【教授に聞く】歯周病とは何なのか?「口臭との関係」「インプラントでもなるのか」など解説

昭和大学・歯学部・歯周病学講座・山本松男教授にインタビューを行い、歯周病とは何なのかについて迫りたいと思います。

歯周病という言葉をよく耳にすることはあるが「なぜ発症してしまうのか」「歯槽膿漏とは違うのか」「放置しておくとどうなってしまうのか」など、詳しく解説していただきました。

今更聞けない歯周病のメカニズムを多角的に見つめます。

この記事の目次

山本松男教授に聞く!歯周病とは何なのか

Q1.歯周病とはどのような病気ですか?

「歯周病」とは、二つの病気を指す言葉なんです。一つは歯茎だけが腫れている「歯肉炎」。専門的にいうと歯茎の表面にあるピンク色の歯肉が腫れている状態のことで、触ると出血したり、痛みがあったりということがあります。

二つ目は、それを放置して症状が進んでしまい、歯を支えている顎の骨などが炎症によって破壊されてしまう「歯周炎」。歯の周りにまで炎症が進んでしまった状態です。歯肉炎と歯周炎を合わせて歯周病と呼んでいます。

昔は、歯周病をひどく放置している場合があり、歯と歯茎の周りから膿が流れ出るということもあったので、そのひどい症状から取って「歯槽膿漏」と呼ばれたこともありました。

今でも歯槽膿漏という言葉が使われていることを目にしますが、医療の現場では使われていません。

最近では歯周病、歯肉炎、歯周炎、と切り分けて紹介するようになっています。

Q2.歯周病になるメカニズムを教えてください

原因というのは、大きくは歯の磨き残しですね。歯の汚れは食べ物のかすと菌のかたまりです。それらが歯の表面に付き、虫歯菌が酸をつくり出して、歯が溶けてしまうと虫歯になるんです。

ですが歯周病の場合は歯の生え際、つまり歯と歯茎の間の汚れをきれいにブラシで払い除かないと炎症が起こってしまい、歯茎が腫れる。または、歯を支えている歯槽骨が溶けていく歯周炎になるということが分かっています。

Q3.歯周病を放置しておくとどうなってしまうのでしょうか?

歯周病は1週間単位で目に見えて進行していくということがなく、知らないうちに少しずつ歯を支える歯槽骨を溶かしていきます。その間には歯茎が腫れて、すごく熱感があったり、痛かったりするが、しばらくするとそれが治まる。

そういった緩急を繰り返しながら進行し、歯が動き始めるようになったときにはかなり進んでいるということがありますね。

Q4.歯周病が悪化すると口臭はひどくなりますか?

 
基本的にはひどくなります。歯周病には歯肉炎と、それが進行した歯周炎がありますが、どちらも菌がすごくはびこっている状態なんですね。

歯と歯茎の間の歯周ポケットは、空気がなかなか届かない環境です。そこに住んでいるばい菌の一種、空気を嫌う嫌気性菌(けんきせいきん)は、体の中のタンパク質を分解してしまうという特徴を持っているんですよ。

タンパク質を分解してしまうときに出てくる臭いが、いわゆる“卵が腐ったような臭い”に似ているといわれています。硫黄の成分がタンパク質の中に多く含まれているので、すごく臭いが出てしまうということがあるんですよ。

ですから、歯周炎を放置してしまい口臭の悩みを抱えている方も多くいますね。また、本人は臭いを感じにくくなるので、「そんなにひどいかな?」と思っている方もいらっしゃるのですが、周りの方は不快な臭いを感じている場合があります。

Q5.インプラントを入れた歯(歯茎)も歯周病になりますか?

なります。インプラントはチタンを中心とした身体と親和性の高い材料をねじ式で顎の骨に入れるのですが、周囲には歯茎の部分がありますよね。

歯周病は歯と歯茎の境目にいるばい菌によって起こる病気ですから、インプラントの場合にも貫通部分があるため同じような症状が起こります。また、インプラントの周りで起きる病気なので「インプラント周囲疾患」と名前を付けて区別をしています。

しかし基本的なメカニズムは似ていて、悪さをしている菌もご自身の口の中の歯周病からうつってくるという類似性があることが研究成果で分かってきています。

Q6.歯周病を発症しやすい人、そうでない人はいますか?

歯周病の原因は、歯と歯茎の境目にばい菌が長い間付いて自身の免疫力が負けてしまうということですが、免疫力には個人差があります。さまざまな理由は考えられますが、免疫力が落ちているときに歯周病は発症したり、進行したりしやすいといわれています。

例えば、糖尿病を患っている方は、皮膚が傷つきやすく、治りにくいなどということがありますが、歯茎も同じように治りにくくなっているんですね。そのため、糖尿病などの病気をお持ちの方は歯周病や、インプラント周囲疾患が進みやすくなっているということが分かっています。

また、もともとの体質で悪くなりやすい方、そうでない方もある程度の経験から分かってはきています。人口の10%前後の方は、原因はさまざまですが何らかの遺伝子に弱いところがある場合があるようです。そして、治療をせずに放置してしまっているという方ですと、少し歯周病が進みやすい傾向にあるとはいわれています。

まとめ

単に歯周病といっても、歯肉炎、歯周炎の両方を指している言葉だということが分かりました。

また、気づかないうちに進行しているだけでなく、口臭にも大きく関わっているようです。

進行は免疫力や体質など個人差があるようなので、日々のケアはもちろん、定期的な歯医者さんでの検診が大切になってきますね。

昭和大学 歯学部 歯周病学講座
山本松男教授監修
経歴・プロフィール

平成4年  東京医科歯科大学歯学部卒業
平成8年  東京医科歯科大学大学院修了・博士(歯学・歯周病学)
平成9年  米国アーカンソー州立医科大学内分泌部門・骨粗鬆症センター(ポスドク)
平成12年 鹿児島大学歯学部助手(歯周病学)
平成14年 鹿児島大学生命科学資源開発研究センター助教授
平成17年 昭和大学歯学部教授(歯周病学)

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執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。