永久歯が生えてこない!考えられる原因と対処法まとめ

「子どもの永久歯がなかなか生えてこない」と悩んでいませんか?実は、一部が生えてこないケースは決して珍しいものではありません。「すべての永久歯が必ず生えてくる」というものではないのです。

生えるのが遅れているだけかもしれませんが、念のために「生えてこない場合、どうするべきか」を確認しておきましょう。この記事では「永久歯が生えてこない理由」に加え、「一般的な対処法」を解説しています。

この記事の目次

1.永久歯が先天的欠如歯であるケース

「永久歯が生えてこない理由」として考えられるのは、「先天性欠如歯」です。
先天性欠如歯とは、先天的に=生まれつき、永久歯の数が、欠如=少ないという状態です。
そのため、永久歯が生えてくることはありません。

乳歯の下では、「歯胚(将来、永久歯になる歯のもと)」が育っていきますが、この歯胚が存在しない場合があります。
「遺伝的な理由」「母親の胎内にいた頃の栄養欠如」などが、先天性欠如歯の要因になるのでは?と考えられていますが、明確な原因はわかっていません。
先天性欠如歯のほか、「先天的欠損歯」「無歯症」と呼ぶこともあります。

1-1 先天的欠如歯のある子供は約10%!

日本小児歯科学会が2010年におこなった調査によると、先天性欠如歯がある子供の比率は10.09%でした。
具体的な数としては、1万5,544名のうち、1,568名に「1本以上の先天性欠如歯」が認められています。

ですから、先天性欠如歯は決して珍しい状態ではありません。
病気というわけではなく、「歯の形成異常」という表現をするのが普通です。

1-2 先天的欠如歯になりやすい歯はどれ?

日本小児歯科学会の調査結果によれば、上顎(うわあご)に先天性欠如歯がある子供の割合は4.37%、下顎は7.58%でした。
「先天性欠如歯が生じやすい部位」を高確率だった順番に上から並べると、

1位 下顎の第二小臼歯(6.2%)
2位 下顎の側切歯(3.81%)
3位 上顎の第二小臼歯(2.98%)
4位 上顎の側切歯(2.65%)

※第二小臼歯:親知らずを含めずに奥から3番目の歯
※側切歯:正面の歯2本の隣にある歯

となります。
第二大臼歯・側切歯の欠如が目立つ結果となっています。

ちなみに、これは子供を対象とした調査なので、親知らずの欠如は含まれていません。
親知らずが生えないことを「先天的欠如」に含めると、「先天的欠如歯のある人」は全体の30%近くになります。

永久歯の数は、親知らずを含めなければ28本、含めると32本です。
28~32本の間であれば、永久歯の数が何本であっても問題ありません。

1-3 先天的欠如歯の場合、乳歯が抜けない!?

乳歯の下で永久歯が育つと、歯茎を突き破って生えてきます。これを萌芽(ほうが)と呼びます。
永久歯が萌芽すると、乳歯の根(歯根)が圧迫され、だんだんと吸収されていきます。
具体的には、乳歯の歯根が溶けて短くなっていきます。

先天的欠如歯の場合は永久歯が生えてこないので、乳歯が抜け落ちることはありません。
乳歯の歯根吸収が起こらないからです。
永久歯が生えてこないかわりに、乳歯が残ることになります。

1-4 先天的欠如歯の対処法は?

永久歯が生えてこない場合、歯医者さんでレントゲン撮影をすると「先天的欠如なのかどうか」が判別できます。
6~7歳になっても、乳歯の下の永久歯が確認できなければ、先天的欠如と考えて良いでしょう。

先天的欠如歯であることがわかれば、「乳歯をできる限り長く使い続けること」を考えなければなりません。
乳歯は生え変わることがないので、当面は乳歯を使えば問題なく噛むことができます。

ただし、乳歯は永久歯に比べて歯根が短く、エナメル質・象牙質の厚みも半分くらいしかありません。
どんなに長くても、乳歯を使い続けられるのは、20~30代までです。
20代後半あたりまで乳歯を使い続けるためには、定期的に歯医者さんで検診・クリーニングを受ける必要があります。

また、乳歯は永久歯より小さいので、多くの場合、「歯と歯の隙間」ができてしまいます。
噛み合わせが乱れる原因になるので、必要なら歯列矯正を検討しましょう。
歯列矯正をする場合は、「乳歯を抜き、残った永久歯だけで安定した歯列をつくる」という選択肢もあります。
どちらの矯正方法が適しているかは、「顎・歯の大きさ」によって変わってきます。
歯医者さんで相談するようにしてください。

乳歯を残した場合、いずれは「乳歯が使えなくなる時期」がやってきます。
そのときは、ブリッジ・義歯・インプラントなどで失った歯をおぎなう「補綴(ほてつ)」をおこなうことになります。

2.永久歯が埋伏歯であるケース

永久歯が生えてこない原因は、「埋伏歯(まいふくし)である場合」もあります。
埋伏歯の場合、先天的欠損歯と異なり、永久歯そのものは存在しています。
しかし、正常に生えてくることができず、歯茎・骨の中に埋まっている状態です。

2-1 埋伏歯には「完全埋伏歯」と「不完全埋伏歯」がある

埋伏歯には、「全体が埋まっている完全埋伏歯」と「斜めに生えるなどして一部が埋まっている不完全埋伏歯(半埋伏歯)」があります。
このうち「永久歯が生えてこない」と錯覚する場合があるのは、完全埋伏歯です。

2-2 埋伏歯の対処法は?

埋伏歯への対処法は、2通りが考えられます。
1つ目は「埋伏歯を抜歯する方法」、2つ目は「埋伏歯を牽引して、正常な位置に誘導する方法」です。

抜歯する場合は、歯茎を切開して抜歯します。
基本は歯が欠損することによる悪影響を避けるために、歯列矯正を勧められることが多くあります。

埋伏歯を保存するのであれば、「開窓・牽引」をおこないます。
歯茎を切開して(開窓)、埋伏歯に矯正装置を取りつけ、ほかの支点にして牽引します。
無事に表面まで出てくれば、埋伏歯を永久歯として使用できる可能性が高まります。

ただし、牽引だけで「もともとあるべき位置」に誘導できる例はまれです。
牽引後に、歯列矯正で歯並びを整える必要があることがほとんどです。

3.まとめ

先天的欠如歯・埋没歯とも、それほど珍しい例ではありません。
「永久歯が生えてこない」というのは「日常的に見られる出来事」です。
「なかなか永久歯が生えてこないな…」と思ったら、早めに歯医者さんに相談しましょう。
将来の悪影響を抑えるためにも、早期に対処した方が良いと言えます。

先生からのコメント

永久歯の先天性欠如は歯列不正などの変化をもたらす場合もありますので、小児歯科専門医などの診査や診断をお受けになることをお勧めいたします。

執筆者:歯の教科書 編集部

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