歯の矯正の期間と治療時期や治療法によって変わる仕組み

歯の矯正治療は、子供のころからよく見かけるものであるために、治療期間が長いというイメージがあります。ただ、実際のところ、どのくらいの治療期間を必要とするのか不安に感じている方も多いでしょう。

治療期間は症状や治療法ごとに、ある一定の目安が存在します。もちろん、患者さん一人ひとりの状況に応じて、治療期間の前後があることは前提ですし、それによって必要となる費用も変動します。

この記事では、矯正治療にかかる期間・費用をまとめて紹介していきます。どのくらいの期間治療することを想定しておけばよいのか、いくらくらいの費用を準備すればよいのか、矯正治療を検討している人は、参考にしてみてください。

この記事の目次

1.歯の矯正治療にかかる期間

1-1 全体的な治療でかかる期間は約1年半~2年半

矯正装置を装着してから外すまでの期間は、約1年半~2年半かかるのが目安です。ただ、ひと口に矯正治療といっても、さまざまな種類がある上、症状なども異なるために、患者さんによって治療期間が異なることは、あらかじめおさえておきましょう。

1-2 通院頻度

矯正治療では、矯正装置のメンテナンスを必要とするので、定期的な通院が求められます。通院頻度は3~4カ月に1回、もしくは1カ月に1回が平均的です。こちらも治療法などによって個人差があります。

1-3 期間が延びる場合

ほとんどの医院では、治療前に目安の期間を提示します。しかし、歯の動きが遅かったり、何らかの事情で矯正装置を一時的に外していたり、出張などで通院できなかったりした場合、期間内に治療を終えるのは困難です。

延長期間は数カ月から数年と患者さんによってさまざまですが、逆に歯の動きがいいときは治療期間が短縮されることもあります。

1-4 矯正治療にかかる費用

矯正治療は保険が利かない「自由診療」であり、医療機関は医療費を自身で設定することができます。各医療機関で金額が前後しますが、治療費の目安は70~100万円程度です。

治療を受ける際には、複数の医療機関から見積もりをもらい、治療内容と併せてもっとも納得できるところを選ぶといいでしょう。

1-5 種類の治療費計算方法

前項のとおり、矯正治療は自由診療であるために、治療費の計算方法までも各医療機関で異なります。

ただ、いくつかの計算方法がみられるものの、「総額制」「処置料別払い制」の2つを採用する医療機関がほとんどです。医療機関を選ぶときは、治療方法の計算方法にも注目してみましょう。

総額制

治療前に治療にかかる合計金額を提示する計算方法です。定額制、トータルフィー制とも呼ばれます。治療開始時に支払総額が分かるので、資金準備がしやすく支払う手間が少ないのが特徴です。

また治療期間の延長・短縮に関わらず、治療費が増減することはありません。このため、長い期間かかりそうな治療の場合にメリットがあります。

処置料別払い制

矯正装置、基本料金、メンテナンス料など、医療機関が行う処置別に治療費が計算される方法です。例えば、はじめに矯正装置と基本料金を支払い、定期的な通院時にメンテナンス料をその都度支払う、といった流れです。

治療期間が短くなると処置料を支払う回数が減り、総額が少なくなる一方で、治療期間が長引くと治療費がかさむリスクもあります。

矯正治療に保険が適用される場合

唇や口腔内の一部が裂けた先天異常の状態で生まれる、「口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)」の患者さんは、保険を取り扱う医療機関にて矯正治療の保険が適用されます。

また上あごと下あごの大きさなどに異常があり、噛み合わせが難しくなる「顎変形症(がくへんけいしょう)」の患者さんのうち、外科治療が必要になる人は保険が適用されます。

2.矯正治療の時期によって変わる期間

2-1 小児矯正

小児矯正は、永久歯が生えそろっていない子供を対象にする「1期治療」と、永久歯が生えそろった子供を対象とする「2期治療」の2つに大別され、それぞれで治療期間が異なります。

1期治療は基本的に永久歯の交換を目安にして、およそ10カ月~1年半で治療を終えるのが基本。2期治療は、1年半~2年半が目安です。

費用

1期治療の治療費は総額で30~60万円程度、2期治療だと総額で70~100万円程度です。ただ1期治療を終えたあと、2期治療に入るケースがよくあります。

この場合、同じ医療機関での治療であれば2期治療の総額目安が、25~65万円程度まで下がるといいます。

2-2 成人矯正

目安の治療期間は、1年半~2年半です。小児矯正の1期治療と比べると1年ほど長いですが、2期治療とはほとんど変わりません。子供の矯正治療を検討するのであれば、期間も短く歯も動きやすい早い時期での治療が望ましいでしょう。

費用

70~100万円が目安です。総額制・処置料別払い制のいずれにしても、これほどの費用がかかる可能性があるために、あらかじめ準備をしておくとスムーズに治療が進むかもしれません。

3.治療法によって変わる期間

3-1 ブラケット矯正

歯の表に装着したブラケットに、ワイヤーを通して歯並びを整える治療法です。金属製のブラケットを使用することでよく知られており、数ある矯正治療のなかでもっともスタンダートなタイプだとされます。治療期間の目安は2年半~3年です。

費用

65~100万円

3-2 舌側ブラケット矯正

前項のブラケットを、歯の裏側に装着する治療法です。一見すると矯正治療をしていることが分からない、という大きなメリットがあります。ただ、舌に金属などが当たるので違和感を抱く人も多いそうです。治療期間の目安は3年です。

費用

ブラケット矯正の金額のおよそ1.5倍

3-3 マウスピース矯正

透明で薄いマウスピースを装着する治療法です。あまり目立つこともなく、食事や歯みがきのときは取り外しが可能ですが、それだけに治療に時間がかかってしまうことがあります。治療期間の目安は1年~2年です。

費用

上下で80万円

3-4 部分矯正

歯並びが気になる箇所だけに、装置を取り付ける治療法です。ブラケット、舌側ブラケット、マウスピースなど、いずれの方法でも治療できます。治療期間の目安は3カ月~1年です。

費用

15~80万円

4.矯正治療の流れ

4-1 矯正治療開始までの流れ

はじめに患者さんの悩みを医師が聞き取り、それに応じた治療方法を提案するためのカウンセリングを行います。

次にレントゲンや歯型をとり、歯並びの状況を明確にしたあと、より具体的な治療計画を説明してくれます。ここで治療費などの提示もあるので、不安な点はすべて聞いておきましょう。

4-2 矯正治療開始後の流れ

矯正治療のスタートは、症状と希望に応じた矯正装置を装着するところから始まります。最初はどうしても違和感を抱きますが、徐々に慣れるはずです。

装着している装置にもよりますが、いずれの装置でも定期的なメンテナンスを必要とするので、目安として1カ月に1回の通院が求められます。

4-3 矯正完了後の流れ

矯正治療の期間を終えたあと、装置を外します。ただ、まだ歯が動く可能性があり、歯並びを固定する「リテーナー」という装置を新たに装着しなければなりません。

装着期間は矯正装置を装着した期間と同じくらいです。矯正装置とは異なり、取り外しも可能で、違和感も抱きにくいといわれます。

5.矯正治療の痛みについて

5-1 ブラケット矯正による痛み

ブラケット矯正では、歯の動きをワイヤーで促すために、少しの痛みが生じます。痛みのピークは治療開始の夜、もしくは翌日の夜です。またワイヤーやブラケットが口腔内を傷つけるケースもあり、とくに運動を頻繁におこなう人は痛みが顕著になる傾向があります。

5-2 マウスピース矯正による痛み

マウスピースで歯が圧迫されるように感じ、装着直後は締め付けられるような痛みがあります。こちらも痛みのピークは治療開始の夜、もしくは翌日の夜です。

5-3 治療開始から2日を過ぎると徐々に痛みに慣れてくる

痛みのピークを過ぎると、痛みに慣れが生じます。治療開始から2日を過ぎた頃には慣れを感じてくるはずです。

痛みがなくなるというわけではなく、痛みの感じ方が変わるイメージです。そうなると日常での違和感や不快感が気にならなくなってきます。

6.まとめ

矯正治療は、やはり多少の時間と費用がかかってしまいますが、歯は一生ものであり、美しくすることに損はありません。見た目がきれいになるのはもちろん、口腔内トラブルが発生しにくくなるなどのメリットもあります。

歯並びの重要性を知っていながら、矯正治療に踏み切れていない人は多いようですので、ぜひこの機会に検討してみてください。

プロフィール&経歴

目指したきっかけ:医療には関心あったが、やはり一番は両親の教育が大きかったのではないかと思う。
やりがい:大学のときは他の職種とは違う特殊性に惹かれていたのですが、実際歯科医になってからはお礼を言われる部分です。

松本歯科大学卒業後、同病院勤務。
琉球大学医学部付属病院歯科口腔外科にて
顎顔面領域悪性腫瘍治療に従事。
その後都内複数歯科医院勤務後、
麻布シティデンタルクリニックを開院。
現在に至る。

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。