口の端が切れる「口角炎」になったら?原因と治し方

口の端が切れて出血、かさぶたになってきたと思ったら、口を開けたはずみでまた亀裂が入る……。くり返し切れてしまう場合「口角炎」かも知れません

1回、2回、口の端が切れただけなら、様子を見ていても構いません。口角炎は自然に治っていくこともあります。しかし、場合によっては医療機関の受診が望ましいこともあります。

この記事では、口角炎の原因と治し方、薬や医療機関受診について、詳しく解説していきます

この記事の目次

1.口の端が切れる原因は?どんな薬を使う?

口角炎になる原因はいくつか考えられるものがありますし、いくつかの原因が複合的に絡み合っている場合もあります。この章では、原因ごとにどんな薬が用いられるか紹介していきます。医療機関を受診すべきケース、自分でできるケアの注意点については次の章で紹介していきます。

1-1.カンジダ性口角炎

カンジダ菌と呼ばれる真菌によって、口角炎を発症しているケースがあります。これが主な口角炎といえます。カンジダ菌は健康な人間の口腔内にも存在していることが珍しくなく普段は何もしないのですが、体力が落ちたときなどに症状を引き起こすことがあります。

また、唾液の量が減るドライマウスの場合、唾液に含まれる抗菌成分が減ってしまうことでカンジダ性口角炎になりやすい傾向があります。

塗り薬は、真菌感染症なので抗真菌薬を用います。特に「アゾール系抗真菌薬」「アリルアミン系抗真菌薬」が用いられる傾向です。

1-2.細菌性口角炎

黄色ブドウ球菌・レンサ球菌など、真正細菌による口角炎も存在します。真正細菌が原因であれば、抗生物質による治療をおこないます。黄色ブドウ球菌・レンサ球菌ともに「グラム陽性球菌」と呼ばれる種類の細菌なので、グラム陽性球菌に奏効する「テトラサイクリン系抗生物質」などが用いられます。

1-3.接触性口角炎

接触性口角炎は、化学物質・アレルゲンに接触したことで生じる口角炎です。化学物質に毒性に反応したものを「一次刺激性接触性皮膚炎」、食物などアレルゲンによるアレルギー反応を「アレルギー性接触性皮膚炎」と呼びます。

いずれにしても、「原因となる物質に触れないようにすること」が必要です。炎症を抑える対症療法としては「ステロイド剤」「抗ヒスタミン剤」などを用いるのが基本的です

1-4.アトピー性の口角炎

アトピー性皮膚炎が口角に発生することがあります。アトピーの素因を持った人に発生する口角炎になります。皮膚に生じるアトピーと同様「ステロイド剤」「タクロリムス軟膏」などを用いて消炎を図ります

1-5.機械的刺激による口角炎

義歯、かみ合わせなどが合わない、唾液が日常的に付いているなど、常に刺激が続くことで口角炎になることがあります。義歯やかみ合わせが原因と考えられるときは、歯科医院で調節を行うなど対策を取ります

1-6.全身性疾患による口角炎

ビタミンや鉄分などの栄養不足や、糖尿病など全身性の疾患から口角炎になることがあります。

2.口の端が切れたときの治し方!自宅では?

医療機関にかからなくても、口角炎は自然と治っていく場合もあります。では、医療機関を受診すべき目安はあるのでしょうか? 自宅で様子を見るときのケア方法もご紹介します

2-1.経過観察するなら2週間までが目安

基本的に「2週間が経過して自然修復しない炎症」は、医療機関を受診すると良いでしょう。自覚していない問題が隠れている可能性もありますし、傷口をこじらせるようなことを防ぎ、体調を整えることにつながります。

2-2.口角炎ケアのためにしたいこと

自宅で様子を見るときの注意点を確認していきましょう。患部が不衛生だと、炎症は長期化・拡大する傾向にあります。そこで、まずは低刺激の石鹸・洗顔料を使い、患部を衛生的に保ちましょう。余分な香料などの入っていない無添加石鹸が望ましいと思います。

その上で、口の端に「白色ワセリン」を塗って保湿しましょう。乾燥させてしまうと良くありません。黄色ワセリンは、不純物が多く、精製された白色ワセリンのほうが、低刺激でおすすめです。

保湿の手段としてリップクリームもありますが、傷口やかさぶたに刺激を与えないよう、成分や塗り方は気をつけましょう。

2-3.自己判断でやってはいけないケアもある…!

市販の外用薬(軟膏など)がありますが、自己判断で口角炎に用いないようにしましょう。特に自己判断で使用しない方が良いのは、「抗生物質」と「抗真菌薬」です。

口角炎を引き起こしている原因に応じて抗生物質か抗真菌薬を選ばないと、むしろ症状をひどくしてしまうためです。どちらが原因なのかは医療機関で検査しないとわかりません。

◆抗生物質

真正細菌(バクテリア)を殺菌するか、増殖を抑える薬です。殺菌するものを「殺菌性抗菌薬」、増殖を抑えるものを「静菌性抗菌薬」と呼びます。真菌と呼ばれるグループの菌には、まったく効果がありません。

◆抗真菌薬

真菌(カビ・酵母など)を殺菌するか、増殖を抑える薬です。真正細菌には効果がありません。ちなみに「特定の相手だけを攻撃する毒性」を「選択毒性」といいます。抗真菌薬は、真菌に選択毒性を示す薬…というわけです。

口角炎の種類 使用する薬剤 結果
カンジダ性(真菌) 抗真菌薬 修復が早まる
カンジダ性(真菌) 抗生物質 悪化・長期化リスクの増大
細菌性 抗真菌薬 悪化・長期化リスクの増大
細菌性 抗生物質 修復が早まる

3.医療機関にかかるときは何科?

2週間以上、口の端が切れることをくり返してしまうときは、医療機関の受診を検討しましょう。皮膚科や歯科、歯科口腔外科などで相談できるでしょう

4.まとめ

ことあるごとに口の端が切れる…という場合、口角炎が疑われます。口角炎は原因によって「使用するべき薬の種類」が異なるので、自己判断での投薬は禁物です

自宅で経過観察する場合は「患部を清潔にして、白色ワセリンで保湿する」程度にとどめてください。2週間ほど経過しても治らなければ、念のために医療機関を受診しましょう。

広島大学 名誉教授
濱田泰三名誉教授監修
略歴・プロフィール

【略歴】
1969年 大阪大学歯学部 卒業
1973年 大阪大学大学院 修了
1981年 広島大学 教授
2008年 広島大学 名誉教授
東北大学 教授
2012年 東北大学 客員教授
東北大学 教育研究支援員
東北大学 学術研究員
今日に至る。

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執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。