矯正の痛みはどうやわらげる?自分でできる対策と歯医者さんで行う治療

矯正治療に興味があるけれど、痛みがあるのでは?と、不安に感じている方もいるのではないでしょうか。確かに矯正治療は歯を動かすことから、痛みが出ることもあります。しかし、痛みといっても治療中ずっと続くわけではありません。矯正治療の痛みこそ、歯が動いているという証拠です。つまり、変化の現れともいえます。この記事では、矯正治療における痛みの原因や対処法をお伝えします。すでに矯正治療を受けている人や、痛みが不安で矯正治療を受けるかどうか迷っている人は、ぜひ参考にしてください。

この記事の目次

1.矯正の痛みの原因と、痛みをやわらげる対策

痛みの原因別に、痛みを軽減できる対策を図にまとめました。

詳しい対策の方法は、以下の章で解説しています。

1-1歯が動くときの痛み

矯正装置をつけて数時間ほどたつと、痛みを感じたり違和感を覚えたりします。
個人差はありますが、1週間ほどすると矯正装置に慣れ、だんだん痛みが引いていきます。

矯正装置の調整をおこなうと、また同じような痛みや違和感に悩まされることになります。
しかし、このサイクルを繰り返すことで、歯は徐々に動いていきます。

歯が動くときの痛みを感じるのは、一般的に、装置を装着した後や、調整後の数日間です。
痛みが気になる人は、矯正治療後の予定を空けておきましょう。

痛みがつらいときに、安静にする時間を得るためです。
また、矯正治療後に、大事な商談やイベントの予定を入れることも避けた方が良いでしょう。

【痛みをやわらげる方法】

■鎮痛剤を飲む
痛みがあるときは、我慢せずに鎮痛剤を飲みましょう。
歯医者さんで矯正治療を受けたあと、鎮痛剤を処方してくれる先生もいます。
処方薬がある場合は処方薬を、ない場合は市販薬でも構いません。

※薬を服用する際には薬剤師や医師の指示に従い、用法用量を守って使用してください。

■ソフトプレート
ソフトプレートとは、柔らかい素材でできた、口の中でくわえるプレートです。
矯正装置によって歯が移動する痛みがあるとき、矯正装置が壊れない程度に数回噛むことで血流を改善させ、痛みをやわらげることができます。

■炭酸ガスレーザー
炭酸ガスレーザーは、歯肉の炎症を抑え、痛みをやわらげる作用があります。
虫歯や歯周病、口内炎などの治療において使用されることもあり、矯正時の痛みに使用することがあります。

1-2食事中の痛み

矯正装置をつけた直後や装置の調整をした後は特に、食事で歯を噛み合わせる際に強い痛みを感じる場合があります。
口内に器具を装着しているため、噛み合わせ時に痛みを感じなくなっても、食事をする際には違和感があるでしょう。

個人差はありますが、こうした痛みや違和感は、装置装着後や調整後、早くて2~3日、長くても1週間ほどでやわらぎます。

【痛みをやわらげる方法】

■柔らかいものを食べる
なるべく噛まなくても食べることができるもので、装置装着後や調整後のしばらくの期間を乗り切りましょう。
食べられる食品の種類が減りますが、栄養が偏らないようメニューを工夫しましょう。
痛みがある時に食べやすい食品は、2章で詳しく紹介しています。

■食事時に効くように鎮痛剤を飲む
柔らかいものを食べていても痛みを感じる場合は、食事のタイミングにあわせて鎮痛剤を飲むと痛みが軽減できます。
市販薬でも構いませんが、市販薬を使用する際には薬剤師の指示に従い、用法用量を守って使用してください。

1-3器具の接触による痛み

装置が口内に接触することで、痛みを感じることがあります。
歯の表面に装着するブラケットの厚みは、慣れるまで頬などの粘膜を刺激することがあります。

矯正が進むにつれて、ブラケット同士をつなぐワイヤーの長さが余り、先端で口内が刺激されることもあります。
これらは矯正治療開始後の数ヶ月以内で起こりやすく、いつも同じところに接触する場合には、そこに口内炎ができることがあります。

【痛みをやわらげる方法】

■矯正治療用ワックスを使用する
矯正装置やワイヤーが口内にあたり痛みがある場合は、歯医者さんに相談しましょう。
人体に害のない、矯正用ワックスを処方してもらえます。

口に入り食べてしまっても問題がなく、必要な分だけちぎって手で丸めてつけることができます。
ワックスを矯正装置やワイヤーの先端につけることで、粘膜を保護することができます。
粘膜に直接ワイヤーがあたることを防ぐことができるため、痛みを軽減できる場合があります。

■歯医者さんでワイヤーの調整をしてもらう
矯正治療用ワックスを使用してもワイヤーが当たることによる痛みが軽減しない場合は、歯医者さんでワイヤーの調整をしてもらえるかどうか相談をしてみましょう。

ワイヤーの長さや当たり方を見てもらい、痛みが少なくなるように調整してもらえることがあります。

1-4ほほや舌を噛んでしまう痛み

矯正治療は、大きく噛み合わせを変えていく治療です。
歯が動くことで噛み合わせのバランスが変わり、矯正治療中は、食事中にほほや舌を噛んでしまうことが多くなるといえます。

【痛みをやわらげる方法】

■ゆっくりと噛んで食べる
特に急いで食べている時、ほほや舌を噛みやすくなります。
早食いの癖のある方は改め、ゆっくりと噛んで食べるようにしましょう。
食事を取る時間に、余裕を持つようにするのも良いでしょう。

2.矯正治療中の食事はどんなものを食べればいい?

2-1痛みがある時に食べやすいもの

矯正装置の装着後や調整後は、なるべく柔らかく、噛まなくても良いものが食べやすいでしょう。

痛みがあるとき食べやすいもの
噛むことができないときにおすすめ 少しは噛むことができるときにおすすめ
野菜や果物のスムージー 煮込みうどん
とろとろのお粥 よく煮込んだ具だくさんスープ
ゼリー飲料 煮魚(焼き魚)
プリン ハンバーグ
ヨーグルト グラタン
アイス 肉団子

2-2.矯正治療中は食べるのを控えたほうがよい食品と理由

固い食べもの

固いおせんべいやクッキー、氷などは避けましょう。固いものを噛み砕く時、矯正装置が外れたり壊れたりすることがあるためです

■理由
固いものを食べることによって、矯正装置に余計な力がかかり、装置が外れたり壊れたりしてしまう場合があります。
装置が壊れてしまうと、作り直すまでの期間、治療を中断することになり治療期間が伸びてしまいます。

矯正中はなるべく固いものを食べるのを控えましょう。

キャラメルやアメなど粘着性のあるお菓子

キャラメルやアメなど粘着性のあるお菓子は、装置が外れてしまったり、装置にこびりついてしまったりする原因になります。

■理由
矯正中は装置の細部まで歯ブラシが届きにくくなります。
装置にこびりついた粘着性の食品は歯磨きでは取りづらいため、虫歯になりやすくなります。

矯正装置に挟まる食べもの

麺類やもずくといった細い形状のものや、線維のあるものは矯正装置に挟まりやすいです。
ワイヤーを使った矯正装置は、ワイヤー部分に食べものが挟まりやすいため、こういった食品は避けた方が良いでしょう

■理由
矯正装置の隙間は歯ブラシが届きにくいため、丁寧に歯磨きをしないと磨き残しが増える傾向にあります。
磨き残しが多いと、虫歯や歯周病、口臭の原因となります。
矯正装置に挟まる食品は食べるのを控えるか、細かく切るといった食べやすくする工夫が必要です。

3.矯正の痛みのメカニズム

3-1歯の構造

歯は、歯茎から出ている「歯冠」、歯茎の中に根っことして埋まる「歯根」、歯根を支える骨である「歯槽骨」から成り立ちます。
「歯根」と「歯槽骨」の間にはクッションのような役割をになう「歯根膜」があります。

歯根膜には、破骨(はこつ)細胞という骨を溶かす細胞と、骨芽(こつが)細胞という骨を新たに作る細胞が存在しています。

3-2矯正のしくみ

矯正治療では、「歯冠」にブラケットと呼ばれるワイヤーを通すボタンのようなものを装着し、歯を動かしたい方向にワイヤーで力をかけます。
根の部分にある歯根膜には、「骨芽細胞」と「破骨細胞」という二つの細胞があります。
歯根膜は、歯槽骨の上に植わっていますが、歯根膜に一定の力が加わると、その下の歯槽骨に刺激が伝わります。

図のように、矯正によって歯の片側に力がかかると、力がかかった側には空間が生じ、歯根膜の骨芽細胞が働くことで、空間を埋める新たな歯槽骨が作られます。

一方、押された側の歯根膜には破骨細胞が働き、歯槽骨が減少し歯槽骨は再構築されます。
これを繰り返すことで、歯は徐々に動いていきます。

4.まとめ

矯正の痛みは歯が動くために必要な痛みであり、矯正治療が進んでいる証拠です。
装置を装着した後や、装置調整後しばらくは痛みを感じることがありますが、その痛みは矯正期間中ずっと続くわけではありません。

強い痛みがある場合も必要以上に不安にならず、落ち着いて自分でできる対処法を試したり、歯医者さんに相談したりしましょう。

プロフィール&経歴

血液型:B型

誕生日:1978-09-07

出身地:千葉県

趣味・特技:映画鑑賞、読書、勉強(歯科医療関係)

座右の銘:一意専心

好きな食べ物:唐揚げ(唐揚げニスト)、ハンバーガー、ステーキ

2003年 明海大学歯学部 卒業
2005年 すまいる歯科 分院長就任
2008年 あすか歯科クリニック 分院長就任
2012年 東葉デンタルオフィス 開院
現在に至る

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。