【教授に聞く】大学病院での歯科治療には紹介状が必要?大学病院で治療を行う歯科医師が解説

前回、前々回と、日本大学歯学部 保存学教室 修復学講座教授 宮崎真至(みやざきまさし)先生に虫歯治療で使う詰め物のお話、おとな虫歯にかんする解説をお伺いしました。今回は、敷居が高く感じがちな「大学病院での歯科治療」について、また日本の歯科治療技術についてなど、詳しく聞いていきます。
前回までの記事:
虫歯の詰め物は銀歯だけじゃない!~虫歯治療における保存修復治療について~
いまさら聞けない虫歯治療について~「おとな虫歯」についても詳しく解説~

この記事の目次

宮崎先生に【大学病院での歯科治療】について聞いてみた!

Q1.日本大学歯学部付属歯科病院の特徴・町の病院との違いは?

私たちの日本大学歯学部付属歯科病院は、患者さんを治療する診療ユニットが144台あります。1日だいたい約800名の患者さんの治療をしています。さまざまな専門性の高い診療科がありますので、お互いに連携して、患者さんにあった、いわゆる「テーラーメイド」の治療をしていくことができるというのが大きな特徴です。

また、歯科口腔外科で骨を切ったり、歯を抜くのに入院が必要だったりといった、ニーズに対応できるように、ベッドが24床あります。落ち着いて治療を受けられ、大きな手術が必要な場合にも、施設が整っています。

Q2.大学病院での治療は紹介状は必要?

日本大学歯学部付属歯科病院は、初診の患者さんの40%ほどが紹介状をお持ちになります。逆に言うと、60%の方が紹介状なしにいらっしゃるということです。日本大学は100年を超える歴史があり、この病院も同じ100年の歴史があるので、信頼関係を築いてくださる患者さんがいます。ですので、敷居が高いと思わず、かかりつけの歯科病院と同じ気持ちで来ていただければと思います。

Q3.日本大学歯学部付属歯科病院の患者さんはどんな方が多い?

「日本大学歯学部付属歯科病院」は、年齢層としては50代以降の方がメインとなっています。私たちの病院は、矯正歯科、小児歯科も持っています。そちらは、比較的若年の方がいらっしゃるため、患者さんの層は幅広いです。幅広いですが、やはり50代の方が多いというのが特徴です。

日本大学歯学部教授 宮崎真至 先生

Q4.保存修復の治療を学生さんに教える際どのように教えている?

大学病院の目的というのは、まずは「教育」です。そして患者さんの「診療」、「基礎的な研究」という三つの目的があります。その中で学生教育では、まずは4年次まではさまざまな模型を使って、臨床現場をシミュレーションした環境で、治療を進めていく方法であるとか、実際の削り方を教えていきます。

そして、4年次の終わりに、全国共通の試験があり、それをパスした者が、5年次から患者さんのいる臨床の現場で、まずは見学をしていきながら、自分で必要な技術を、模型を使って練習していきます。そしてある程度の手技が身についたところで、教育を受けたドクターが学生の指導をしながら治療をしていきます。

Q5.治療のために海外にわたる「医療ツーリズム」は、歯科治療の現場にもある?

「医療ツーリズム(※)」は、今後も非常に拡大するかと思います。特に、中国の富裕層の方が日本の歯科治療を受けたいということでいらっしゃるというのが、多くなってきているそうです。日本大学歯学部付属歯科病院にも、時々そういったお問い合わせがあります。

保険に加入していなければ、保険適用外での治療となります。例えば、インプラント治療なども非常に高額な治療になるのですが、やはり金属を骨の中に埋め込むという、複雑な技術が必要になります。そういった治療を日本の歯科医師に行ってもらい、その後の治療を本国に戻って行うというケースも見受けられます。

(※編集部注:医療ツーリズムとは、住んでいる国とは別の国や地域にわたり、医療サービスを受けること)

Q6.諸外国と日本では、歯科治療の技術や歯科治療に対する意識に差があるというのは本当?

世界的に見て、やはり日本は歯科治療の技術が高いです。

世界的に見ていろんな国がありますが、例えば北欧は予防に非常に力を入れている国と言えると思います。予防することによって、虫歯や歯周病にならないということがわかっているわけですから、北欧ではそのような治療がメインになっています。

一方、中国などは人口が非常に多いので、よい治療を受けられている方もいますが、なかなかそういった状況にない方も多いようです。したがって、まだまだ虫歯が多いと言えるかと思います。国の経済的な発展、あるいは健康に対する考え方、そういったものでやはり国ごとの特徴はあるかと思います。

虫歯に対する治療、歯がなくなった時の治療は、どの国に行っても基本的には同じと考えてよいと思います。そういった中で、日本は国民健康保険というもので、ほとんどがまかなわれているのが現状です。こういう国は、他ではあまりないんですね。ですから、私たち日本人は高い水準の治療を国民健康保険のカバーのもとに受けることができる、非常に恵まれた国だと思います。

例えば、虫歯治療で白いプラスチック材料を詰める場合、日本で治療をすれば、それほど高額ではないです。1割負担、3割負担であったとしても、何百円、1000円~2000円くらいだと思います。

これが同じ治療をアメリカで行うと、2万円~3万円という、桁が違う金額になっていきます。これが、国民健康保険の大きなメリットであって、そういった治療を誰しもが受けることができるというのが強みだと思います。

まとめ

宮崎先生に全3回にわたり虫歯治療や詰め物の種類、大学病院での治療についてなど、さまざまなお話をお伺いしました。「虫歯があるけれど放置している」「欠けた歯をそのままにしている」という方は参考にしていただき、治療を検討してみてください。

日本大学 歯学部 保存学教室修復学講座
宮崎真至教授監修
経歴・プロフィール

日本大学歯学部 保存学教室修復学講座 教授

【略歴】
1987年:日本大学歯学部卒業
1991年:日本大学大学院歯学研究科修了
1994~1996年:米国インディアナ州立大学歯学部留学
2005年:日本大学教授(歯学部歯科保存学I)

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執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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