舌苔の正しい取り方は?口臭予防に役立つオーラルケア方法まとめ

舌苔は、舌表面に見られる「白い付着物」です。「口臭の原因になる」という事実から、毎日のオーラルケアで舌苔を取り除く人もたくさんいます。しかしながら、ゴシゴシと力を入れて舌磨きをするのはよくありません。舌を傷つける原因になるからです。

そこで、こちらの記事では「正しいな舌の磨き方」を扱うことにしました。口臭を予防するためには、どのような舌苔のケアをするべきか…。毎日のオーラルケアを考える上で、参考にしていただければ幸いです。

この記事の目次

1.舌磨きのやり過ぎは要注意!? 舌苔の正しい取り方

「舌苔が口臭の原因になる」という考え方自体は、間違っていません。実際、過剰な舌苔は口臭の要因になります。

舌苔の主な構成要素は、「剥がれ落ちた粘膜細胞」「食べ物の残骸(食品残渣)」「細菌」などです。細菌がタンパク質を分解するときには、「揮発性硫黄化合物(VSC)」という悪臭のする気体が発生します。粘膜細胞はタンパク質ですし、食品残渣にもタンパク質は含まれますから、舌苔は「VSCの発生源」になり得るのです。

とはいえ、舌苔が発生すること自体は、ごく自然な生体反応です。「舌苔をゼロにする」というのは不可能ですし、するべきではありません。特に舌をゴシゴシと強く磨くのは、避けてください。舌苔は「舌表面の微小な突起(舌乳頭)」の隙間に入りこんでいます。無理に除去しようとゴシゴシ磨くと、舌乳頭を傷つけてしまうのです。

この章では、舌を傷つけない「優しい舌苔の取り方」を確認してみたいと思います。ゼロにしようとはしないで、「過剰に付着した舌苔を減らす」という力加減で、試してみてください。

1-1 舌を傷つけてはいけない理由とは?

舌乳頭の側面には、味を感じるための器官―味蕾が存在します。舌乳頭を傷つけるほど強く舌磨きをすれば、味蕾を傷つけてしまうかもしれません。味蕾がダメージを受ければ、味覚に悪影響が及びます。舌苔を取り除くのであれば、「舌を傷つけない方法で優しく除去する」というのが推奨される方法です。

時折、「歯磨きのとき、ついでに舌も磨く」という人がいますが、これはNGになります。歯ブラシは、歯を磨くための道具です。歯は人間の体組織でもっとも硬い部位である…という事実をご存じでしょうか?

そんな場所を磨くための道具で、舌をゴシゴシ磨くわけにはいきません。喩(たと)えるなら、金属タワシで発泡スチロールを磨くようなものです。そのため表面を傷つけてしまうことでしょう。

1-2 スポンジブラシ&口腔湿潤剤で舌のケア!

口腔ケアグッズの1つに「スポンジブラシ」という器具が存在します。介護を必要とする高齢者の口腔ケアに使われることも多い道具です。柄の先端にやわらかいスポンジがついており、スポンジ部分で歯・歯茎などを清掃します。このスポンジブラシなら、(過度に力を入れなければ)舌表面を傷つけることなく、舌苔の除去が可能です。

できるだけ摩擦を少なくするため、舌磨きのときは「口腔湿潤剤」を併用すると良いでしょう。口腔内が乾燥していると口臭が生じやすくなることから、「口の中に潤いを供給するジェル」がオーラルケアグッズとして市販されています。こういった口腔湿潤剤を舌に塗布し、歯磨き粉のように使いましょう。スポンジブラシの摩擦をさらに軽減すると同時に、口臭予防の作用向上が期待できます。

1-3 パイナップルで口臭予防!? 磨かないで舌苔を減らす方法

舌苔を減らす手段は、「物理的に除去すること」だけではありません。化学的に除去する方法もあります。「化学的」といっても、別に化学薬品を使うわけではありません。「食後にパイナップルを食べる」という習慣をつけるだけです。

子供のとき、「パイナップルを食べて舌の表面が痛くなった」という経験がある人はいませんか? これは、パイナップルに含まれるタンパク質分解酵素―ブロメラインの作用です。(皮膚・粘膜などはタンパク質なので)ブロメラインによって舌粘膜が分解されたことが理由です。大人でも、一度にたくさんのパイナップルを食べると、口の中が痛くなるかもしれません。

さて、舌苔の主成分には「剥がれ落ちた口腔粘膜」をはじめ、タンパク質が多く含まれています。また、舌苔が口臭の原因になるのは「細菌がタンパク質を分解した結果、VSCが発生するから」でした。ということは、別の方法であらかじめタンパク質を分解しておいたら、どうでしょう? 舌苔を減らし、口臭の原因を取り除くことが可能になります。

食後にパイナップルを食べれば、「剥がれ落ちた口腔粘膜」に加えて「食品に含まれていたタンパク質」の分解を促すことができます。細菌による分解が進むより前に、パイナップルのブロメラインで分解してしまうわけです。パイナップルのほかにも、キウイフルーツ、パパイア、イチジクなどタンパク質の分解酵素が含まれています。ぜひ、食後のデザートに「タンパク質を分解してくれる果物」を取り入れてみましょう。

2.舌苔をあらかじめ予防する方法は?

ここまでは「すでに付着した舌苔の取り方」を解説してきました。しかし、できることなら「そもそも過剰な舌苔が付着しないように予防する」という方向性で対処したいものです。そこで、舌苔の付着を防ぐ「予防的オーラルケア」を考えてみましょう。

2-1 ドライマウスを予防する!

口臭が悪化する要因の1つに「ドライマウス(口腔内の乾燥)」があります。唾液は「口腔内を洗浄して清潔に保つ作用」だけでなく「リゾチーム・ラクトフェリンなどの抗菌物質で雑菌の繁殖を抑える作用」を持っています。唾液の減少は「口腔内の衛生状態が悪化すること」に直結するのです。

ところで、舌苔の構成要素には「ブドウ球菌・連鎖球菌などの細菌」が含まれています。歯垢(プラーク)と同じように「細菌の塊(かたまり)」という側面があるわけです。ということは、「唾液が減少→雑菌が繁殖→舌苔の増加」は一連の流れになると言えるでしょう。

以上から、「舌苔の付着を予防するには、ドライマウスを予防する必要がある」と結論づけられます。では、ドライマウスを予防するには、どうすれば良いのでしょうか?

自然な鼻呼吸を習慣化する

口呼吸が癖になっていると、ドライマウスのリスクが増大します。常に口を半開きにしていると、口腔内が乾燥するからです。何事もないときには口を閉じて、鼻で呼吸をするのが正しい姿です。口呼吸が癖になっているなら、閉口テープなどのグッズを使って、自然な鼻呼吸を習慣化しましょう。

噛みごたえのある食べ物をしっかり噛む

唾液の量は、常に一定ではありません。食事中に増加し、何も食べていないときに減少します。さて、唾液の量が増えるトリガーは、「噛むことによる唾液腺への刺激」です。しっかり噛むことで、唾液の増加が促されるのです。やわらかいものばかりではなく、噛みごたえのあるものをしっかり噛むことが、ドライマウス予防につながります。

2-2 舌の筋力を維持・向上する!

健康であれば、過剰な舌苔が付着することはありません。舌が唾液で洗われますし、「硬口蓋との摩擦」で清掃されるからです。硬口蓋というのは、「口の天井」に相当する部位です。何事もないとき、舌は硬口蓋に密着する位置にあります。結果、自動的に「硬口蓋との摩擦による清掃」がおこなわれるのです。

しかし、舌の筋力が低下していると、何もしていないときの「舌の位置」が下がってきます。結果、硬口蓋との摩擦回数が減り、舌苔が付着しやすくなるのです。この状態を「低位舌」と呼んでいます。

舌の筋力低下を防ぐためには「会話をすること」「きちんと噛むこと」の2つが基本になります。発音にも舌を使いますし、咀嚼・嚥下のときにも舌は動いています。きちんと舌を動かすことが、筋力維持の基本です。

3.まとめ

口臭を防ぐための対症療法として、「正しい舌苔の取り方」を知っておくことは無駄ではありません。しかし、それ以上に大切なのは「過剰な舌苔が付着しない予防習慣」です。口臭予防の基本は「口腔環境の維持・向上」ですから、気になる点があるときは予防診療に注力している歯医者さんに相談してみましょう。

 

先生からのコメント

「エピオス」というたんぱく質分解水がありまして、もちろん飲んでも平気です。舌苔だけでなく、口腔全体の殺菌に使用します。当医院でも殺菌などに使用しています。

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執筆者:歯の教科書 編集部

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