日本大学・歯学部・小児歯科学講座・白川哲夫教授に“子供の虫歯の特徴”について聞きました。
子供の虫歯は見た目が黒くならずに、目立ちにくい色、白い色であることが多いのはなぜなのかについて解説してもらいます。
また、大人でも白い虫歯になり得るのか、子供の歯はなぜ上の歯の方が虫歯になりやすいのかなどを説明してもらいます。
※前回の記事「0~18歳まで通う?小児歯科に通う前に知りたいこと」
子供はなぜ白い虫歯に!?大人の虫歯との違い
Q1.子供の虫歯は黒くならず、白っぽくなるのはなぜですか?
子供の虫歯が、白い色から始まるというのは確かにその通りですね。
しかし、大人の虫歯、永久歯の虫歯も同じ出来方になります。ただ、永久歯は表面のエナメル質が硬いですから、そうやすやすと白くはならないんですね。
ただし、永久歯も生えて間もない、歯茎から顔を出して生えそろうまでの時期には、乳歯と同じような白っぽい虫歯になります。そこから、歯の表面が欠けてきて穴が開いていくという道をたどりますね。
大人の虫歯はなぜ黒い?メカニズムを解明
Q2.子供と大人で虫歯の色が違うメカニズムを詳しく教えてください
永久歯は口の中にとどまっていると表面が徐々に硬くなってきますので、お父さん、お母さん、おじいさん、おばあさんくらいになると、最初は白くなるという虫歯は目にしなくなります。
それは、歯が溶けたところにいろいろな成分、色素が沈着して、だんだん黒っぽくなるからです。
溶けたり、硬くなったりを繰り返しているうちに色はだんだん濃くなっていきますので、子供たちに見られるような白っぽい色という虫歯は、目にすることはなくなってくるかと思いますね。
唾液が影響?上と下の歯で違う虫歯の進行
Q3.子供の歯は、なぜ上の方が虫歯になりやすいのでしょうか?
それは上の前歯、下の前歯の比較でしょうね。奥歯は上も下も同じくらい虫歯になりやすいかと。
重力の影響で唾液が下の前歯周辺を満たしています。そのため、汚れが洗い流されやすく、歯の表面が少し酸性になってきても唾液の緩衝作用でpHがあるレベル以下にならないようにしてくれます。そうすると歯の表面が溶けにくくなりますよね。
これに対して上の歯は唾液の量が少ないので、いったん汚れが付いてしまうとなかなか流れてくれない。それから緩衝作用も働かないので、酸によるpHがどんどん下がってきて虫歯が進行してしまうことになります。
まとめ
子供の虫歯が白いのではなく、大人の虫歯も同じメカニズムで進行しているということが分かりました。
大人の場合は、溶けた歯に色素が沈着することで黒っぽくなりやすいようですが、色素沈着があまり起こりづらい子供の歯では、白い色のままというケースが多いようです。
メカニズムは理解できましたが、子供の白い虫歯が発見しづらいことは変わりありません。日頃からのケア、チェックが大切になってきますね。
※次の記事「32本の永久歯は過去?28本より少ない歯の子供たち」
日本大学 歯学部 小児歯科学講座 教授
【略歴】
1986年~1989年:北海道大学歯学部附属病院 助手
1989年~2002年:北海道大学歯学部附属病院 講師
2002年~2003年:北海道大学歯学部附属病院 高次口腔医療センター 助教授
2003年~2006年:北海道大学病院 高次口腔医療センター 助教授
執筆者:
歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。