プラークコントロールを理解し実践するための方法と重要性

「プラークコントロール」という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。ここでは、そのプラークコントロールの重要性をしっかり理解してもらうために、中身を詳しく説明していきます。

プラークとは歯垢を指していますが、その歯垢を除去し、口内環境を清潔に保つために“コントロール”する方法を紹介していきます。

この記事では、プラークコントロールの具体的な内容をしっかりとお伝えしていきます。ぜひ最後まで読んでみてください。

この記事の目次

1.プラークコントロールの意味を理解する

プラークコントロールと聞いて、「毎日の歯磨き」と想像する方がいると思います。ただ、プラークコントロールとは、「歯磨き」だけを表した言葉ではなく、口内環境を正常に保つために必要な条件をまとめたものといえます。この章では、プラークコントロールの意味をしっかり理解してもらい、内容を詳しく紹介していきます。

1-1 プラークとは

プラークとは、いわゆる「歯垢」と同じ意味で、歯の表面に付着した食べカスや細菌などによって構成されています。とても粘性の高い物質で、そう容易に除去することはできません。ただ、歯面に付着したプラークを放置すると、やがてそれは「歯石」へと変化していきます。

歯石とは、文字通り石に近い物質で、これが形成されてしまうと、患者さん自身の手で取り除くことは不可能となります。それだけに、プラークコントロールが重要となってくるのです。

1-2 プラークコントロールの内容

プラークコントロールは、単に歯磨きをして、歯垢を取る作業ではありません。わかりやすくいえば、歯面に歯垢の付着がない「プラークフリー」な状態を常に保つことです。ここでは、その具体的な中身についてお伝えしていきます。

正しいブラッシング

まずは、正しい歯磨きの仕方を学ぶ必要があります。これは、歯科医師や歯科衛生士といった歯磨きの専門家から学ぶことになります。あなたの口腔内の状態を見てお口に合ったブラッシング法を指導してくれますので、その助言に従って、日々の歯磨きを行っていきます。

歯医者さんでの歯石の除去と虫歯の治療

プラークの付着を促進するような歯石などは、歯医者さんで除去してもらいます。虫歯や歯周病を発症している場合も、プラークが付着しやすくなるため、すぐに治療を受けましょう。

間食に気をつける

食生活に関しても気を配る必要があります。糖分が高く、粘性の強いお菓子などを口にする機会が多いと、プラークの発生に大きく寄与しますので、何を食べるかや間食の回数については十分に注意を払う必要があります。

逆に、ごぼうやニンジンなど、繊維質が豊富な食品を多く口にするようにしましょう。繊維質は、プラークの発生を抑制するだけではなく、歯列全体を綺麗に磨き上げる効果もあります。

1-3 プラークが付着した状態を目で見て確認 

プラークコントロールがどれだけ達成されているかは、歯垢染色液を用いることでわかります。皆さんも、歯医者さんで一度は染色された経験があるのではないでしょうか。普段通りに歯磨きをして、染色液で歯を染めます。

その際、赤く染まっている部分がプラークであり、プラークが付着した状態を目で見て確認することができるので、磨き残しを把握できるわけです。

また、磨き残しを表す指数として「プラークコントロールレコード」というものがあります。赤く染め出された面積を計算し、プラークスコアが20%以下であれば、プラークコントロールが達成されていると判断します。

2.プラークを除去する具体的な方法

私たちの歯は、とても複雑な形をしています。それだけに、漫然と歯磨きをしているだけではプラークを除去することは難しいといえます。そこで、具体的なブラッシング法から、細部までプラークを除去できる方法などについて解説していきます。

2-1 具体的なブラッシング法

ペングリップが基本

歯ブラシは、鉛筆を持つようにして磨きましょう。手のひら全体で握ってしまうと、ついつい力が入り過ぎてしまいます。すると、局所的にはよく磨けるのですが、歯面を満遍なく磨くことが困難となります。また、強く磨いていると、歯ブラシの毛先がすぐに潰れてしまい、これもまた磨き残しの原因となります。

一つ一つの歯を小刻みにゆっくりと磨く

歯ブラシを大きく水平に動かすと、短時間でブラッシングを終了することができます。けれども、これでは歯のほんの一部しか磨けていないのが現実です。ですので、ブラッシングをする際には、一つ一つの歯に歯ブラシを当て、小刻みに磨いていきましょう。

歯間部や歯の根元は要注意

お口の中で最もプラークがたまりやすいのが歯と歯の間や、歯と歯茎の境目です。ここに上手く歯ブラシの毛先を潜り込ませることができれば、磨き残しの大半は解消されます。

2-2 実践方法はブラッシングだけではない

プラークコントロールの方法は、毎日の歯磨きがベースとなることは間違いありません。しかし、患者さん自身が行うブラッシングには限界があります。まるで、歯の模型のような整った歯列で、なお且つ、全て正しいブラッシングを毎日実践していたら、プラークフリーな状態を保つことも可能です。

けれども、そういった人は存在していませんので、ブラッシングだけでは不足している部分を、歯医者さんでの歯石取りや食生活の改善などによって補う必要があるのです。中でも、歯ブラシ以外の道具を使うことは必要不可欠であり、自身では届かない部分までクリーンに整えてもらえます。

2-3 デンタルフロスや歯間ブラシを使う

歯の表面に磨き残しがある人は、ほとんどいません。舌で触ってツルツルとしていれば、良く磨けたなと終了してしまうことでしょう。ただ、染色液で染め出しをすれば一目瞭然ですが、磨き残しがあるのは、歯間や歯と歯茎の間なのです。この部分を歯ブラシ以外の道具を用いてお掃除することで、本当のプラークフリーを実現することができます。

具体的には、デンタルフロスや歯間ブラシとった道具を用いて、歯と歯の間のプラークを除去します。また、プラークの粘性を弱める歯磨き粉が市販されていますので、そちらを合わせて使用すると、歯と歯茎の間のプラークも落としやすくなります。

3.プラークコントロールの重要性

プラークコントロールは、歯面の不快なネバつきを取り除くためだけに行われるものではありません。実はそこには、とても重要な意味と役割があるのです。

3-1 歯石の付着を防ぐ

プラークは、歯石になる前の段階です。ですので、プラークコントロールを実施していると、歯石の形成を抑えることにも繋がります。歯石はとても硬いものですから、歯ブラシで磨き落とすことはできません。それだけに、付着したプラークを毎日きれいに除去することは非常に重要であるといえるのです。

3-2 虫歯や歯周病を防ぐ

プラークには、沢山の細菌が住んでいます。その中には、当然のことながら虫歯や歯周病の原因となる細菌も含まれています。そういった口腔内で悪さをするような細菌が住みにくい環境を作るのも、プラークコントロールのひとつの役割といえます。

3-3 ブラッシングが容易になる

プラークコントロールによって、歯の表面はもちろんのこと、歯間部や歯と歯茎の間にもプラークがない状態になれば、ブラッシングが容易になります。例えば、常に整理整頓がなされた部屋というのは、汚れたり散らかったりすると、すぐにわかりますよね。

プラークも同様で、磨き残しがあった場合でも、汚れが見つけやすくなります。また、プラークや歯石のない歯には歯ブラシも当てやすいというメリットも出てくるのです。

4.まとめ

プラークは、ネバつきの強い食べカスではありません。ネバネバとした温かい場所は、細菌の温床となります。虫歯や歯周病の原因菌は、プラークの中で増殖します。また、プラークを放置すると、やがて硬い歯石へと変化します。プラークが持つリスクを知れば、プラークコントロールの意義も理解できるようになるはずです。

私たちは、意義や目的が定まると、自ずと行動できるようになります。ですので、お口の健康を維持するためにも、これまで解説してきたようなプラークコントロールを実践していきましょう。正しいプラークコントロールで、口内環境をしっかり維持していくことが大切です。

経歴

1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る

執筆者:歯の教科書 編集部

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