歯肉炎の痛みは悪化のサイン!自宅で行う対処法と歯科治療

歯茎に違和感がある、腫れている、出血がある…という人は、歯肉炎かもしれません。歯肉炎は痛みをともなわないことも多いため、気づきにくいことがあります。

この記事では、歯肉炎とはどんな状態を指すのか、原因や放置するリスクは何か、さらに自宅でできる応急処置や歯医者さんでの治療法、予防法まで紹介しています。

歯茎の腫れや出血などが気になる人はぜひ参考にしてください。

この記事の目次

1.歯肉炎の痛みは“歯周病が進行したサイン”

1-1 歯肉炎は歯周病の初期症状を指す

歯肉炎は、歯周病の初期症状です。

歯周病とは、細菌などにより歯を支える組織が壊されていく病気の総称です。歯周病は症状の度合いにより、歯肉炎から歯周炎へと進行します。

歯肉炎の症状とは、歯茎が赤紫色に変色する、腫れる、少しむずがゆい感じがする、歯磨きのときに血が出るといったものです。歯肉炎では、ほとんど痛みをともないません

ですから、違和感を多少覚えながらも自覚しにくく、痛みを感じる頃にはすでに歯肉炎から歯周炎という段階に進んでいる可能性が高いです。

1-2 初期には痛みが出にくい歯周病

細菌の作り出した汚れの塊である「歯垢(プラーク)」が歯や歯茎についていると、その歯垢の中にある細菌が歯茎に炎症を引き起こします。これが「歯肉炎」のはじまりです。

細菌が作り出す毒素により、歯と歯茎の境目にある「歯周ポケット」と呼ばれる溝に2~3ミリ程度のすき間ができます。

そして、さらにこの状態を放置していると炎症はひどくなり、歯周組織や歯を支える骨である「歯槽骨」、歯の根っこの周りにある「歯根膜」にまで細菌がおよび、壊していくのです。

このように、歯肉炎(歯茎のみの炎症)にとどまらず、歯槽骨などの周辺組織にも炎症がおよんだ状態が「歯周炎」です。

歯周炎の軽度の状態なら、この段階でもまだ痛みがないことが多いです。症状としては、歯茎の腫れや出血、膿、口臭などが挙げられます。

1-3 痛みが出始める中度の歯周病

歯周炎が中度にまで進行すると、歯周ポケットの深さは4~6ミリ程度まで深くなります。炎症がさらに悪化し、歯槽骨を半分近くまで溶かしているので、歯を支えきれずにグラグラし始め、噛むと痛みが出ます

歯茎の痛みを感じる場合は、すでにこの段階に達していると考えられます。

1-4 痛みを放置する危険性

重度の歯周炎では、歯周ポケットの深さは6ミリ以上になると言われています。歯槽骨が半分以上溶けて歯周組織が破壊され、歯はグラグラになります

歯茎の痛みが生じても放置していると、最終的には歯は抜け落ちてしまい、生え変わりのない永久歯は取り返しのつかないことになるのです。

2.自宅でおこなう歯茎が痛むときの対処法

歯茎が痛むとき、すぐに歯医者さんで診察を受けるのが望ましいです。しかし、すぐに行ける状況にないときは、鎮痛剤などで痛みを和らげましょう。

2-1 痛みに効く鎮痛剤を飲む

鎮痛剤は、痛みを一時的に抑えるのに有用です。痛みの根本原因を治すわけではないので、あくまでも応急処置として服用してください。

歯医者さんでは、「ロキソプロフェン」を主成分とする鎮痛剤を処方してもらうことができます。歯茎の痛みを抑えるのに有効と言われていて、ドラッグストア等でも購入可能です。

※市販薬を使用する際には薬剤師の指示に従い、用法用量を守って使用してください。

2-2自宅でできるその他の応急処置

痛い部分を冷やす

冷却シートなどを頬の側から貼って冷やしたり、濡れタオルをあてたりして冷やします。注意点として、直接冷やそうとして氷などを口に含むのは、しみて刺激が強すぎることがあるので避けましょう。

うがい薬でうがいをする

「ポビドンヨード(商品例:イソジンうがい薬など)」や「グルコン酸クロルヘキシジン(商品例:コンクールFなど)」には殺菌作用が期待できます。消毒のためにも使用すると良いでしょう。

硬いものを食べないようにする

歯周炎により、歯槽骨が溶けて歯がグラグラしているために痛みが生じている可能性が考えられますから、硬いものを食べることは避けましょう。歯が折れたり抜けたりしてしまうこともあります。

2-3 歯茎が痛むときの歯ブラシのあて方

痛みが出ているときや出血、腫れなどの症状があると歯ブラシをあてるのが怖いと感じるかもしれませんが、歯磨きをしないのは症状の悪化につながります。歯周病は歯垢が原因で生じているからです。

やわらかい歯ブラシで、歯周ポケットの中に歯ブラシの毛先が入るように、45度の角度をつけて優しくあてましょう。

横に小刻みに動かし、マッサージするような感じで磨きます。固い歯ブラシでゴシゴシと力を入れて磨くと、歯茎を傷つけてしまうので控えましょう。

3.歯医者さんでの治療方法

歯医者さんでは、歯周ポケットの深さを測る検査や、レントゲンで歯槽骨がどの程度、破壊されているかを見ることで、進行度合いを判定します。

診断の結果「歯肉炎」の段階であれば、表面の歯垢を取る処置と併せて、正しい歯磨きの仕方を指導してくれるでしょう。

「歯周炎」に進行している場合、基本的な治療は、歯と歯茎の間の歯垢や、歯周ポケットの中についた歯石を超音波による器具などで取り除く「スケーリング」です。

歯周ポケットが「6ミリ以上」と深い場合は、麻酔をして歯茎を切開し、歯茎の奥深くについた歯石を取り除く「フラップ手術」をおこなうこともあります。

症状の程度に合った治療を受け、指導された正しい歯磨きを毎日丁寧におこなうことで、歯茎の腫れが徐々に治まり、健康な歯茎へと改善していくはずです。

4.歯茎に痛みをともなう他の原因

4-1 歯が割れている場合

歯が割れているときに歯茎に痛みが出ることがあります。表面上は正常に見えても、歯の根っこの部分が割れているケースです。

この場合は、抜歯するか、歯の割れ方によっては歯を分割すれば残せることもあります。

4-2 歯の根っこの先に膿がある場合

途中で治療をやめた歯があったり、以前治療した歯の根っこが再度、虫歯菌に感染していたり、虫歯で歯の神経が死んでいたりすると、歯の根っこの先に膿がたまり痛むことがあります。

「根尖病巣(こんせんびょうそう)」と呼ばれる病気です。

この場合は、歯の根っこの中から膿を出す治療をおこない、改善を目指します。

5.歯茎の痛みを繰り返さないために

痛みが治まってしまうと、歯のケアに気を遣わなくなってしまい、歯肉炎、歯周炎を繰り返してしまうことがあります。次の点を心がけましょう。

5-1 毎日の歯磨きを丁寧に

歯肉炎を生じなければ、痛みがともなうような歯周炎になることがありません。そのためには、毎日の歯磨きが欠かせません。しかし、ただ磨けばよいというものではありません。

歯並びや歯磨きの癖というのは一人ひとり異なりますから、歯医者さんで指導を受け、自分に合った歯みがきの仕方を身につけましょう。

歯ブラシや歯磨き剤の選び方、デンタルフロスや歯間ブラシの使い方なども教えてもらいましょう。

5-2 歯医者さんで定期健診を受ける

歯肉炎は、自覚症状がないうちに進行していきます。

歯医者さんには「痛みが出てから行く」という人が非常に多いですが、定期的に健診を受けていれば、早期発見・早期治療ができ、少ない負担と短い期間で済みます。

ですから、歯医者さんが苦手という人こそ、定期健診をおすすめします。3カ月から6カ月に一度は健診を受けましょう

また、どれだけ丁寧に歯磨きをしていても自分では取りきれない汚れがありますから、歯医者さんで定期的に除去してもらうことは、歯肉炎の予防にもつながります。

6.まとめ

「歯肉炎の痛みでは?」と思っている歯茎の痛みは、すでに歯周病が進行している状態かもしれません。歯周炎の段階になると、自然に治ることは難しくなります

自宅で応急処置をして痛みが一旦引いたとしても、油断せずに早い段階で歯医者さんを受診して、詳しく診断してもらいましょう。

歯と歯茎を健康に守るために、普段からのお口のケアが大切なのです。

経歴

1975年 東京歯科大学 卒業
1975年~1977年 新宿ビル歯科 勤務
1978年 早川歯科医院 開業
現在に至る

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。