【教授に聞く】虫歯の詰め物は銀歯だけじゃない!~虫歯治療における保存修復治療について~

虫歯治療の際、削った歯をセメントや銀歯で詰めた経験がある方も多いのではないでしょうか。

今回は日本大学歯学部 保存学教室 修復学講座教授 宮崎真至(みやざきまさし)先生に、歯の削った部分を、詰め物や被せ物で修復する保存修復治療について詳しくお伺いしました。

「昔詰めた銀歯を白くしたい」「取れた詰め物をそのままにしていて治療を考えている」という方は参考にしてください。

この記事の目次

宮崎先生に【歯の保存修復】について聞いてみた!

Q1.宮崎先生が専門としている保存修復という分野とは?

私が専門にしているのは保存修復という分野で、主に虫歯ができたときにそれを詰めていく、詰め物を扱っている診療科です。

現在よく使われているのが「コンポジットレジン」という硬質のプラスチック材料で、これが主に用いられています。あるいは、「グラスアイオノマーセメント」という、ガラスと酸を混ぜたかたまりで、これも比較的よく使われている材料です。さらに、よく「銀歯」と言いますが、あのような「金属」で作った詰め物が、扱われている材料としてベーシックになっています。

Q2.詰め物・被せ物の種類と、それぞれの素材のメリットデメリットは?

現在よく使われている「コンポジットレジン」は接着性材料と併用しています。したがって、できるだけ歯を削らない治療が可能になります。(※)「グラスアイオノマーセメント」も同じような性質を持っていますが、一方で水にあたると、硬化初期にどうしても物性が下がるという欠点もあります。

金属は、型取りをして精密に作っていくので、削った歯に適合性が良いという利点がありますが、一方で、銀色であまりきれいではないという欠点があります。
(※編集部注:コンポジットレジンは光を当てると硬化する性質を持ち、歯との接着性が良い材料です。銀歯などの従来の詰め物や被せ物のように、修復するために歯を大きく削る必要がありません。)

Q3.前歯に適している素材と奥歯に適している素材は変わる?

前歯に適している材料は、目に触れる所なので歯と同じような色の材料を使うというのが基本になります。奥歯の方は、どちらかと言うときれいさよりも、機械的な強さの方が望まれるのが基本的な考え方です。

しかし、現在は材料の研究がどんどん進んでいます。研究が進む中で、前歯でも奥歯でも両方に白い材料で使える「コンポジットレジン」といった材料が使われるようになってきています。

Q4.虫歯になってしまった部分を削って詰める治療はどれくらいの時間がかかる?

ケースバイケースではありますが、だいたい治療にかける時間は20~30分くらいが一つの目安と思っていただいて良いと思います。もちろん、神経を取る治療など、複雑になればなるほど時間はかかります。日本大学歯学部付属歯科病院では、だいたい30分というのが一つの区切りで、30分では足りないという場合は1時間という考え方をしています。

もちろん歯科口腔外科で、難しい親知らずの抜歯になってくると、2時間ほどかかる場合もありますが、やはり治療の目安としては、30分以内と考えていただくと良いと思います。

Q5.歯の詰め物が取れた!取れた詰め物は歯医者さんに持って行った方がいい?

詰め物が取れて、取れた詰め物の形に異変がないのであれば、治療のときに歯医者さんに持って行くことをおすすめします。実際に取れた詰め物は、調整をすることによって口の中に戻すことができる場合もありますし、あるいは取れた物を参考にして、どういった原因で取れたのか知る手掛かりにもなります。

なくした物を一生懸命探す必要はありませんが、もし手元にあるのであれば、治療の際に持って行くことをおすすめします。

日本大学歯学部教授 宮崎真至先生

Q6.一度入れた詰め物はどのくらい持つ?だいたいのメンテナンスの周期は?

今、お口の中に詰め物、被せ物があったとします。だいたい今までの臨床的な論文を見ると、白い材料のコンポジットレジン、銀歯・インレーなどの金属の詰め物は、両方とも平均的な生存年というのが、ほぼ10年と言われています。

もちろん、何らかの原因で4~5年で外れてしまうということもあるかもしれませんし、20年、それ以上お口の中で機能するという場合もあります。だいたいの目安は10年と考えて良いと思います。

Q7.患者さんが保存修復の治療を受ける際に、治療法を患者さん自身が選択することはできる?

どのような治療でも、私たち歯科医師がそれぞれの症状に従って、いくつかの治療のオプションを示します。その中から、患者さんとの話し合いの中でより良い治療法を、お互いの同意の上で行うというのが現在の歯科治療の考え方です。

ですから、「歯科医師がこう言ったからこうしなければいけない」ではなく、自分が本当にどういう治療がしたいのか、という思いを先生に伝えてください。歯科医師は患者さんの気持ちを汲んで治療法を選択することになります。

Q8.治療直後の歯のブラッシングは日常のブラッシング方法と変えた方がいい?

保存治療で詰め物・被せ物をした場合は、治療直後にブラッシングをするのは難しいです。治療後30分~1時間たてば、いつも通りのお食事をしても大丈夫ですし、歯磨きを行っても良いです。だいたい目安としては30分~1時間おくと良いと思います。

Q9.患者さんが選択すべき治療法・アドバイスは?

治療の目的は、主に「物を噛む」という「機能性」、次にきれいであること、この機能性と見た目のきれいさを満たすような材料、これが現代の患者さんには求められていることだと思います。

「噛める」という機能と「美しさ」この二つが選択の大きな基準になると思います。

Q10.虫歯治療をする際「この歯を抜くかどうか」という選択はどういった基準で決められる?

現在、歯科治療の中で歯を抜くということはほとんど為されていないと考えても良いと思います。もちろん、親知らずであるとか、どうしても抜かなければいけないということはありますが、普通の虫歯治療で「歯を抜く」ということはほとんど行われていないと考えて良いと思います。

ただし、虫歯が進行しすぎて歯茎の中にまで虫歯があるような場合には、やはり抜かざるを得ないということもあります。しかし、現在の歯科治療の技術が向上したことによって、歯を抜くということはとても少なくなったと認識して良いと思います。

Q11.虫歯の削り残しがある上から修復治療をして、詰め物の下で虫歯が悪くなることは起こりえる?

虫歯の治療をして詰め物をしたその後に、虫歯の取り残しがあって再発することを「再発性う蝕」と言いますけれども、こういったことは起こりうることです。それができるだけないようにしていくため、歯科医師は虫歯を取るときに、その硬さ、着色度を見て、特殊な染色液を使って取り残しがないようにしていくというのが虫歯治療の基本になっています。

これ以上虫歯を取っていくと神経にまで達してしまいそうな場合には、ぎりぎりの所まで虫歯を取った後に、「グラスアイオノマーセメント」などの材料を詰めます。その後再び詰めた材料とともに虫歯を取っていくという治療法も行われています。これで、神経の中に歯ができてくるんですね。それをさらに2~3カ月たった頃に再び削っていくと「悪い所だけ全部取れて、健康な歯が残っている」という治療が行えます。ケースバイケースですが、できるだけ取り残しの虫歯がないよう、私たちはさまざまな技法を考えています。

まとめ

今回は宮崎先生に、虫歯治療で用いられる詰め物についてお伺いしました。次回は、宮崎先生に「おとな虫歯」についての解説や、年代別のデンタルケア方法などをお伺いします。

日本大学 歯学部 保存学教室修復学講座
宮崎真至教授監修
経歴・プロフィール

日本大学歯学部 保存学教室修復学講座 教授

【略歴】
1987年:日本大学歯学部卒業
1991年:日本大学大学院歯学研究科修了
1994~1996年:米国インディアナ州立大学歯学部留学
2005年:日本大学教授(歯学部歯科保存学I)

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執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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