歯科医院での口内チェック、クリーニングでお世話になる歯科衛生士。歯科衛生士にはどうやってなり、どのような業務を行っているのでしょうか?
東京医科歯科大学・木下淳博教授にお話を伺い、歯科衛生士という職業について解説していただきました。
また、歯科衛生士不足という問題についても明かされます。
※前回の記事「歯科大学で今、重視される“プロフェッショナリズムの教育”とは?」
歯科衛生士になるには!3年間の専門教育
歯科衛生士になるには、どうすればいいのですか?
大学や短大などの歯科衛生士学科や口腔保健学科など、または歯科衛生士学校、専門学校で3年間の専門教育を受けます。そして、歯科衛生士の国家試験に合格する必要があります。
歯科衛生士養成機関で、過去と比べて変化した考え方はありますか?
歯科衛生士養成機関での修業年限は、最初は1年制、次に2年制、2010年からは全ての学校で3年制となりました。
また、以前は国家試験を受験するためには、細かく時間を決められた授業科目を履修する必要がありました。
現在は、教育上単位数と内容が大まかに定められているのみで、大学や歯科衛生士学校の裁量にゆだねられています。
歯科診療の補助!歯科衛生士が行う業務
歯科衛生士になると、どのような業務を行うことになるのですか?
歯科医師による包括的な指示のもと、歯科衛生士は歯科診療の補助業務を行うことができます。
歯科診療の補助というと、歯科医師とともに手術や処置を補助することをイメージすると思いますが、歯周病と診断された患者の、病気の進行具合や口の中の状態を検査したり、歯科医師からの指示に沿って複数回に渡って歯周病の治療の一部を担ったりするなど、歯科衛生士が主体的に行う処置も、歯科診療の補助に含まれます。
また、病気の治療という意味ではなく、歯の予防処置として汚れを取ったり、薬を塗ったり、歯の磨き方を指導したりということも、歯科衛生士の重要な業務です。
歯科衛生士は正社員という考え方、フリーランスという考え方、どちらがベーシックなのでしょうか?
基本は正社員としての雇用だと思います。最近はフリーランスとして、いろいろな歯科医院で診療補助を行っている歯科衛生士も増えているようです。
雇用形態は、個人でどちらの方が向いているかの問題ですので、どちらがいいとか、悪いとかではないですね。
現状1万人は足りていない!不足する歯科衛生士
歯科衛生士は、現在足りているのでしょうか? 不足しているのでしょうか?
歯科衛生士は、今も将来も不足しています。求人数も、ほぼ常時1万人を超えていますので、今この瞬間に1万人足りていないということになります。
また、歯科衛生士の資格を持っていて、就業していない方が14万人いるといわれています。
歯科衛生士が不足している原因は何なんでしょうか?
歯科衛生士の給与体系がですね…、根本的にいけないのではないかと思いますね。
歯科衛生士になった男性が学生のころ、このようなことをいっていました。
「将来歯科衛生士を続けていって、結婚して、子供ができて、子育てをしていくとした場合、それが可能な収入を得られるかどうか心配」
歯科衛生士の初任給は、ほかの職業と比べると高いのですが、経験をつんで増えていくのかというとそうではないんです。
女性も、こうした給与体系で悩んでいる方は多いと思いますよ。ただ、多くのことを任せられる、知識と経験を積んでいる歯科衛生士は、多くの歯科医院から引っ張りだこですし、正社員であれば高給・高条件で雇用されているようです。
こうした問題をなくしていくためにはどうしたらいいのでしょうか?
診断は歯科医師が行って包括的な治療方針は指示しますが、その後の細かい判断は歯科衛生士に任せ、歯科衛生士が患者さんのニーズに合った方法を、主体的に判断し行動できるような歯科診療形態をより多くしていくことが望ましいです。
この診療体制が今よりも拡大すれば、歯科医師の働き方が効率的になり、歯科医師不足も対処できますよね。
結果的に、歯科衛生士が日本の歯科医療を支えていく部分が大きくなり、技術と経験に応じて収入も増えていくということにもつながります。
歯の教科書 編集部まとめ
歯科衛生士になるには、歯科衛生士養成機関での3年間の専門教育と、国家試験を合格する必要があります。また業務内容は、歯科医師による包括的な指示のもと行われる歯科診療の補助となります。
歯科衛生士不足は深刻で、今この瞬間に1万人が足りていないといいます。今後、日本の歯科医療を支えていくためにも、歯科衛生士が主体的に活躍できる歯科診療形態の拡大がもとめられます。
1987年:東京医科歯科大学歯学部卒業
1987年:東京医科歯科大学大学院入学(歯科保存学第二講座)
1991年:東京医科歯科大学大学院修了
1991年:東京医科歯科大学歯学部附属病院医員(第二保存科)
1992年:東京医科歯科大学歯学部附属病院助手(歯科保存学第二講座、第二保存科)
1994年:東京医科歯科大学歯学部助手(歯科保存学第二講座)
1998年:Visiting Instructor, Harvard School of Dental Medicine, Boston, MA (3月~9月)
2000年:東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 生体支持組織学系専攻 生体硬組織再生学講座 歯周病学分野 助手
2004年:東京医科歯科大学 歯学部 口腔保健学科 口腔健康推進統合学講座 口腔疾患予防学分野 教授(~2010年)
東京医科歯科大学 歯学部附属病院 歯科衛生士室長(~2008年)
2005年:東京医科歯科大学 歯学部附属病院 歯科医療情報センター長(~2007年)
2007年:東京医科歯科大学 歯学部附属病院 口腔ケア外来 外来診療科長(~2010年)
2010年:東京医科歯科大学 副学長(メディア教育担当)(~2014)
東京医科歯科大学 図書館情報メディア機構長(~2017)
東京医科歯科大学 図書館情報メディア機構 メディア教育推進部門長(~2016年)
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 環境社会医歯学系専攻 医療政策学講座 教育メディア開発学分野 教授(~現在)
2011年:東京医科歯科大学 図書館情報メディア機構 図書館長(~2017)
2016年:東京医科歯科大学 統合教育機構 事業推進部門 教授(~現在)
2017年:東京医科歯科大学 統合情報機構 副機構長・図書館部門長(~現在)
東京医科歯科大学 統合教育機構 教学IR部門長(~現在)
東京医科歯科大学 歯学部附属病院 病院長補佐・歯科医療情報センター長(~現在)
2020年:東京医科歯科大学 副理事(情報・IR担当)
東京医科歯科大学 統合情報機構 副機構長・情報セキュリティ部門長(~現在)
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歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。