歯についている“ベタベタ”とした歯垢。名前はよく耳にしますが、正体はいったい何なのか詳しくご存じですか?
また、なぜ歯垢は硬くなり歯石になってしまうのでしょう。歯垢や歯石がどのように口内細菌と関係しているのかを、鶴見大学・歯学部・口腔微生物学講座・大島朋子教授に聞きました。
すると、細菌が増えるメカニズムや、虫歯・歯周病との関係性が見えてきました。
※前回の記事「ウイルスから身を守る唾液の役割!しかし、抗菌作用のある唾液の中には1億以上の細菌?」
歯垢の正体とは?菌と菌がつくり出す“ベタベタ”
お口の細菌と聞いてまず思い浮かぶのが歯垢の存在ですが、そもそも歯垢とは何なのでしょう。
歯垢は、口腔常在菌とその産生物の塊です。
お口の中にいる常在菌が増えた状態なんですが、菌だけではなく、菌が産生する“ベタベタ”するものから成り立っているんですよ。
常在菌は誰のお口の中にもいますので、歯垢は必ずできてしまうのですが、目で見て“白っぽくベタベタした状態”のものが歯にくっついていると悪さをするレベルになっています。
食べ残し=細菌が増える?
歯垢は細菌が食べ残しを栄養にして増えていくのでしょうか?
食べ残しを栄養にしているというのは少し誤解があります。
確かに菌にとっての栄養は、我々が食べたものの一部ではあるんですが、唾液の中に溶け込んだお砂糖などの糖質やアミノ酸などをえさにしています。
ですから、食べ残しに菌がかぶさって増えるということではないんです。
細菌の死骸!?歯垢から歯石への変化
歯垢が歯石になってしまうメカニズムを教えてください。
歯垢というのは細菌の塊ですが、時間が経過すると死ぬ菌も出てくるわけですよね。
その死んだ菌に、唾液中に含まれたカルシウムが沈着することで歯石となっていきます。
また、菌の中にはポリリン酸を持っているものがいまして、その菌は石灰化しやすく、そういう菌が核になって歯石が成長していく場合もあります。
簡単にいうと古くなった歯垢と考えていただいていいですね。
死んでも炎症成分を出しつづける!歯石除去の重要性
細菌の塊である歯垢や歯石は、口内のトラブルとどのように関係してくるのでしょうか?
虫歯は死んだ菌ではなく、生きて活発に酸を出している菌によって引き起こされます。
歯周病は歯石と深く関係していますね。歯石の周りにいる歯周病原菌が影響しているのはもちろんですが、死骸である菌の中にも炎症を引き起こす成分を出しているものがいるんです。
LPS(内毒素)とよばれていて、それが炎症のもとになっているんですね。ですから、歯石は取らなくてはいけないとなりますよね。
歯の教科書 編集部まとめ
歯垢の正体は、菌が産生する“ベタベタ”で、歯にくっついていることで悪さをしてしまいます。
また、歯垢の中にいる細菌もやがては死に、そこに唾液中に含まれたカルシウムなどが沈着することで歯石へと変化していきます。
さらに、菌の中には死んでも炎症成分を出し続け、歯周病に影響を与えているものがいることも分かっています。
以上のことから、歯石は放置せず、歯医者さんに通い除去してもらうことが大切だと分かります。
鶴見大学 歯学部 口腔微生物学講座 学内教授
【略歴】
1993年~2000年:鶴見大学歯学部 助手
2001年~2008年:鶴見大学歯学部 講師
2009年~2014年:鶴見大学歯学部 准教授
執筆者:
歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。