「出っ歯やデコボコ歯を短期間でキレイにできる」
そんな広告を見てセラミックによる歯並び矯正を検討していませんか?もちろん、セラミック矯正には多くのメリットがあります。しかし、同時に健康な歯に与えるリスクもあるのです。
この記事ではセラミック矯正のメリットやデメリット、セラミック矯正はどんな人におすすめか、費用の目安やセラミックの種類、治療の流れなどを紹介します。
治療前に、よい点だけでなくリスクも知っておくことで、自分に本当に必要な治療が見えてくるはずです!参考にしてくださいね。
この記事の目次
1.歯並びを治せるセラミック矯正とは?
1-1 セラミック矯正とは
セラミック矯正とは、気になる悪い歯並びを削ったうえで、セラミックを使った人工歯を被せて、キレイに整える治療法です。例えば、出っ歯やすきっ歯、デコボコの歯など形を整えたりできます。
普通の矯正治療と比べても早く終わることが多いです。
1-2 セラミック矯正のメリット・デメリット
【メリット】
- ・気になる部分の見た目だけを整えられる
- ・治療期間が短くてすむ(数週間~数カ月ほど)
- ・歯並びのほか、色や形も変えられる
- ・矯正治療のように後戻りすることがない
- ・矯正治療と比べると費用をおさえられる(本数にもよる)
- ・外科手術と比べてダウンタイム(腫れや痛みなど)が少ない
- ・矯正治療と比べて違和感(歯を動かす際の痛みやしめつけ感など)が少ない
- ・治療中であっても周りの人にバレにくい
セラミック矯正の良い点としては、歯を動かすことなく気になっている部分(出っ歯やすきっ歯など)だけを治療できる点です。
期間がかからず、治療後も後戻り(歯がもとの位置に戻ろうとすること)がありません。
普通の矯正治療であれば1年から2年ほど、長ければそれ以上かかりますが、セラミック矯正は数カ月で終わることが多く、早ければ数週間で治療が終わることもあります。
また、矯正中にワイヤーやブラケットなどの器具を装着することもないので、見た目も目立たず、治療していることを周囲に気付かれないのもメリットです。
【デメリット】
- ・健康な歯を削らなければいけない
- ・保険適用外のため自由診療になる
- ・神経を抜くこともある
- ・削った歯の寿命は短くなることがある
- ・歯の根っこを動かすことはできない
- ・全体的な咬み合わせを改善することはできない
- ・歯並びによっては対応できないことがある
- ・装着後は定期的にメンテナンスを受ける必要がある
- ・10年後などに再治療・再作製が必要になる可能性がある(人工歯には寿命がある)
セラミック矯正の大きなデメリットは、歯を削る必要があるということです。虫歯でない健康な歯の場合、削ることで歯の寿命が短くなってしまうことがあります。
また、セラミックの種類やメンテナンスの頻度、虫歯や歯周病の有無などにもよりますが、一般的にセラミックの被せものの寿命は、10年程度とされています。
歯並びをきれいするためだけに、健康な歯を削ってセラミックの被せものをした場合、将来的に再度、歯を削って人工歯を作製しなければならない可能性があります。
そのため、セラミック矯正のメリットだけを見て、安易に治療してしまうのはおすすめできません。
また、矯正治療とは違い、歯の根っこ部分を大きく動かす処置ではないので、全体的な咬み合わせを改善することはできません。
そのほか、歯の状態や全体の歯並びなどによっては希望した仕上がりにならないことや、歯の形・生えている向きによってはセラミック矯正ができないこともあります。
1-3 こんな人におすすめ!
- ・全体的な咬み合わせには問題がない人
- ・虫歯やケガなどで歯が欠けてしまった人
- ・神経がない歯の歯並びや色が気になっている人
- ・ホワイトニングで歯の黄ばみや汚れがキレイにならなかった人
- ・どうしても治療期間を長くとれない人
セラミック矯正は、もとの歯を削ったうえで被せものをします。そのため、虫歯などで歯を削る必要がある人や、事故やケガなどで歯が欠けてしまった人に向いています。
また、神経を取った歯を白くキレイに見せることも可能です。神経を取る際は、その周辺の血管も除去するため、歯に栄養が供給されなくなります。
そうなると、植物が枯れてしまうように色が黒ずんでしまうことがあります。セラミック矯正は、そのように黒ずんでしまった歯を、被せものでキレイに見せられるメリットがあります。
1-4 かかる費用の目安
歯並びの矯正に用いるセラミックの被せものは、基本的には自由診療となり保険が利きません。そのため、歯医者さんによって1歯の費用に差があります。
以下の費用は目安で、虫歯や歯周病などがあれば別途、治療費がかかることも念頭に置いておきましょう。
【費用の目安】セラミックの被せもの:6万円~15万円ほど(1歯) |
1-5 治療の流れ
【カウンセリング・治療の計画】
まずはカウンセリングで歯の悩みや希望(どんな歯並びにしたいかなど)を伝えましょう。
その際、イメージする歯の形を聞かれたり、シェードガイド(歯の色見本)を見せながら色を選んだりすることもあるので、ある程度決めておくとスムーズです。
併せて、今のお口の中の状態(虫歯や歯周病がないかなど)や咬み合わせを診てもらいましょう。診断結果に基づいた治療計画を提案してくれるはずです。
【 シミュレーション】
模型やソフトなどを用いてシミュレーションを作製し、治療後のイメージがつきやすいようにしてくれる歯医者さんもあります。
シミュレーションを採用しているか、ホームページに掲載している歯医者さんもあるので、来院前にチェックしてみてください。
また、歯医者さんによっては、セラミック矯正の前に歯のホワイトニングで白くしてから、その歯の色に合わせた被せものを作製するところもあります。
【 型採り】
もと(削る前)の歯の型を採ります。セラミックの被せものが完成するまでの間に装着する、プラスチック樹脂の“仮歯”を作製するための型採りです。
【 仮歯の装着】
仮歯が完成したら、被せものの土台になるようにもとの歯を削り、再度、型を採ります。セラミックの被せものを作製するための型採りです。
セラミックの被せものができあがるまでの間、仮歯を装着して過ごします。歯医者さんによっては、仮歯でもキレイな見た目や機能の高さにこだわってくれるところもあるようです。
【 セラミックの被せものを作る】
歯科技工士が、セラミックの被せものを作製します。できあがるまでの期間は歯医者さんによって違いますが、1~2週間ほどです。
【 完成前の試適】
試適とは、セラミックの被せものを完成させる過程で必要な確認作業です。「素焼き」の状態で咬み合わせや色味、形などを確認し、問題がなければツヤ出しをして完成となります。
【 セラミックの被せものを装着】
完成したセラミックの被せものを装着し、色や形が希望通りになっているか、咬み合わせに違和感はないかなどをチェックします。特に修正がなければ、本装着になります。
一度本装着すると容易には外せなかったり、外した場合は再度作製しなければならなかったりするため、微妙な咬み合わせの違和感であっても遠慮なく伝えましょう。
【 治療後の確認や定期的なメンテナンス】
治療後、数週間など経過してから違和感や痛みが発生する可能性もあります。
そのため、被せものが歯にしっかり接着されているかどうか、対合歯(咬み合う方の歯)や歯茎を傷めていないかなど、治療後に一度、確認してもらいましょう。
また、数カ月に一度など定期的に受診することで、被せものの状態や虫歯・歯周病が発生していないかを診てもらうことも大切です。
1-6 セラミックの種類
大きく分けると、セラミックの素材は金属を使っているものと使っていないものに分類できます。
金属を使用している被せものは耐久性が高いことがメリットですが、下地が金属なので、金属を使用しないものに比べると透明感が劣る点がデメリットです。
また、歯茎部分に金属が溶けだして黒ずんだり、金属アレルギーを引き起こしたりすることも考えられます。
逆に、金属を使わない被せものは透明感があり、見た目的に美しいだけでなく、金属アレルギーのリスクないなどのメリットがありますが、強度が劣る点がデメリットです。
【金属を用いるセラミック】
◆メタルボンド
金属の素材の上に、セラミックを貼り付けた被せものをメタルボンドといいます。内側が金属なので強度があり、割れたり欠けたりしにくいです。
経年劣化が少なく、長期間使用しても歯の変色がほとんどないのもメリットでしょう。
ただし、金属アレルギーのリスクや、長年経つと歯茎部分が黒ずむことがあるなどのデメリットもあります。また、オールセラミック(すべてが陶器素材でできた被せもの)よりも透明感が劣ります。
【金属を用いないセラミック】
◆オールセラミック
すべてがセラミックでできた被せものです。透明感があり、もとの歯の色に近いキレイな見た目になるのが特徴です。
ただし、内側に金属を使っていないので耐久性が高いとは言えず、噛む力が強い人や、歯ぎしりをする人などには向かないことがあります。
◆ジルコニアセラミック
人工ダイヤモンドとしても知られる、ジルコニアという素材でできた被せものです。
ダイヤモンドとして使われるだけあって、強度が高く丈夫なうえ、天然歯に近い見た目になるため、外見的な美しさに優れています。
ただし、ほかの被せものと比べて費用が高額な傾向にあります。何本も治療するとかなりの負担になることもあるので、よく検討しましょう。
※歯医者さんによっては、これ以外の種類を扱っているところもあります。どのような素材があるか、歯医者さんのホームページなどでチェックしてみましょう。
2.矯正治療との違いはどんなところ?
矯正治療との大きな違いは、「自分の歯かどうか」という点です。矯正治療では、基本的に自分の歯を根っこごと動かして歯並びを整えます。
一方のセラミック矯正は、自分の歯を削って上から人工歯を被せる治療法です。そのため、健康な歯の寿命を縮めることにもなりかねません。
虫歯などがない人や、できるだけ長く自分の歯を残したい人は矯正治療を、虫歯を削る必要がある人や、神経を抜かなければいけない人、すでに神経がない人などはセラミック矯正を検討してみましょう。
また、矯正治療と違い、セラミック矯正は歯自体を動かすことはできません。全体的な咬み合わせを整えたい人は、矯正治療が適しているでしょう。
咬み合わせには問題がなく、ごく一部(前歯数本だけなど)を治療したいのであれば、短期間で改善できるセラミック矯正が向いていると言えるでしょう。
治療後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないように、自分の希望・何を優先したいのかなど、歯医者さんに行く前に整理しておきましょう。
3.セラミック矯正の歯医者さんの選び方
3-1 治療方法をいくつか提示してくれる
歯並びをキレイにする治療は、ひとつではありません。場合によっては、セラミック矯正ではなくワイヤー矯正やマウスピース矯正などが向いているケースもあります。
複数の治療法があるということを伝えず、セラミック矯正のみをすすめてくる歯医者さんだった場合、治療を受けるかどうかは慎重に判断しましょう。
選択肢が多い方が、自分に合った治療法を見つけやすいので、通院前にどのような治療をしているか確認しておきましょう。
複数の歯医者さんをまわっていろんな話を聞き、最終的に自分が納得できる治療法を選択するのもよいでしょう。
3-2 症例の多い歯医者さんを選ぶ
セラミック治療は、歯自体を削る必要があります。削ってしまった歯はもとには戻せないので、「削る」処置ひとつにしても、納得できる歯医者さんを選びたいですよね。
歯医者さん選びに迷ったときの判断基準のひとつとして、症例の多さがあります。
セラミック矯正で多くの症例をこなしている歯医者さんは、処置になれている可能性があります。やり直しがきかないセラミック治療では、自分が納得できると思える歯医者さんを選ぶことも大切です。
3-3 口コミを参考にする
通院しようと考えている歯医者さんの口コミを見ることでほかの意見を取り入れることができます。
セラミック矯正は、矯正治療と比べて通院期間が短いとはいえ、できれば通いやすく気持ちのよい歯医者さんを選びたいという人は多いでしょう。
「通いやすさ」や「雰囲気」などについて、口コミを参考にしてみてはどうでしょうか。
※口コミは、個人の主観によるものです。あくまで判断材料のひとつとして参考程度に活用してください。
4.まとめ
セラミック矯正には、「短期間でキレイになる」「全体的な歯列矯正よりも費用が安いことが多い」などのメリットがあります。
しかし、一方では「健康な歯を削らなければならないことがある」といったデメリットも存在します。
“早くきれいな歯の状態にしたい”からと、よく考えずにセラミック矯正を受けることはせず、メリット・デメリットそれぞれを、じっくり比較したうえで選択しましょう。
特に、削った歯は二度と戻りません。
そうしたセラミック矯正のリスクを伝えず、メリットだけを伝える歯医者さんで治療を受けることは避けた方がよいでしょう。
後々まで納得できる治療にするためにも、いくつかの歯医者さんでカウンセリングを受け、慎重に判断するのもおすすめです。
この記事を参考にして、ぜひ白くキレイな歯並びを手に入れてくださいね。
2005年 日本歯科大学 卒業
2005~2006年 東京医科歯科大学摂食機能構築学 医員
2007~2011年 東京都内歯科医院 副院長
2011年 後楽園デンタルオフィス 院長就任
現在に至る
執筆者:
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