【教授に聞く】歯科大学で今、重視される“プロフェッショナリズムの教育”とは?

【教授に聞く】歯科大学で今、重視される“プロフェッショナリズムの教育”とは?

歯科医師を目指す学生は、どのような授業を受けているのか東京医科歯科大学・木下淳博教授に話を伺いました。

過去と比べて教育の現場はどう変化したのか、歯科医師にとって何が大切なのかなどを語っていただきます。

また、女性歯科医師を目指す学生は増えているのか、女性歯科医師がより社会で活躍するためには何が必要かなどにも迫ります。

この記事の目次

“知識詰め込み型の教育”から“プロフェッショナリズムの教育”へ

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

歯科大学で歯科医師を目指す学生の教育は、過去から比べて変化しているのでしょうか?

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木下淳博教授

これは、歯科大学に限ったことではないのですが、昔は“知識詰め込み型の教育”が多かったように感じます。

まずはそこから脱却として、モデルコアカリキュラムというものが作成されました

これは、到達目標を明確にして教育していくという方針です。6年間を通して「どういった能力が身についているべきなのか」「何を診断・実施できるようになっているべきなのか」など、できるようになっていなければいけない目標を立てて、そのために必要な学習ができるようにカリキュラムを組んでいるんですね。

歯の教科書 編集部
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医療の知識や技術以外に大切になってくることはあるのでしょうか?

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木下淳博教授

歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士による“チーム医療”の現場が重視されるようになってきました。そのため、コミュニケーション能力が大切になってきます。

そして、“プロフェッショナリズムの教育”が、より重視されるようになってきました。昔の歯科大学教育でも行っていなかったわけではないのですが、授業題目としてはあまり明確にされていなかったといえます…。

つまり、「よい歯科医師とは、どういう態度を取るのか」「どういう価値観を持っているのか」「どういう生き方なのか」など、あるべき姿が問われるんです。

これは、1から教えることができるわけではなく、子供のころから培われた部分が大きいですが…。それでも、「敬意を払う」や「誠実でなければいけない」「倫理規約を守る」「学習していかなければいけない」「嘘をついてはいけない」など、当たり前のことやマインド的な部分を伝えています。

プロとして、どう意識してもらうのかが重要なんです。

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

知識だけでなく、プロフェッショナリズムの教育も行っているんですね。

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木下淳博教授

そのため、教える教員の能力も重要になってきますね。昔からもあったと思いますが、教員に対する研修というのも注目され、変わってきたところです。

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

高齢化社会などの問題もありますが、どのような歯科医療従事者がもとめられているのでしょうか?

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木下淳博教授

私がよく学生に伝えているのは、社会の変化に柔軟に対応できる歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士になってほしいということです。

AI技術の発達とともに、歯科医療の性質も変わってきています。いままでの考え方に凝り固まってしまうと対処できなくなり、ついていけなくなってしまいます。

こうしたことを、ほかから伝えられるのではなく、順応して自分から変わっていくことが大切だと思います。訪問診療や遠隔医療に関しても常にアンテナをはって、歯科医療制度を変えて行動できるような存在になってほしいですね。

女性歯科医師は増加傾向?より活躍できる社会になるには

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

女性歯科医師を目指す学生は増えているのでしょうか? また、日本は世界に比べて女性歯科医師の数は多いのでしょうか?

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木下淳博教授

以前に比べますと、女性歯科医師を目指す学生は顕著に増えています。男子、女子、ほぼ半々の割合ではないでしょうか

ただ世界的に見ると、日本の女性歯科医師の数は、まだ少ないといわれています

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

女性歯科医師がより活躍できる世の中になるには、どのような働き方改革が必要になってくるとお考えでしょうか?

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木下淳博教授

やはりそれは、子育て支援ではないかなと思います。出産、子育て後などに職に戻りやすいよう、社会や家族の形が変化する必要があるのではないでしょうか。

家族の形の変化でいいますと、私の知っている女性歯科医師で、夫が医療従事者ではない方がいます。この夫婦は、女性歯科医師が留学をすると決めた際に、夫が職を辞めて一緒に渡航して留学中の妻を支えていました。

こういうことが、当たり前の社会になると女性歯科医師は、より活躍できるのではないかと思います。

歯の教科書 編集部まとめ

歯科大学では、プロフェッショナルとしての意識の教育までしていると知りました。また、女性歯科医師を目指す学生も、以前と比べて増えているといいます。

しかしながら、女性歯科医師がより活躍できる社会になるには、子育て支援であったり、家族の考え方であったり、変化が必要な部分もまだまだあるようです。

東京医科歯科大学 統合教育機構 事業推進部門
大学院医歯学総合研究科 教育メディア開発学分野
木下淳博教授監修
経歴・プロフィール

1987年:東京医科歯科大学歯学部卒業
1987年:東京医科歯科大学大学院入学(歯科保存学第二講座)
1991年:東京医科歯科大学大学院修了
1991年:東京医科歯科大学歯学部附属病院医員(第二保存科)
1992年:東京医科歯科大学歯学部附属病院助手(歯科保存学第二講座、第二保存科)
1994年:東京医科歯科大学歯学部助手(歯科保存学第二講座)
1998年:Visiting Instructor, Harvard School of Dental Medicine, Boston, MA (3月~9月)
2000年:東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 生体支持組織学系専攻 生体硬組織再生学講座 歯周病学分野 助手
2004年:東京医科歯科大学 歯学部 口腔保健学科 口腔健康推進統合学講座 口腔疾患予防学分野 教授(~2010年)
東京医科歯科大学 歯学部附属病院 歯科衛生士室長(~2008年)
2005年:東京医科歯科大学 歯学部附属病院 歯科医療情報センター長(~2007年)
2007年:東京医科歯科大学 歯学部附属病院 口腔ケア外来 外来診療科長(~2010年)
2010年:東京医科歯科大学 副学長(メディア教育担当)(~2014)
東京医科歯科大学 図書館情報メディア機構長(~2017)
東京医科歯科大学 図書館情報メディア機構 メディア教育推進部門長(~2016年)
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 環境社会医歯学系専攻 医療政策学講座 教育メディア開発学分野 教授(~現在)
2011年:東京医科歯科大学 図書館情報メディア機構 図書館長(~2017)
2016年:東京医科歯科大学 統合教育機構 事業推進部門 教授(~現在)
2017年:東京医科歯科大学 統合情報機構 副機構長・図書館部門長(~現在)
東京医科歯科大学 統合教育機構 教学IR部門長(~現在)
東京医科歯科大学 歯学部附属病院 病院長補佐・歯科医療情報センター長(~現在)
2020年:東京医科歯科大学 副理事(情報・IR担当)
東京医科歯科大学 統合情報機構 副機構長・情報セキュリティ部門長(~現在)

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執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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