【教授に聞く】小児歯科のトレンドの変化!母子分離から保護者同伴へ

日本大学・歯学部・小児歯科学講座・白川哲夫教授に小児歯科の治療方法の変化について伺いました。

子供のころ、押さえつけられて、無理に治療を進められる、痛いといったイメージのあった歯医者さんですが、現在の治療模様は大きく違うようです。

小児歯科はどのように変化したのか、親御さんがどのように変わったのかなどを詳しく解説していただきます。

※前回の記事「10回以上は通院?子供の虫歯治療の流れと期間

この記事の目次

トレーニングを2、3回!子供の協力度を向上

Q1.小児歯科の治療はどのように変化しましたか?

昔は「押さえてでもいいから治してください」という希望が多くあり、治療を進めることを優先していた時期がありました。

今では体の動きを制限したりするネットなどは、なるべく使わないようにしましょうというのがトレンドになっています。

では、どのようにするのかといいますと「嫌がらないで歯のチェックを受けられる」「治療器具を怖がらない」など、協力度が向上してから治療に入るという考え方があります。

ですが、患者さんによっては10回通っても慣れない子もいますから、少し悩ましい部分もあります。

我々のところでは、協力度が低い場合はトレーニングを2、3回は行います。初回から治療に入ることはありませんね。その中で、どういった方法がいいのか考えながら本格的な治療に移ります。

車や、そのほか交通機関を使って、時間をかけて来ていただいているので、練習しても慣れない場合、治療を先送りして「次はがんばろうね」を10回も繰り返すのは申し訳ないなという気持ちがあります。

“母子分離”という考えから一変!保護者同伴の治療

Q2.大きなトレンドの変化を教えてください

私が学生だった40年近く前には「母子分離」という小児歯科の考え方があったんですね。

3歳を過ぎた健康なお子さんが来院した場合は、「この後は歯科医師、医療スタッフにお任せください。お母さんはどうぞドアの向こうでお待ちください」と引き離してしまいます。

そして、子供と歯科医師が直接話をして、仲良くなってから治療を始めるというのが、割とベーシックでした。

最近では、「外で待っています」というお母さんはほとんどいないですね。また、お父さんが来た場合も同じで、4歳、5歳、あるいはもう少し年齢が上がっても診療台のわきに保護者の方がいるというのが普通になりました。

保護者と歯科医師、スタッフで一つのユニット!

Q3.そのような過保護な状態はよくないことでしょうか?

過保護といえば、言えなくはないと思いますが、将来的にそういった治療の進め方がマイナスの影響をおよぼさないのであれば、問題ないのではないでしょうか。

我々としてはご希望があれば受け入れて治療の場に同席してもらい、お子さん、お母さん(保護者)、歯科医師とスタッフで一つのユニットとして治療を進めていければと思っています。

まとめ

過去、治療に早く取りかかることを優先していた理由としては、当時の親御さんの希望も含まれていたようです。

現在は子供にトレーニングを行って、まず歯医者さんに慣れてもらうという考え方が基本になっていますが、慣れについて個人差が大きいことが悩みどころになっているようです。

子供と一緒に診療室に入る親御さんが増えている昨今、歯医者さんと保護者が近い位置で協力しながら、治療を進めることが大切になっているのかもしれません。

※次の記事「1歳の子供の歯が“ぐらぐら”!?全身に影響する“骨の異常”の可能性

日本大学 歯学部 小児歯科学講座
白川哲夫教授監修
経歴・プロフィール

日本大学 歯学部 小児歯科学講座 教授
【略歴】
1986年~1989年:北海道大学歯学部附属病院 助手
1989年~2002年:北海道大学歯学部附属病院 講師
2002年~2003年:北海道大学歯学部附属病院 高次口腔医療センター 助教授
2003年~2006年:北海道大学病院 高次口腔医療センター 助教授

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執筆者:歯の教科書 編集部

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