歯並びを直す方法は?自分に合う矯正治療、避けたい習慣・癖

歯並びをどうやって直すか迷っている人も多いのではないでしょうか?歯並びを直す方法はいくつもあるため、自分の歯並びに合った直し方を選ぶことが大切です。

この記事では歯並びの状態ごとに適した矯正治療はどれか、メリット・デメリットや費用、治療期間の目安などを交えて紹介しています。歯並びを悪くする恐れがある、日常生活の習慣や癖も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

この記事の目次

1. 歯並びをセルフチェック

自分が当てはまる歯並びはありますか?チェックしてみましょう。

  • 上の歯が下の歯よりも過度に前に突出している(上顎前突=じょうがくぜんとつ)
  • 上の歯が下の歯に大きく被さっている(過蓋咬合=かがいこうごう)
  • 上下の前歯が前に突出している、口元が前に出ていて上下の唇が閉じにくい(上下顎前突=じょうげがくぜんとつ)
  • 下の前歯が上の前歯よりも前に突出している(反対咬合=はんたいこうごう)
  • 上下の咬み合わせが逆になっている部分がある(交叉咬合=こうさこうごう)
  • 歯が部分的に奥まったり突出したりしている(叢生=そうせい、乱ぐい歯とも)
  • 歯と歯の隙間が広い部分がある(空隙歯列=くうげきしれつ)

それぞれの症状に適した矯正治療は次の表の通りです。

歯並びの状態や矯正範囲によっては、矯正治療方法の選択肢が変わることもあります。歯医者さんと相談の上、納得できる治療方法を選びましょう。

上顎前突 上下顎前突 過蓋咬合 反対咬合 交叉咬合 叢生 空隙歯列
ブラケット矯正
舌側ブラケット矯正
部分矯正
マウスピース矯正
抜歯をともなう矯正(※1)
歯科用アンカースクリュー(※2)
外科矯正

※1犬歯より奥にある歯の噛み合わせを改善するときは、「抜歯をともなう矯正」が治療の第一選択となります。そのため、この表における「抜歯をともなう矯正が適している」と言える範囲も広く表しています。
※2歯科用アンカースクリューは、部分矯正やマウスピース矯正と並行しておこなうことがあります。

2. 矯正治療の種類別にメリット・デメリット、費用、治療期間の目安

矯正治療は、その種類ごとにメリット、デメリットがあります。
また、歯の状態や使用する矯正器具の種類、矯正範囲などによって、費用や治療期間は大きく異なります。
そのため、詳しい費用や治療期間については歯医者さんに確認しましょう。

下記に掲載している費用の目安は、歯の教科書(※)調べによるものです。
自由診療料金表

2-1 ブラケット矯正

歯並びを直すスタンダードな方法が、ブラケット矯正です。
一本一本の歯の表面に、ブラケットと呼ばれる器具を取り付け、ブラケット同士をワイヤーでつないで歯を固定します。
ワイヤーが引っ張る力を利用して、歯を少しずつ動かして矯正します。

メリット

他の矯正治療よりも安価な場合が多いです。
幅広い歯並びの状態に対応できる、歯を0.1ミリ単位で矯正することが可能、といったメリットもあります。

デメリット

ブラケットやワイヤーが目立ってしまう点がデメリットです。
特に金属製のブラケットは目立つため、見た目が気になる人には透明や白のブラケットを装着するといった方法もあります。

また、ブラケットやワイヤーの間に食べカスや歯垢(プラーク)が溜まりやすくなります。
装着している間は丁寧にケアする必要があります。

費用と治療期間の目安

上下顎で10~150万円程度、2~3年程度かかるのが目安です。

この矯正法に適した歯並び

上顎前突 上下顎前突 過蓋咬合 反対咬合 交叉咬合 叢生 空隙歯列

2-2 舌側ブラケット矯正(リンガル矯正、裏側矯正)

ブラケットを舌側(歯の裏側)に装着し、ワイヤーで矯正するのが舌側ブラケット矯正です。
歯の表側にブラケットを装着するよりも、歯並びを整えることが技術的に難しくなります。
そのため、費用も表側のブラケット矯正より割高になることが多いです。

メリット

ブラケットやワイヤーを歯の裏側に装着するため、目立ちにくい点がメリットです。
また、歯の裏側は表側よりも汚れが付着しにくいため、表側と比べると虫歯リスクを減らせます。

デメリット

ブラケットやワイヤーが舌に触れるため、慣れるまでは違和感がある人もいます。
歯の裏側は汚れが溜まりにくいとはいえ、丁寧にケアしないと装着部分に食べカスや歯垢(プラーク)が溜まりやすいことに変わりはありません。
矯正期間中は入念なケアが必要です。

費用と治療期間の目安

上下顎で80~150万円程度、期間は2~3年程度が目安となります。

この矯正法に適した歯並び

上顎前突 上下顎前突 過蓋咬合 反対咬合 交叉咬合 叢生 空隙歯列

2-3 部分矯正

主に、前歯の歯並びを直すのに用いられるのが部分矯正です。
前歯にブラケット矯正やマウスピース矯正を施したり、乱ぐい歯(※)を抜歯したり削ったりして、重なりを整えていきます。
奥歯の咬み合わせを改善する必要がない場合に適しています。

※乱ぐい歯とは、歯が凸凹していたり重なって生えたりしている状態(叢生=そうせい)のことです。

メリット

全体を矯正する場合と比べて治療期間が短く、費用も抑えられるといったメリットがあります。
また、器具の装着が部分的で済むため、違和感が少なくて済みます。

デメリット

部分的に矯正することで、それまで問題なく咬み合わせていた他の部分に違和感が出ることがあります。
また、顎の骨がずれていることが原因の場合、前歯だけを部分矯正しても後戻り(※)してしまうことがあります。

※後戻りとは、矯正した歯が元の状態(位置)に戻ってしまうことです。

費用と治療期間の目安

ブラケット矯正の場合5~40万円程度、マウスピース矯正の場合30~40万円程度といったように、矯正の種類によって費用が異なります。
治療期間は3ヶ月~1年程度が目安になります。

この矯正法に適した歯並び

上顎前突 上下顎前突 過蓋咬合 反対咬合 交叉咬合 叢生 空隙歯列

2-4 マウスピース矯正

ブラケット矯正と違い、取り外し可能なマウスピースを使った矯正方法です。
歯の動きに合わせて定期的にマウスピースを交換します。
歯列の凹凸を直すといったような、比較的軽度の矯正に使用されます。

一方、歯を動かす幅が大きい矯正には向いていません。

メリット

マウスピースは透明なので目立ちにくい点や、自分で取り外しができる点がメリットです。
また、取り外し可能なため、ブラケット矯正と比べて歯のケアがしやすい特徴があります。

デメリット

装着時間を守らないと、治療期間が長くなってしまう場合があります。
マウスピースの種類にもよりますが、装着時間は1日17~20時間程度が目安です。
そのため、時間の管理が苦手な人や、頻繁に外す機会がある人には合わないかもしれません。

また、歯並びや口腔内の状態によっては、この治療を選べないこともあります。

費用と治療期間の目安

上下顎で15~120万円程度、期間は1~2年程度が目安です。

この矯正法に適した歯並び

上顎前突 上下顎前突 過蓋咬合 反対咬合 交叉咬合 叢生 空隙歯列

2-5 抜歯をともなう矯正

抜歯をして歯が移動できるスペースを作る方法です。
他の矯正治療と並行しておこなうのが基本です。

例えば、顎が小さく歯が綺麗に並ぶスペースがない人の場合、乱ぐい歯になったり、上顎前突や上下愕前突(じょうげがくぜんとつ※)になったりすることがあります。
このような場合でも、抜歯してスペースを作ることで歯を動かし、歯並びを整えることが可能になります。

※上の歯が舌の歯よりも前に突出している状態が上顎前突、上下の前歯が前に突出している状態が上下顎前突です。

メリット

あらかじめ抜歯によってスペースを作っておくため、歯の移動がスムーズにできます。
上顎前突で口を閉じることができなかった人も、口元を整えることが期待できます。
スペースを作ってから移動させるため歯並びが安定し、後戻りしにくいという特徴もあります。

デメリット

抜歯をする際に麻酔を打つことになります。
歯が移動してくるまでの間、抜歯した部分は隙間になるため、違和感を覚えることがあるかもしれません。
また、空いたスペースが広く、歯を動かす幅が大きい場合、治療期間が長くなることがあります。
健康な歯を抜くことになった場合、心理的なことも含めてデメリットと感じる人がいるかもしれません

費用と治療期間の目安

矯正治療における抜歯は、基本的に保険適用外となります。
そのため、歯医者さんによって費用が異なり、1本あたり7千円~1万5,000円程度が目安となります(ただし、抜歯の費用も矯正治療の費用に含まれているケースが多いようです)。
抜歯自体は1日で終わりますが、治療期間は、抜歯後にどの矯正方法を選ぶかによって大きく変わってきます。

この矯正法に適した歯並び

上顎前突 上下顎前突 過蓋咬合 反対咬合 交叉咬合 叢生 空隙歯列

※犬歯より奥にある歯の噛み合わせを整えるときは、「抜歯をともなう矯正」が治療の第一選択となります。そのため、この表における「抜歯による矯正が適している」と言える範囲も広く表しています。

2-6 歯科矯正用アンカースクリュー

顎の骨に、矯正用に作られたアンカースクリュー(※)を一時的に埋め込み、それを土台としてブラケット矯正をおこなう方法です。

※アンカースクリューとは、ネジのような形をした矯正治療用の器具です。チタンといった素材でできており、スクリュー頭部の直径は4mm~12mm程度のごく小さなものです。

メリット

歯の表面や舌側に装着するブラケット矯正や、マウスピース矯正と比べて、治療期間の短縮が期待できます。
顎の骨にしっかりとアンカースクリューを埋め込むため土台が安定し、より強い力をブラケットに加え、歯を動かすことができるためです。
特定の歯だけを希望する位置に動かすといったことが可能なほか、複雑な症例にも適応可能なため、抜歯のリスクや外科手術のリスクを減らすことができます。

デメリット

1本あたり5~20分程度で終わりますが、アンカースクリューを埋め込む際、局所麻酔を用いた手術が必要になります。
また、治療費が高額になってしまうことが多い点や、施術できる歯医者さんが限られている点も、デメリットに感じるかもしれません。

費用と治療期間の目安

上下顎で60~150万円程度が目安となります。
ベーシックなブラケット矯正と比較して治療期間が短くなることが多く、症例によっては約半分程度の治療期間で済むこともあるようです。

この矯正法に適した歯並び

上顎前突 上下顎前突 過蓋咬合 反対咬合 交叉咬合 叢生 空隙歯列

2-7 外科矯正

上記のような矯正では改善が困難な場合、顎の骨を削るといった外科的な手術を施し、歯の土台からアプローチを目指すのが外科矯正です。
顎変形症(※)と診断された場合、保険適用となるケースもあります。

※顎の骨の形、大きさ、位置などに問題があって、咬み合わせや発音といった機能に異常が生じている状態を顎変形症と言います。

メリット

一般の矯正治療が期待できない症状でも結果が見込めます。
根本からアプローチできるため後戻りしにくく、より高い矯正治療が期待できます。
口元や横顔といった、見た目にコンプレックスを抱えている場合でも解消が期待できます。

デメリット

全身麻酔による本格的な外科手術を受けることになるため、数日~1週間程度の入院が必要になります。
手術直後は顔が腫れ、口が思うように開けられないといった不自由を感じることがあります。
また、保険を適用するには、自立支援医療機関や顎口腔機能診断施設指定の医療機関で顎変形症の診断を受け、術前矯正、外科矯正、術後矯正のプロセスを経る必要があります。

症状や手術の内容によって異なりますが、保険適用の場合、術前・術後矯正および外科矯正で160~210万円(3割負担で50~65万円)程度が目安となります。
全額自己負担の自由診療となる場合、歯医者さんごとに料金が大きく異なりますが、170~350万円程度が目安となります。
治療期間は、トータルで4~5年程度かかると見ておきましょう。
具体的には、術前矯正が6ヶ月~2年程度、手術後の入院期間が数日~1週間程度、術後矯正が6ヶ月~1年半程度が目安です。

また、術後矯正が終わった後は、後戻りを防ぐため1~2年の保定期間を設けることが多いです。

この矯正法に適した歯並び

上顎前突 上下顎前突 過蓋咬合 反対咬合 交叉咬合 叢生 空隙歯列

3.矯正治療で保険適用となるケース

3-1 保険適用となる矯正治療

矯正治療で保険適用となるのは、次の3つのケースです。
下記以外の矯正治療は、すべて全額自己負担の自由診療となります。

先天性異常に起因する矯正治療

唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)、鎖骨・頭蓋骨異形成(さこつ・ずがいこつ-いけいせい)といった、「別に厚生労働大臣が定める疾患(※)」が原因で咬み合わせに異常をきたし、矯正治療が必要なケース

顎変形症(がくへんけいしょう)に起因する矯正治療

顎の骨の形や大きさに問題があることで咬み合わせに異常をきたし、矯正治療と同時に顎の骨を削るといった外科手術が必要になるケース

前歯3本以上の永久歯萌出不全(えいきゅうしほうしゅつふぜん)に起因する矯正治療

3本以上の永久歯が、歯茎や顎の骨の中に留まって生えてこないため咬み合わせに異常をきたし、矯正治療の際に歯茎や顎の骨を切開する手術が必要になるケース

4.歯並びを悪くする恐れがある習慣や癖

歯並びは、日常生活の習慣や癖によって変化してしまうことがあります。
また、せっかく矯正治療しても、習慣や癖が原因で戻ってしまうことが考えられます。

歯並びの矯正治療を考えている人は、同時に歯並びを悪くする恐れがある習慣や癖を把握しておくことも大切です。
習慣や癖の多くは、意識することで改善できます。

4-1 歯並びを悪くする恐れがある習慣や癖

頬杖やうつぶせ寝

頬杖やうつぶせ寝が習慣の人は、歯並びに影響を与えることがあります。
頬杖やうつぶせ寝は、顎の骨に直接強い力が加わり続けるためです。
頬杖をやめる、あお向けで寝るといった対策で改善を目指しましょう。

口呼吸

舌が下の前歯を押し出すことで、徐々に下の前歯が突出してしまいます。
口呼吸の人は、呼吸するために舌を下の前歯の裏に落としているためです。

舌が下の前歯に触れる時間が長くなるほど、影響を受けやすくなります。
鼻呼吸を意識して歯並びが乱れるのを防ぎましょう。

下唇を噛む

下唇を噛む癖がある人は、上顎前突や過蓋咬合(かがいこうごう※1)になりやすいとされています(※2)。
徐々に上の前歯が前に、下の前歯が後ろに傾いてしまうためです。

気づいたときに改善するよう意識しましょう。

※1上の歯が舌の歯に大きく被さっている状態を過蓋咬合と言います。

片側の歯で噛む

片側の歯で噛む習慣がある人は、歯並びに影響が出ることがあります。
良く噛む方の顎の筋肉が発達し、左右のバランスが崩れることがあるためです。

左右両方の歯でバランス良く噛むことを心がけましょう。

舌で歯の裏側を押す

舌で裏側から押されている歯は、少しずつ前に傾いてしまいます。
無意識に押してしまう癖がある人は、気づいたときにやめるように意識していきましょう。

歯ぎしりや食いしばり

歯ぎしりや食いしばりは、歯や顎の骨に強い力が加わります。
癖になることで歯並びや顎の骨が変形してしまうことがあります。

食いしばりは意識して防ぐことができますが、寝ている間の歯ぎしりは改善が困難です。
歯医者さんで専用のマウスピースを作製してもらうことも検討しましょう。

5.まとめ

歯並びを直す方法はいくつもありますが、症状に応じた矯正方法を選択することが大切です。
この記事で紹介した、症状ごとに合った矯正方法を参考に、歯医者さんとよく相談した上で納得のいく矯正方法を選びましょう。

また、歯並びを乱す恐れがある習慣や癖がある人は、できるところから意識して改善しましょう。

プロフィール&経歴

出身校:大阪大学

血液型:O型

誕生日:1956-11-09

出身地:大阪府

趣味・特技:料理

1983年大阪大学歯学部 卒業
1983年大阪大学歯科口腔外科第一講座 入局
1985年大阪逓信病院(現 NTT西日本大阪病院)歯科 勤務
1988年遠藤歯科クリニック 開業
現在に至る

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。