【教授に聞く】虫歯を予防する食べ物、なりやすい食べ物!白米を食べるだけでリスク?

虫歯・歯周病になりづらい食べ物、なりやすい食べ物について考えたことはありますか?

なんとなく甘い食べ物がよくないということは分かります。ですが、何を食べたら虫歯や歯周病予防に作用するのか、詳しく知っている方は多くはないと思います。

鶴見大学・花田信弘教授にお話を伺い、食べ物と細菌の関係性を解説していただきました。

※前回の記事「口内フローラとは?バランスが乱れるリスク、解決法を紹介

この記事の目次

虫歯・歯周病予防になる食べ物

歯の教科書 編集部

虫歯・歯周病になりづらい食べ物を教えてください。

花田信弘教授

抗酸化物質(ビタミンC、ビタミンE、α-カロテンとβ-カロテン)を含む食べ物ですね。ミネラルではカルシウムマグネシウムを含む食事、炭水化物では繊維質を含む食事、脂質ではオメガ3脂肪酸を含む食事が大切になってきます。

虫歯・歯周病予防に取るべき栄養成分 栄養成分が多く含まれている食材
ビタミンC 赤ピーマン、ブロッコリーなど
ビタミンE アーモンドなどの種実類、植物油など
α-カロテンとβ-カロテン にんじん、ほうれん草など
カルシウム 乳製品、大豆製品など
マグネシウム アーモンドなどの種実類、魚介類など
繊維質を含む炭水化物 穀物、いも類など
オメガ3脂肪酸 サケ、マスといった脂の多い魚類、
アブラナ油や大豆油といった植物油など

歯の教科書 編集部

なぜこのような栄養成分が必要になってくるのでしょうか?

花田信弘教授

歯周病菌によって活性酸素がたくさんつくられているからです。それを中和するために緑黄色野菜に含まれている抗酸化物質が必要になってくるんですね。

ブドウなどの色のついた果物も、歯周病の進行を食い止めるためには重要になってくるんです。

白米もリスク?虫歯・歯周病になりやすい食べ物

歯の教科書 編集部

虫歯・歯周病になりやすい食べ物を教えてください。

花田信弘教授

タンパク質低栄養、ビタミン・ミネラル不足を招く食べ物として白米や、白砂糖などが挙げられます。

歯の教科書 編集部

白米も、虫歯や歯周病を誘発してしまっているんですか…?

花田信弘教授

植物の種というのは生命を新しくつくるため、バランスのいい栄養成分で成り立っているんです。ところが精米することで、ミネラルやビタミンが詰まっている胚芽の部分を全部捨ててしまうことになるんですね。

すると白米にはエネルギーに必要な成分だけが残ってしまい、栄養バランスが悪くなってしまうんです。こうした低栄養の食事を続けると、細胞は再生できないんです。細胞を再生できなくなったら、歯周病になりますよね。

歯の教科書 編集部

底栄養の食事が、歯周病に関係していたんですね。

花田信弘教授

バランスのいい食事を心がけないと歯周病は進行していきます。歯周病の患者さんを診たら、歯科医師側としては「背景に低栄養、タンパク質低栄養があって、血中のアミノ酸量が少ないのでは?」と疑わなければいけないんですね。エネルギーは足りていて太っていても、低栄養だという人はたくさんいらっしゃるんです。

また、虫歯の患者さんが来たら「炭水化物の過剰摂取では?」と疑うことがありますね。砂糖だけではなく、炭水化物でエネルギーを維持してれば、虫歯になっていくんです。そこをバランス栄養食に変えていくことで虫歯・歯周病予防につながっていきます。

食べ物と細菌の関係

歯の教科書 編集部

食べ物と細菌の関係性について教えてください。

花田信弘教授

低分子の炭水化物は、口腔細菌のエサになり増殖して、う蝕・歯周病を招きます。

易消化性の炭水化物は人間が小腸で吸収し尽くしてしまい、大腸の細菌が飢餓状態になります。

食物繊維は口腔細菌も小腸も横取りせず、大腸の細菌のエサになり、健全な腸内細菌を維持することができます。これが大腸がんを防ぎます。

多糖類はいったん分解しないといけませんので、腸内細菌のエサにはなりますけど、口腔細菌のエサにはならない。そのため、単糖類と二糖類はとったらすぐ歯をみがかないといけないということになります。

アミノ酸でもそうです。肉はタンパク質ですから口腔細菌のエサにはならないですけれど、アミノ酸になってしまうとそのまま取り込んで増殖していきます。

味を感じる器官である味蕾(みらい)に低分子がくっつくと、人間はおいしさを感じるわけですね。しかし、人間がうま味を感じる食べ物は、口腔細菌もエサとして利用できるということです。ということは、おいしい食べ物は、全て虫歯・歯周病につながるということですね。

虫歯や歯の乱れを招く現代食

歯の教科書 編集部

現代の食事は、やはりよくないのでしょうか?

花田信弘教授

加熱して柔らかい食べ物、低分子で味がある食べ物は、全部ダメです。

最近では、全粒粉の茶色いパンが出ていますよね。それから、玄米。消費者が健康志向になれば、生産者も変わって、こういった商品がより多く流通すると思います。

白米や、ふっくらとしたパンのほうがおいしいのは分かるのですが、食生活を少しずつ変えていくことで栄養バランスを整えてください。

下の写真は、伝統食を食べ続けていた先住民と、近代食を食べていた先住民の写真です。同じ時代であっても近代食を取り続けていると、虫歯も多く、歯並びも悪くなっているんです。

参考資料:「食生活と身体の退化―先住民の伝統食と近代食 その身体への驚くべき影響―」発行・NPO法人 恒志会

※写真左の4人は、伝統食を維持した先住民で虫歯もなく、歯の乱れもない。写真右の4人は、近代食を食べている先住民。同じ時代であっても歯並びが悪くなり、虫歯も増えている。

歯の教科書 編集部

先生は虫歯・歯周病予防のために、どのような食事を取られているのですか?

花田信弘教授

まず、電気釜を捨てました。白米は食べずに、玄米を圧力釜で炊いています

次に問題になってくるのが副菜なんですよね。ご飯には塩分が含まれていないのですが、おかずには塩分が大量に含まれているんですね。それが、日本人の食生活でよくあるパターンなのですが…。

個人的には、コンニャクや海藻類を中心にしていきたいのですが、けっこう大変ですね。

ただ、ソーセージはお湯で炊いて塩分を抜く。加熱を避けるために餃子なら焼き餃子ではなく水餃子にする。焼き魚よりは、煮魚や刺身にする。うどんとソバだったらソバにするなどといったチョイスをしています。

歯の教科書 編集部まとめ

虫歯・歯周病を予防する食べ物

●歯周病菌は組織に炎症を起こし、続いて好中球などの炎症細胞が活性酸素をつくるため、それを中和するため抗酸化物質を含む食べ物を取りましょう。

虫歯・歯周病になりやすい食べ物

●白米や白砂糖といった食べ物は、低栄養になりやすく歯周病を招きます。また、炭水化物の過剰摂取は虫歯の原因になります。

●人間がおいしいと感じる食べ物は、口腔細菌もそのままエサとして取り込める可能性があります。

食生活を変化させる

●玄米や全粒粉のパンなど、栄養バランスの整った主菜に変化させていくことが大切です。

●塩分が多く含まれていない副菜をチョイスすることも大切です。

おいしい食べ物を取るだけで、虫歯や歯周病のリスクを高めているということは驚きです。

最近では玄米や全粒粉のパンも多く出回っています。虫歯になりやすい、歯周病の改善に取り組んでいるという方は、こういった食生活から変化させていくのも重要かもしれません。

鶴見大学 大学院歯学研究科
歯学部探索歯学講座
花田信弘教授監修
経歴・プロフィール

1981年:九州歯科大学歯学部 卒業
1885年:九州歯科大学大学院歯学研究科 修了
1985年:九州歯科大学歯学部 助手/講師
1987年:米国ノースウェスタン大学医学部微生物・免疫学講座 博士研究員
1990年:岩手医科大学歯学部 助教授
1993年:国立感染症研究所 口腔科学部長
2002年:国立保健医療科学院 口腔保健部長
2008年:鶴見大学歯学部 教授
現在に至る。
※この間、日本歯科医学会学術委員会副委員長、健康日本21計画策定委員、内閣府新健康フロンティア戦略賢人会議専門委員を務める。
現在、日本歯科大学客員教授、明海大学大学客員教授、東京理科大学光触媒研究センター客員教授、長崎大学、東京医科歯科大学非常勤講師を併任。

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執筆者:歯の教科書 編集部

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