矯正費用とお支払いプランを明確にするための4つのポイント

健康保険が適用されない「自由診療」が基本的となる歯列の矯正で、一つの大きな気がかりとなるのは、やはりトータルでどのくらい費用がかかるのか?ということでしょう。

そこで、治療費を把握する上でポイントとなるのは、矯正治療に共通するプロセスにかかる費用を知っておくことです。それをベースにして、各治療法別にトータルの費用が決まってきます。

できるだけ安く抑えたいという方は、保険が適用される規定もあるので、それに該当すれば、治療費を大きく抑えることもできますし、大人の矯正よりも、子供の矯正の方が比較的安く抑えられるということも、治療のタイミングを見極める上で参考になるはずです。

また、矯正治療に対してさまざまなローンがあるので、お支払い計画を立てる上で、大いに役立つことでしょう。

この記事の目次

1.矯正にかかる基本的な費用を知っておこう

まず、矯正治療は基本的に保険が適用されません。これは、自費診療や自由診療と呼ばれ、各歯科医院が決めた治療費に従い、全額が自己負担となります。

各歯科医院によって当然治療のプロセスは異なりますが、それぞれの過程で費用がかかります。治療の基本的なプロセスは、おおよそ下記のようなものになります。

1-1 治療費の基本的な内訳

【治療前】

・相談料(無料から5000円程度)

歯並びの状況やお悩みを訊き、治療法や治療計画についてガイダンスする際の費用です。

・検査料(1万円から5万円程度)

治療法や治療計画をより明確にするために、歯や顔の骨格のレントゲン撮影、CT撮影、噛み合わせの検査などを行います。

・診断料(1万円から5万円程度)

検査結果をベースに、具体的な治療方法やトータルの概算費用、治療期間など、治療プランなどを説明します。

【治療中】

・各治療装置の基本料(各治療法よる)

ベーシックな上下顎の表側ブラケット矯正では80万円程度ですが、各治療法によって、費用が大きく異なるところとなります。

・調整料(1000円から1万円程度)

定期的な矯正装置の微調整や、治療効果や経過のチェックなどを行います。費用は、治療装置の基本料に含まれる場合もあります。

【治療後】

・保定装置料(1万円から5万円程度)

矯正装置を外した後に、リテーナー(歯列が元に戻らないための保定装置)を使用する場合の装置料です。

・メンテナンス料(3000円から1万円程度)

矯正治療が終了後、年数回の割合で、歯並びのチェックなどを行います。

1-2 矯正治療費トータルの概算

矯正費用は、「治療プロセスとして共通して必要な基本費用+各治療装置の費用」で概算できます。従って、上記で例として挙げたプロセスでは、治療前に3万円から10万円程度がかかります。

問題は治療中、治療後の調整料やメンテナンス料。その回数分が加算されることになるので、トータルの治療費がどのくらいかかるか明確に把握することができません。

一つの目安として、ベーシックな上下顎の表側ブラケット矯正の場合は、90万円から100万円くらいになると考え、余裕を持ったお支払いプランを立てましょう。

調整料など別払いが基本

治療装置の基本料と、調整料やメンテナンス料は個別の料金設定となっている場合が多く、治療費のトータルを見積もり、お支払いなどの計画を立てる際には注意が必要です。

もちろん、治療期間が長くなるほど、その間の調整料が加算されてくることになります。治療期間やおおよその総額について、治療前に歯科医師の方と、よくご相談されることをおすすめします。

トータルの支払い制もある

治療前、治療中、治療後に関わる全ての費用を、トータルで最初に提示してくれる歯科医院もあります。この場合、あらかじめ総費用を決めた上で治療に入るので、調整の回数などによって、後々トータルの費用が変わるといったことはありません。お支払いのプランも立てやすいといえます。

※費用の金額については、Webサイトの情報からランダムに抽出した金額を参考にしています

2.保険適用の場合の費用や医療費控除について

冒頭でお伝えしたとおり、矯正治療は基本的に、全額自己負担の自由診療ですが、保険が適用されるケースもあります。また、治療目的によっては、確定申告で医療費控除の対象とすることができます。

2-1 健康保険が適用される場合の費用

保険が適用されるケース

保険が適用されるケースは、特定の先天性疾患がある場合と、「顎変形症」と診断された場合となります。顎変形症には、認定された医療機関による診断が必要で、外科手術を含む、指定されたプロセスで治療を行うことが必要となります。

治療費はトータルで40万円弱

「額変形症」と診断され、治療する場合には、矯正治療費と外科手術費用がかかりますが、どちらも保険が適用可能となります。矯正治療費は30万円程度で、外科手術費用は入院費用も含めて、およそ20万円程度となります。

単純計算では、総費用は50万円程度ですが、外科手術および入院費で、1ヶ月の医療費自己負担分が7万2300円を越えた分は、高額療養費の対象となり、保険組合に返還の申請をすることができます。

従って、矯正治療費およそ30万円程度に7万2300円を加えた合計が、自己負担のトータルとなります。(ただし、基礎控除後の所得が670万円を超える方は、13万9800円を超える分の返還請求となります)

2-2 医療費控除の適用について

1年間に10万円以上の医療費がかかった場合には、確定申告をすることで、所得税の控除を受けることができます。ただし、美容目的のみで矯正治療をした場合には、医療費控除の対象とはなりません。

従って、歯科医院から美容目的ではないことを、証明するような診断書が必要となるケースがあります。下記のようなケースでは、医療費控除の適用が可能です。

・子供の歯列矯正で、発育段階での治療が必要である場合

・咀嚼や噛み合わせなどに支障がある場合

・顎の状態から歯列矯正が望ましいと判断された場合

上記に該当する場合は、医療費控除額に対して、自分の所得に対する税率を掛けた額を、所得税の還付金額として返還請求することができます。

3.お支払いプランに役立つ主な4つのローン

自由診療で高額になる矯正費用ですが、各種のローンを利用することで、お支払いのプランを立てやすくなります。主なローンは4つあります。もちろん、治療費の総額以外に分割手数料が加算されますが、比較的分割手数料が低いと思われる順にご紹介しましょう。

・歯科医院で契約するローン

歯科医院によっては、信販会社との契約ではなく、歯科医院と直接ローンの契約ができるところもあります。当然、医院によって、分割回数や手数料が異なりますが、無審査や手数料なしで分割できるところもあります。

・銀行などの多目的ローン

手数料が低め(5%程度~)であることが魅力ですが、歯科医院の発行する見積書を提示したりなど、審査には時間がかかり、契約には手間がかかります。

・デンタルローン

歯科医院で個別に提携している信販会社によるローンです。特に、デンタルローンは歯科治療費のみを利用目的に限定したもので、歯科医院が契約の窓口となります。分割回数が多く、手数料率も低めになっています。

・クレジットカードローン

自分が持っているクレジットカードに対応している歯科医院であれば、そのクレジットカードの利用限度額や分割回数の規定に従って、分割払いが可能です。手数料は実質年率18%程度と高めになります。

4 .大人と子供の矯正費用の違い

歯が動きやすい子供の矯正は、早期であるほど期間も短くかつ、治療費も比較的安くなります。矯正治療を年齢別に分けると、主に下記のような3つの時期があり、治療費もそれぞれ変わってきます。

4-1 3つの時期による費用の違い

・早期の矯正 15万円から35万円程度

3歳から9歳くらいまでの時期に行う矯正です。乳歯の時期から、乳歯と永久歯が混合している時期までで、装置を付けなくても矯正できるケースもあり、永久歯がきれいに生え揃うための治療が主体となります。

・交換期の矯正 35万円から90万円程度

永久歯へと歯が生え変わる時期も、矯正がしやすい期間で、年齢の目安としては9歳から15歳くらいまでとなります。思い通りの仕上がりにも期待でき、成人期よりも安く抑えられるケースが多いものです。

・成人期 「1章」でご紹介した目安を参照のこと

歯が生え変わった時期を過ぎてしまうと、大人と同様の矯正装置が必要となり、その結果、費用も大人と同様になるケースが多くなります。年齢的には15歳以上が目安となります。

4-2 お子様の矯正は早めのご相談を

前述したとおり、子供の矯正は早期であるほど、費用が抑えられ、良好な治療結果につながるケースが多くなります。矯正するかどうか決めかねているうちに、どんどん月日が経てば、より良い矯正のチャンスを逸してしまう可能性もあります。思い立ったらまずは歯科医師に相談してみるのが得策です。

5.まとめ

矯正費用は、だいたい想定していたような費用感でしたでしょうか? あるいは、想像以上に高額という印象でしたでしょうか? それぞれの受け止め方は違うはずですが、決して安くはない出費といえます。

しかし、長期的な返済プランを立てられるさまざまなローンがあり、健康保険が適用されるケースや医療費控除が受けられるケースもあって、より具体的な費用の目安が把握できたと思います。

経歴

平成13年 国立 長崎大学歯学部 卒業・同大歯科補綴学第一講座 入局
平成16年 歯学博士号取得
平成17年 野田ファミリー歯科 入局
平成23年 あきる歯科医院 開院/院長就任

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。