「いつも口の中が乾く…」と感じる場合、ドライマウスを疑うべきかもしれません。特に「水分補給しても、またすぐに口の中が乾く」という状態では、さまざまな口腔トラブルを招く恐れがあります。また、慢性的なドライマウスがあるようなら、何らかの病気の兆候かもしれません。
こちらの記事では、「口の中が乾く原因・対処法」など、ドライマウスの基礎知識を解説しています。
この記事の目次
1.口の中が乾く!?ドライマウスのセルフチェックを!
なんだか「口の中が乾く」と感じているなら、以下のような自覚症状がないかを考えてみてください。詳細な診断は歯科医院などで受けるしかありませんが、「ドライマウスの恐れがあるかどうか」という目安くらいは測れるはずです。
・パン・クッキー・ポテトサラダなどの食品が飲みこみにくい
・食事のとき、あまり味を感じないことがある
・会話中に口内の唾液がなくなり、舌が貼りつく感覚がある
・口の中を潤すために、頻繁に水分を摂取している
・口臭が強くなったように感じる
・口の中にネバネバした感覚がある
・鏡で舌を観察すると、表面に亀裂が入っている
・口角炎ができることが多くなった
・口内炎ができることが多くなった
・唇・口角が乾燥し、ひび割れる
以上の10項目のうち、当てはまるものが2~3つ見つかった場合、ドライマウスを疑ったほうが良いかもしれません。いずれも「口の中が乾くと、起こる症状」だからです。
2.口の中が乾くのはなぜ?主な原因&対処法チェック
さて、ドライマウスは「症状の名前」であり、病名ではありません。口の中が乾くこと自体が病気なのではなく、何らかの病気の症状として、口の中が乾くことがあるのです。この章ではドライマウスの原因に焦点をあてて、「どんな場合に口の中が乾くのか」を見ていくことにしましょう。
2-1 噛む力が低下している
唾液は常に同じ量が分泌されているわけではなく、食事中・食後にたくさん分泌される傾向があります。そして、食事しているときに唾液の分泌量が増えるのは、「噛むことで唾液腺が刺激されるから」です。そのため、噛む回数が少なかったり、噛む力が低下したりすると、唾液の分泌量が減ってしまいます。やわらかいものばかり食べたり、失った歯をそのままにしたりしていませんか? 思い当たる節があるなら、口の中が乾くのは、噛む力が落ちているせいかもしれません。
一般的対処法→噛む回数を増やす or 補綴(ほてつ)
やわらかい食べ物ばかり食べていたなら、噛みごたえのある食品を取り入れて、噛む回数を増やしましょう。歯を失ったことで噛む力が低下しているなら、補綴治療を受けることが先決です。補綴とは「失った歯を人工物で補うこと」を指します。たとえば、入れ歯・ブリッジ・インプラントが補綴治療に該当します。
2-2 口呼吸の習慣
何もしていないときは、口を閉じているのが自然な状態です。しかし、口呼吸の癖がついている人は、常に口が半開きになっていることがあります。口を開けっぱなしにすると、当然ながら、唾液が蒸発して口の中が乾くはずです。寝起きに口内が乾いている場合などは、口呼吸が習慣化して、寝ている間ずっと口呼吸をしていたのかもしれません。
一般的対処法→閉口テープなどのグッズを活用
口を閉じるための「閉口テープ」など、口呼吸を改善するための対策グッズが市販されています。あるいは、ごくふつうのマスクでも、ある程度の代用が可能でしょう。「口を閉じる」「口呼吸しにくい環境を作る」といった習慣づけで、徐々に解消できると思います。
2-3 薬の副作用
処方薬・市販薬を問わず、「口の中が乾く」という副作用を持つ医薬品はたくさんあります。たとえば、花粉症の時期に多用される「抗ヒスタミン薬」も、口が渇く副作用を持っています。
一般的対処法→医師・薬剤師に相談
必要で処方されている薬を勝手にやめるわけにもいきません。あまりにドライマウスがひどいようなら、医師に相談の上、副作用を緩和する方法がないか検討してもらいましょう。市販薬の副作用が疑われる場合は、まず薬剤師に相談するようにしてください。
2-4 鉄欠乏性貧血・悪性貧血によるもの
鉄欠乏性貧血・悪性貧血の症状として、口の中が乾くことがあります。悪性貧血というのは萎縮性胃炎でビタミンB12が吸収できなくなり、赤血球・白血球をきちんと産生できなくなる病気です。名前が恐怖を煽りますが、「かつてビタミンB12が未発見だった時代に致死的な病気だった名残」であり、現在は命にかかわるような病気ではありません。
一般的対処法→鉄分投与・ビタミンB12投与
鉄欠乏性貧血には鉄分、悪性貧血にはビタミンB12を投与します。根本原因となっている貧血を治療することで、ドライマウスの症状も落ち着きます。
2-5 糖尿病によるもの
糖尿病になると、体内のホルモン―インスリンが分泌されなくなります。インスリンには血液中のブドウ糖を回収する働きがあるのですが、インスリンが不足すれば血液中のブドウ糖はそのままになってしまいます。すると、腎臓が「尿と一緒にブドウ糖を排出しよう」という働きをするので、尿から糖が検出されるわけです。
さて、糖尿病の患者さんはブドウ糖排出のために多尿になるため、水分がどんどん排出されて慢性的な脱水症状をきたします。結果、口の中が乾く感覚が生じます。
一般的対処法→インスリン投与など、糖尿病治療
根本的な問題は糖尿病にあるので、糖尿病の治療をおこないます。インスリン注射、生活習慣の改善で、糖尿病の悪化を防ぎましょう。糖尿病が悪化すると生命にかかわります。初期症状であるドライマウスをきっかけに治療開始できたなら、「早期発見・早期治療ができた」と前向きにとらえるべきでしょう。
2-6 シェーグレン症候群によるもの
シェーグレン症候群は自己免疫疾患の一種で、唾液腺・涙腺の分泌能力に障害が発生します。根本治療は難しく、ドライマウス・ドライアイに対する対症療法が中心になります。
一般的治療法→人工唾液による対症療法
根本治療が難しい以上、症状を抑える治療が中心になります。ドライマウスに対しては、人工唾液による対症療法が第一選択となるでしょう。軟膏・スプレータイプの口腔潤滑剤を用いて、口腔内のうるおいを保ちます。
3.まとめ
口の中が乾く「ドライマウス」は、加齢によって起こる場合もあります。唾液は口腔内の健康を守るためにさまざまな働きをしていますから、唾液の分泌量が減ることは大きな問題になり得ます。「ドライマウスかな?」と思ったら、早めに医師・歯科医師に相談し、口腔内のうるおいを保つようにしましょう。
また、ドライマウスが「大きな病気の症状」として現れた場合、早めに医療機関を受診することで早期発見・早期治療につなげることができます。いずれにしても、「ちょっと変だな」と思った時点で医療機関に相談することが、将来の健康を保つための第一歩になります。
近年、口腔乾燥症外来が大学病院などにも設置されるようになってまいりましたので、ご相談に行かれるとよいでしょう。
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歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。