【教授に聞く】ウイルスから身を守る唾液の役割!しかし、抗菌作用のある唾液の中には1億以上の細菌?

普段あまり意識することのない唾液ですが、唾液にはどのような役割があるのでしょうか。

鶴見大学・歯学部・口腔微生物学講座・大島朋子教授にインタビューを行い、唾液がどこからやって来るのか、どういったメカニズムで巡回しているのかなど解説していただきます。

すると、唾液は食べ物を飲み込みやすくしているだけでなく、口内を細菌・ウイルスから身体を守る機能などがあることが分かりました。

※前回の記事「口腔癌(がん)と細胞の関係!舌を噛みやすい人は注意

この記事の目次

ウイルスから身体を守る!唾液の機能とメカニズム

Q1.唾液は、どういったメカニズムで体を巡回しているのか教えてください

唾液は、唾液腺という組織から出てきています。メインとなる3つの組織、耳の前にある耳下腺(じかせん)、顎の下にある顎下腺(がっかせん)、口の底の部分にある舌下腺(ぜっかせん)、ほかにも小さい組織がいくつもあり、常に口腔内を唾液で潤していますね。

この唾液という水みたいなものがどこから来るのかというと、血流中の水分が唾液腺に供給されて、いろいろな成分が付加されて唾液腺から出てきています

Q2.唾液は口内で、どんな役割をしているのですか?

まずは、湿潤状態をたもつ役割があります。人間の体の5~7割が水でできていることから分かるように、細胞にとっても水分は絶対に必要なんですね。

次に、会話をしやすいように舌や頰粘膜が潤滑に動くようにしています。また、噛んで食べたものをなめらかにするという機能がありますね

それだけではなく、唾液中には300種類くらいの成分が含まれていて、それぞれ何らかの機能を持っています。その中には抗菌タンパク質という成分が含まれていて、細菌をたおす機能を持っているんですね

それから、ウイルスを殺すという機能もあるんです。唾液中に抗菌成分があることによって、口内の菌をたおし、洗い流してくれるという、大切な役割を持っているんですよ

唾液中には1億個以上の細菌!抗菌作用があるのになぜ?

Q3.唾液中にも微生物は住んでいるのでしょうか?

基本的に唾液は無菌ですね。唾液腺という組織は生体の中に半分埋もれており、そこから基本的には無菌の唾液という液体を放出しています。

ですが、口腔粘膜にはいたることに菌が生息していますから、唾液が口の中に出た瞬間に微生物も入り込みます。最終的に唾液の菌は1ml中に1億個ほどいるということになります

Q4.唾液には抗菌作用あるのに口内細菌がいるというのは、どういうバランスなのでしょうか?

抗菌タンパク質は、口腔内の常在菌に対して効きにくいということがあるんです。

常在菌がいることで不都合を感じていないので、別に殺さなくていいわけなんですね。また、抗菌作用もあんまり高濃度ではないのでマイルドであるという理由もあります。

さらに、唾液の1ml中に1億個いる菌ですが、仮に50%が死に絶えたとしても、5000万個は残りますよね。すると、菌数はすぐもどりますから、唾液の作用は口腔内の菌には、あまり影響してこないということになります。

唾液減少のトラブル!なぜ減ってしまうのか

Q5.唾液の量が少なくなると、どのようなトラブルが起こるのでしょうか?

虫歯や歯周病、粘膜の感染症である口腔カンジダ症にもなりやすいということが分かっています

なので、唾液は多く出る方がいいですね。抗菌タンパク質によって感染から体を守るということもありますし、成長因子も含まれているので、傷があったところの細胞の成長を促して修復するという作用もあるんですよ。

Q6.なぜ唾液量は減ってしまうのでしょうか?

高齢になると何らかの病気で薬を飲むということがありますよね。多くの薬は、唾液が出にくいよう作用してしまうんです。そうなるとやはり、歯周病だとかカンジダ症だとかを進行させてしまう原因になりますね。

以前、高齢で20本以上自分の歯があるという方を調査させていただいたことがあるんですが、皆さん一様に唾液の量がとっても多かったんです。

まだ明らかにはなっていないと思うのですが、長生きをするカギには唾液をいつまでも産生できるということも含まれているかと思います。

Q7.高齢になっても唾液量を少なくしないためには、どうしたらいいでしょうか?

口の体操をしたりとか、歌をうたったりとか、おしゃべりしたりすることが大切になってくるといわれていますね。

鶴見大学 歯学部 口腔微生物学講座
大島朋子教授監修
経歴・プロフィール

鶴見大学 歯学部 口腔微生物学講座 学内教授
【略歴】
1993年~2000年:鶴見大学歯学部 助手
2001年~2008年:鶴見大学歯学部 講師
2009年~2014年:鶴見大学歯学部 准教授

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執筆者:歯の教科書 編集部

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