【教授に聞く】1日で終わる詰め物治療!コンポジットレジンで変化した治療のやり方

コンポジットレジンを使用した治療のステップを、東京医科歯科大学・田上順次教授に解説していただきます。

治療回数の目安や、入れたコンポジットレジンはどのくらい持つのかなど、詳しく教えていただきます。

また、歯の見た目をきれいにできるコンポジットレジン治療についても紹介します。

※前回の記事「歯医者さんの治療で使われるコンポジットレジンとは?成分や用途を解説

この記事の目次

コンポジットレジン治療の4ステップ

歯の教科書 編集部

コンポジットレジン治療はどのように進められるのでしょうか? 目安となる期間を教えてください。

田上順次教授

治療を行う側からすると、技術を身につけさえすればさまざまな状況で活用できる治療なんです。

まず、初診でいらした患者さんの口内をはじめ、全身的なチェックを行います。

次に、虫歯があり治療を行うことが可能であれば、悪い部分を削って、コンポジットレジンを詰める準備をします。

その間に、歯科用の接着剤の準備をして、患部に接着剤を付けます。

そこに粘土状(または ペースト状)のコンポジットレジンを詰めて、形をつくり、光を当ててかためる。

詰める穴の大きさによっては、詰めて、かためてという作業を2から3回行いますが、時間はそれほどかからず、1回の治療で終えることができます。

歯の教科書 編集部

コンポジットレジンで治療ができるようになる以前はどうだったんですか?

田上順次教授

昔は、削った部分の型を取って、噛み合わせも記録して、削ってできた穴を仮の素材でふたをし、患者さんに次の予約を取ってもらっていました。

その期間に、技工所にお願いをして詰め物をつくってもらう。そして、次の来院の際に仮の詰め物を取って、完成した詰め物を調整して、くっつけるという手順でした。

コンポジットレジンで治療ができるようになって、患者さんも我々もかなり楽になりましたね。

歯の教科書 編集部

コンポジットレジンで治療を受けられないという方もいるのでしょうか?

田上順次教授

ごくまれに、材料に対するアレルギーが強い方がいらっしゃって受けられないというケースもありますが、これは非常にまれです。

このようなことは、ほかの治療についても同じことがいえますね。コンポジットレジンで治療を受けられないという方は、ほとんどいらっしゃらないと思います。

コンポジットレジンで、歯の見た目をきれいに

歯の教科書 編集部

すきっ歯であるなど、歯並びの問題でコンポジットレジン治療が受けられないということはないのでしょうか?

田上順次教授

すきっ歯こそ、コンポジットレジンの適応する分野ですね。形に違和感がなければコンポジットレジンを削らずに、歯を盛り足して隙間を埋めることができるんです。

このように、コンポジットレジンは歯の足りないところ、欠けたところ、場合によっては1本ないところなどを補うことができるんですよ。さらに、接着させることができるので、歯をほとんど削る必要がないんですね。

写真提供:田上順次教授(岸川隆蔵博士「MIデンタルクリニック三宿池尻」提供)

歯の教科書 編集部

見た目をきれいな歯にするために、コンポジットレジンが使用されることもあるんですね。

田上順次教授

あります。ただし、そうした治療は使う道具も特殊になりますので、一般的には自由診療になることが多いですね。

コンポジットレジンの寿命は?

歯の教科書 編集部

1度入れたコンポジットレジンは、どのくらい持つものなのでしょうか?

田上順次教授

1980年代の初めころに、奥歯に詰めたコンポジットレジンが今でも機能している例がたくさんありますよ。

もちろん、40年間少しも変化なしに維持されているかといいますと、それは合成樹脂ですので少しは変化している部分もあります。

最近のコンポジットレジンになりますともっと安定性が高いので、長く使用していても変化は少ないのです。では変化したからいけないのかというと患者さんにとって困った・不愉快ということは何も起こっていないので、取り換える必要はないんですね。表面に汚れが付くことがまれにありますが、これは歯も同じで、半年に1度くらい歯科医院で磨いてもらうと、長期間きれいな状態を維持できます。

天然の歯でも時間の経過とともに、色や形は変化はしていますからね。さらに生えてきたときは、まだやわらかくて、酸にも弱くて、形は凸凹している。

それが使っているうちにすり減っていっていくんですね。前歯で見てみると、子供のころはウサギのようにモコモコとした歯が、平になってきて大人っぽい雰囲気になってくるんです。

こうした点を考慮しても、体に合わせて容易に取り換えることができるコンポジットレジンという材料は、利点が多いと思いますね。

歯の教科書 編集部まとめ

コンポジットレジンを使用しての治療は、早ければ1回、1日の治療で完了してしまうということが分かりました。

また、自由診療となってしまいますが、すきっ歯を埋めるなど、見た目をきれいにする治療に用いることもできるようです。

さらに、1980年代に詰められたものが今でも機能している例があるなど、驚きです。

変化はしているとのことですが、定期的な手入れで長期間きれいに保て、必要に応じて容易に交換することも可能なため、治療しやすい素材であることが判明しました。

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
う蝕制御学分野
田上順次教授監修
経歴・プロフィール

1980年 東京医科歯科大学歯学部卒業
1984年 東京医科歯科大学大学院歯学研究科博士課程修了(歯学博士)
1984年 東京医科歯科大学歯科保存学第一講座助手(1994年まで)
1987年 米国ジョージア医科大学 Adjunct Assistant Professor(1988年まで)
1994年 奥羽大学歯学部歯科保存学第一講座教授(1995年まで)
1995年 東京医科歯科大学歯学部歯科保存学第一講座教授(2021年まで)
この間、同大学にて、歯学部附属歯科技工士学校長、歯学部附属病院歯科器材・薬品開発センター長、歯学部長、大学院医歯学総合研究科研究科長、理事・副学長 等を歴任
2021年 東京医科歯科大学名誉教授
現在 朝日大学客員教授、奥羽大学客員教授、昭和大学客員教授、医療法人徳真会 先端歯科センター長

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執筆者:歯の教科書 編集部

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