【教授に聞く】10回以上は通院?子供の虫歯治療の流れと期間

日本大学・歯学部・小児歯科学講座・白川哲夫教授に、子供の虫歯の治療についてインタビュー。

「のちに永久歯に生え変わる乳歯の場合は、治療しなくてもいいのか」「治療はどのような流れで進むのか」など、子供が虫歯になってしまったときの疑問に回答していただきました。

また、平均的な通院頻度など、細かい質問も投げかけています。

※前回の記事「32本の永久歯は過去?28本より少ない歯の子供たち

この記事の目次

乳歯の虫歯が影響!歯並びの乱れ

Q1.乳歯は永久歯に生え変わるので、虫歯治療をしなくても大丈夫ですか?

ほとんどの場合、放置することはよろしくありません。

例外的に、“ぐらぐら”している歯がありますね。虫歯ではあるけれども、本人もぐらぐらしていることを自覚していて、歯が抜けるまでの期間が短いのであれば、治療対象にはならないです。そういった生え変わりの時期を除いては、虫歯を放置することはよくないですね。

歯を早期に失ってしまうと、歯並びへの影響が出てくるからです。虫歯がどんどん進行して抜かざるを得ない状況になると、抜いた後に隙間ができますよね。そうするとその隙間に向かって前後の歯が傾きながら移動していきます。特に後ろの歯が前方に傾くというケースが多いので、全体として歯並びに大きく影響するということになりますね。

それから乳歯が虫歯で溶ける・欠けるというレベルを超えて、歯の中の歯髄(神経や血管がある)に細菌が移行してしまった場合。移行した細菌がやがて根に広がり、さらに根の先端から歯の周りの組織へと細菌感染が広がってしまうことがあります。

すると、もちろん歯茎が腫れたり、痛みがでたりするんですけれども、乳歯の下にある永久歯胚という永久歯になりつつある“永久歯の赤ちゃん”。歯胚にも影響して、永久歯がきれいにつくられないというケースがあるんです。これは乳歯の虫歯を放置するのはよくないという大きな根拠になると思いますね。

どのように治療する!?小児歯科の流れ

Q2.小児歯科での虫歯治療の基本的な流れを教えてください

虫歯の治療は溶けた部分の大きさや範囲によってさまざまですが、まず、親御さん、それから年齢にもよりますが本人に治療の内容を前もって説明します。「こういう治療をこれから進めますけれどもよろしいですか?」と確認をして了解を得ています。

治療は、麻酔注射の痛みをできるかぎり抑えるよう、まず表面麻酔を歯茎に塗ります。表面麻酔が作用して歯茎が麻痺してきたときに針を刺して、麻酔薬を注入します。そうしますと、個人差はありますが、麻酔の効いている30分から1時間の間に治療を行うことができます。

また、我々、小児歯科専門医は麻酔をした後にラバーダムというゴムのシートを使用します。

ラバーダムを治療する歯に被せて、その歯だけが目に入るようにします。治療を行う歯以外の歯、また舌や唇などはシートに隠れた状態になります。

その後、歯を削ったり、詰めたりといった操作を終えたらラバーダムを外し、最終的に噛み合わせのチェックを行って、「今日の治療はおしまい」という流れになりますね。

※ラバーダムを装着して治療している様子。3歳女児に対して左下の乳臼歯の治療(継続中)をこれから開始するところです。

右側の金属性の器具(ラバーの下にあるもの)は「万能開口器」といって、一定の開口度を保つための器具となっており、小児歯科では頻繁に使用しています。(写真提供:白川哲夫教授)

子供が虫歯に!治療の期間・回数は?

Q3.平均してどのくらいの期間・回数通う必要がありますか?

これは個人差が大きいので、日数・回数を“このくらい”とお話しするのは、大変難しいんですけれど…。

例えば保護者の方が、お子さんの口の中を覗いたときに、あちらにもこちらにも穴が空いているのが目に入る場合は、少なくとも10回かそれ以上の治療が必要と思っていいですね。

また、ちょっと覗いたくらいでは分からないのですが、よくチェックした時点で虫歯が確認されたような場合は5回以内で治せることもあります。

1年以上歯科検診あるいは治療を受けたことがなくて,気がつくと「はっきり穴になっている」「誰が見ても虫歯」という場合には、いたるところに虫歯ができていると推測されますので、5回以内で治療が終わるということはまずないと思います。

ですので、家庭で虫歯を発見する前に、定期的に歯科医院でチェックを受けることを推奨します。

まとめ

「すぐに抜けそう」という例外を除いて、乳歯だからといって虫歯治療を放置することは悪影響を生んでしまうことが分かりました。

歯並びにも関わってくるということなので、子供のころからしっかりとした治療を受けることが大切です。

さらに、治療を早めに終えるためには、定期的に歯科検診に通い、お口のチェックを行うことが重要であることも確認できました。

※次の記事「小児歯科のトレンドの変化!母子分離から保護者同伴へ

日本大学 歯学部 小児歯科学講座
白川哲夫教授監修
経歴・プロフィール

日本大学 歯学部 小児歯科学講座 教授
【略歴】
1986年~1989年:北海道大学歯学部附属病院 助手
1989年~2002年:北海道大学歯学部附属病院 講師
2002年~2003年:北海道大学歯学部附属病院 高次口腔医療センター 助教授
2003年~2006年:北海道大学病院 高次口腔医療センター 助教授

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執筆者:歯の教科書 編集部

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