療法や根管治療とも呼ばれています。歯茎に埋まっている「歯根」という部分には、歯の神経や血管が入っている「根管」という管が通っています。虫歯が悪化すると、虫歯菌が根管内に入り込んでしまい、歯の神経や血管を蝕んでいきます。

この記事では、歯根治療の方法や費用の目安、治療中や治療後の気になる痛みについても詳しく触れています。
ぜひ最後まで読んでみてください。

※本記事で紹介している目安費用は、歯の教科書編集部調べです(2019年1月時点)。例として保険診療は3割負担の金額を掲載しています。初再診料・検査料・材料費などは基本的に含まれていません。また、自由診療の料金設定は歯医者さんによって内容に差があります。詳しい費用については歯医者さんで確認しましょう。

この記事の目次

1.歯根治療とは?治療法や費用の目安も

1-1 歯根治療は歯を残すための治療

虫歯が進行して歯根に広がった場合でもできるだけ抜歯をせず、大切な歯を残すためにおこなうのが歯根治療です。

歯根治療に問題があると、歯根から再び炎症が生じ、歯根の先端部分に膿の袋ができてしまうことがあります。
そうなると再度、歯根治療をしなければならないため、とくに注意が必要な治療です。

歯根の内部はとても狭く複雑な形状の空間なので、肉眼で見るのは限界があります。
歯医者さんによっては、マイクロスコープを用いて治療するところもあります。

1-2 歯根治療の種類と費用の目安

■抜髄(ばつずい)治療

虫歯が悪化し「歯髄(しずい)」と呼ばれる歯の内部にまで感染が広がった場合、それ以上、感染が広がるのを食い止めるために抜髄(歯髄を除去)します。

抜髄してきれいに洗浄・消毒したあと、隙間なく薬剤を詰めて密閉し、被せ物をすることで歯の機能を取り戻します。

《抜髄治療の費用の目安》
抜髄治療の費用の目安は、保険診療で1歯900~3000円程度となります。
歯根の形は人によって異なり、単根管・2根管・3根管など形態によって変わってきます。

自由診療を選んだ場合の費用の目安は次のようになります。

前歯20000~100000円
小臼歯20000~130000円
大臼歯20000~150000円

■感染根管治療

“感染根管処置”は抜髄よりも感染の範囲が広く、根管(歯髄が入っている管)自体が感染しているときに行われる処置とされています。
感染根管処置が必要なときは、「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」を起こして歯根の先端に膿の袋(根尖病巣)ができていることも多いです。

たとえば次のような場合におこなわれます。

  • ・過去に歯根治療をしたが細菌が残っていた
    (根管壁や、枝分かれした細い根管まで感染していたなど)
    ・歯髄が壊死したまま時間が経ち、根管壁や根尖孔へ感染が広がった
    ・過去に歯根治療をしたが別の理由で歯根が細菌に感染し、顎の骨まで炎症が広がった

基本的な治療方法は抜髄と似ていて、感染部分を除去し、きれいに洗浄・消毒したあと薬剤を詰めて密閉し、被せ物をします。
再感染の場合、以前の治療で詰めた薬を除去してから洗浄・消毒をおこなうため、繊細な技術が求められる治療です。

《感染根管治療の費用の目安》
保険診療による感染根管治療を受けた場合、費用の目安は1歯につき600~2000円程度が目安になるとされています。
費用は、抜髄と同じように治療する歯根の形態によって変わってきます。

自由診療の場合の費用の目安は次のようになります。

前歯45000~180000円
小臼歯55000~210000円
大臼歯65000~250000円

2.歯根治療中・治療後の痛みや対処法について

2-1 歯根治療中に痛みを感じたら遠慮なく申し出よう

抜髄や感染根管処置は、麻酔を効かせてから治療を始めるのが基本です。

麻酔がしっかり効いた状態で治療に当たるため、痛みは感じないことが多いですが、人によっては痛みを感じてしまうことがあります。
その人の体質や歯の部位などにより麻酔が効きにくい、神経が残っていた、歯根膜(※)が刺激を受けているなど、痛みを感じる原因は複数あります。

痛みを我慢するのは大変苦痛なものです。途中で治療をあきらめてしまう原因にもなりかねません。
歯根治療で痛みを感じたら、遠慮なく先生に申し出ましょう。

麻酔を追加するなど、患者さんが治療を受けやすくするための対応をしてくれます。

※歯根膜(しこんまく)
歯根の周囲にある、薄い膜のような組織です。噛んだときにパリパリ、バリバリ、などの歯ごたえを感じたり、歯と歯を支える歯槽骨のクッション役を果たしたりしています。歯根膜はとても敏感で、口の中に入った髪の毛一本でもその太さを感じ取れるほどと言われています。歯根治療の際、歯根膜が刺激を受けて違和感や痛みが出ることがあります。

2-2 歯根治療のあとに痛むときの対策

抜髄や感染根管治療といった歯根治療をしたあと、麻酔が切れてくると歯がうずいたり、ズキズキ痛んだりすることがあります。

歯医者さんでは、麻酔が切れたあとの痛みを軽減するために痛み止めを処方してくれることがあります。
麻酔が切れる前に飲んでおくと、より効きやすいとされています。

歯医者さんで痛み止めを処方されなかった、または使い切ってしまった場合、市販の痛み止めを服用して様子を見ましょう。

歯根治療後の痛みは数日程度で治まるといわれていますが、痛みが長く続く、痛みがひどくなるといった場合は、炎症を起こしているかもしれません。
我慢せず、歯医者さんに相談しましょう。

※処方薬および市販薬を使用する際は、医師または薬剤師の指示に従い、用法用量を守って使用してください。

3.歯根治療のあと腫れが引かず痛みがある場合

歯根治療のあと何日も腫れが引かず痛みがある場合、歯根の先に膿が溜まっていることも考えられます。
歯根治療で虫歯菌に感染した部分をすべて取り除けなかったり、歯根治療中に唾液や歯垢、口の中の細菌などが歯根に入り込んでしまったりした、などの原因が考えられます。

歯根の先に溜まった膿を放置すると、歯槽骨(しそうこつ)まで溶かしてしまうことがあるため、腫れが引かない場合は早めに歯医者さんを受診しましょう。

歯医者さんでは、膿を排出したり感染部分をきれいに掃除したりするために、歯茎を切開する「歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)」をおこなうことがあります。

3-1 歯根端切除術とは

歯茎を切開し、病巣が含まれる歯根の先端を切除して、膿を取り除く方法です。
歯根の先端の膿は、歯根の中を消毒することで治療が完了することもありますが、消毒だけでは不十分な場合に歯根端切除術で膿を取り除き、改善を目指します。

歯根端切除術が選択されるのは、たとえば次のようなケースです。

  • ・根管の形状によって、基本的な歯根治療では感染部分をすべて取り除けない
    ・過去に歯根治療した部分に問題が生じたが、すでに被せ物や土台があって外せない
    ・症状が進行してしまっている
    ・外傷で歯根の先が破折してしまった など

3-2 歯根端切除術の流れ

歯医者さんによって、あるいは保険診療か自由診療かなどによって多少の違いはあるかもしれませんが、基本的な流れは次のようになります。

①歯茎を切開して歯根の先端を切除

麻酔をして歯茎を切開し、膿を取り除いたあと、汚染されている歯根の先を1~2mm程度切除します。
拡大鏡などを用いて、細菌や膿が残らないようきれいに取り除いていきます。

②歯茎を縫合して詰め物・被せ物

歯根の切断面に小さな穴を開けて、詰め物を充填してから密閉し、切開した歯茎を縫合します。
歯冠部分(歯の目に見えている部分)も詰め物や被せ物をして、しっかりと塞ぎます。

歯冠部分に、すでに外せない差し歯の土台などがある場合、それらはそのままにして歯根端切除術をおこなうこともあります。

③消毒・抜糸・経過観察

翌日などに傷口を確認・消毒し、問題がなければ7~10日ほど経ってから抜糸します。
経過観察のため、一定期間あけて再度、歯医者さんを受診します。

3-3 歯根端切除術の費用の目安

歯根端切除術を保険診療で受けた場合の費用は、4000~7000円程度が目安となります。
手術用の顕微鏡を用いたかどうかなど、処置の方法によって変わってきます。

自由診療で受けた場合の費用の目安は50000~150000円といったように、歯医者さんによって、または使用する器具や処置方法などによって大きく変わってきます。

4.まとめ

歯根治療は処置が難しいため、治療に時間がかかったり、あとになって再感染したりすることもあります。
先生も患者さんも根気が要る治療ですが、大切な自分の歯を残すためにおこなうものです。

途中で通院をやめたりせず、最後まで治療を続けましょう。

経歴

2005年 日本歯科大学 卒業
2005~2006年 東京医科歯科大学摂食機能構築学 医員
2007~2011年 東京都内歯科医院 副院長
2011年 後楽園デンタルオフィス 院長就任
現在に至る

執筆者:歯の教科書 編集部

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