笑気麻酔とは?歯科医院で行う治療法や効果、費用、身体への影響

歯科治療への恐怖心を取り除くためにおこなう「笑気麻酔」は、医師の管理下ならば危険性が低い上、保険適用の鎮静法です。しかし、その詳しい作用についてはあまり知られていないと思います。

この記事では、痛み軽減の一環としておこなわれている笑気麻酔について詳しく紹介していきます。ぜひ最後まで読んでみてください。

この記事の目次

1.歯医者さんでおこなう笑気麻酔とは

1-1 笑気麻酔に含まれる成分

笑気麻酔は、「笑気吸入鎮静法(しょうききゅうにゅうちんせいほう)」と言います。

「笑気」と呼ばれるガスを吸うことで気持ちがリラックスし、不安や恐怖心を軽減させた状態で治療を受けることができます。笑気は「亜酸化窒素(N2O)」の別名です。

名前の由来は諸説ありますが、笑気を吸った患者さんが、リラックスして体の力が抜け、笑ったような表情に見えるから、というのが有力のようです。

笑気は全身麻酔にも用いられますが、歯医者さんでおこなう笑気麻酔は30%以下と低濃度の笑気と、70%以上の高濃度の酸素を混ぜて使用します。

1-2 笑気麻酔の流れ

笑気麻酔は、診察台を少し起こした状態で、楽な体勢でおこなわれます。歯医者さんによって多少異なるかもしれませんが、一般的な流れは次の通りです。

  • ①笑気吸入装置につながった、専用のマスクを鼻に装着します。(※1)
    ②鼻だけでゆっくり呼吸し、ガスを吸入します。
    ③2~3分ほどで変化を感じ始めます。
    ④ガスの吸入を続けた状態で治療を始めます。
    ⑤治療終了後マスクを外します。
    ⑥吸入を停止するとすぐに意識が回復します。(※2)
    ⑦フラフラしたり気分が悪かったりしないことを確認して帰宅します。

※1 蛇管(じゃかん)やカニューレといった、短いチューブ(ホース)タイプのものもあります。
※2 人によっては数分間安静にしたり、100%酸素を吸入したりすることもあるようです。

1-3 笑気麻酔の作用

笑気麻酔を受けると、少し頭がぼんやりし、緊張が和らいでリラックスした状態で治療を受けることができます。

人によって感じ方は異なりますが、「ボーッとした」「音が遠くに聞こえた」「ほろ酔い気分になった」「体が温かくなった」などの感覚を得られることが多いようです。笑気ガスは、ほのかに甘い香りがするため「いい香りがした」と感じる人もいるようです。

全身麻酔では意識が消失し、鎮静薬の点滴を受ける静脈内鎮静法では治療中の記憶がほとんどないほどウトウトします。

しかし、笑気麻酔の場合は麻酔の作用も薄く、リラックスしているだけの状態なので、治療中も意識があり先生と会話もできます。

2.笑気麻酔によって得られるもの

2-1 不安感や恐怖心が軽減する

笑気麻酔には、不安を和らげて緊張を解き、精神的にも肉体的にもリラックスした状態にする作用があります。

治療中の痛みや不安を感じづらくなり、治療もスムーズにおこなえるため、治療後の疲労感も違ってくると言われています。

歯医者さんが苦手な人でも、笑気麻酔によって不安感や恐怖心が軽減されることで、通いやすくなったと感じる人もいるようです。歯医者さんを受診することに抵抗感がなくなれば、虫歯や歯周病といった病気の早期発見につながりやすくなります。

2-2 持病がある人のリスクも軽減する

苦手なものや緊張するものを前にすると、血圧や心拍数が上がる人は多くいます。

歯医者さんが苦手で、高血圧や不整脈といった持病がある患者さんにとって、歯科治療は大きな負担となることがあります。治療への恐怖心が大きい場合、「血圧の上昇」や「不整脈」といった症状があらわれかねません。

また、緊張やストレスから「過呼吸症候群」といった、普段の生活では見られない症状が出てしまうこともあります。

笑気麻酔を利用することは、そのような危険から患者さんを守ることにもつながります。

3.笑気麻酔の費用

3-1 保険が適用されるケースが多い

虫歯の治療や抜歯といった、一般的な歯科治療に使用する笑気麻酔には、保険が適用されます。自己負担の割合にもよりますが、3割負担の患者さんなら、30分600円程度が目安となってくるようです。

ただし、使用する笑気の濃度や時間といった条件で費用が変わってくることがあります。詳しい費用については、歯医者さんに確認しておきましょう。

4.笑気麻酔の向き不向きについて

笑気麻酔が向いている人、また避けたほうがよい人を紹介します。これらに当てはまれば笑気麻酔を受けられないとは限りませんが、心配な疾患や気になる症状、既往症を持つ方は、必ず治療前に医師へ相談してください。

4-1 笑気麻酔が向いている人

  • ・歯科治療への恐怖心や不安が強い人
    ・高齢者
    ・神経質な人
    ・嘔吐反射の強い人(口に治療器具が入っただけで、えづいてしまう人)
    ・高血圧や心疾患など内科的慢性疾患をもつ人
    ・神経性ショック、脳貧血性発作(恐怖が原因で発症)をもつ人

4-2 笑気麻酔が向いていない人

  • ・妊娠(15週まで)、授乳中の女性
    ・鼻づまりやアレルギー性鼻炎などで鼻呼吸ができない人
    ・中耳炎などの中耳疾患がある人
    ・ぜんそくや気胸などの呼吸器疾患がある人
    ・パニック障害(マスクに抵抗感がある場合など) や過換気症候群の経験がある人
    ・肺や腸に閉塞性疾患のある人
    ・てんかんの既往がある人

5.笑気麻酔による身体への影響

5-1 副作用リスクが低い

笑気には毒性がないため、笑気麻酔による副作用の心配は、ほぼないと言われています。さらに、血中からの排出が早いため、治療後の回復が早く、長時間の経過観察が必要ないこともメリットの一つです。

笑気が中枢神経に影響を与えることはないため、呼吸や血液循環、反射機能が落ちる心配もありません。そのため治療後すぐに帰宅できるのです。

ちなみに、麻酔中はお酒を飲んで酔っぱらったときと似た感覚になりますが、治療後、しっかりとガスが体から抜けた事さえ確認できれば、運転して帰ることも出来ますし、家事や仕事にも影響はありません。

5-2 子どもでも受けられる

前述のとおり、笑気には毒性も副作用もないので、小さな子どもやお年寄りも笑気麻酔を受けることができます。また、無刺激で、局所麻酔のように歯ぐきに針を刺すことがないため、注射嫌いの子どもにもぴったりです。

歯医者さんが大嫌いな子どもを治療に連れて行くのは、大変です。さらに、治療中暴れると口のなかを傷つけてしまう危険性すらあります。

笑気麻酔なら、そんな心配も軽減させてくれるでしょう。子どもがマスクをつけるのが楽しくなれば、歯医者さん嫌いも克服できるかもしれません。

6.まとめ

笑気麻酔で痛みがなくなるわけではありません。ただ、治療中の緊張状態を緩和し、患者さんの負担を軽減させることができるのです。これにより、それまで行きづらかった歯医者さんへも通いやすくなり、歯の健康を維持しやすくなるのです。

全国で笑気麻酔を取り入れている歯医者さんが増えてきました。歯科治療に不安を感じる方は、歯医者さんに一度相談してみることが先決です。

歯医者さんが苦手な人は、虫歯が痛んでも我慢してしまうことがあります。しかし、虫歯は放置しても自然治癒することはありません。

痛みに耐えきれなくなって歯医者さんを受診する頃には症状が悪化し、治療が大がかりになり、費用や通院回数といった負担も大きくなってしまいます。

笑気麻酔でリラックスした状態で治療を受けることができれば、早い段階から歯医者さんを受診できるため、費用や通院回数といった負担を軽減することにもつながります。

経歴

2007年 第100回歯科医師国家試験合格
2007年 日本歯科大学 生命歯学部卒業
2008年 埼玉県羽生市 医療法人社団正匡会 木村歯科医院
歯科医師としてのホスピタリティの基礎を学ぶ。
2010年 埼玉県新座市 おぐら歯科医院
地域に密着した医院で地域医療に携わり、
小児から高齢者歯科まで治療を行う。
2011年 東京都文京区 後楽園デンタルオフィス
施設の訪問診療などにも携わる。
2015年 東京都港区 青山通り歯科 院長
現在に至る

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。