歯槽膿漏を防いで、健やかな歯茎を保つ!歯磨き粉の選び方

歯槽膿漏というのは、もともと「重度の歯周病」を指す言葉でした。現在、医学的に正式な用語は「歯周病」のほうですが、世間一般では「歯槽膿漏」という言葉を使う人もたくさんいます。なので、あまり細かな違いを気にしなくても構いません。「歯槽膿漏=歯周病」と認識していて、少なくとも大きな問題はないはずです。

もちろん、何より大切なのは「歯槽膿漏の予兆があれば、すぐ歯医者さんを受診すること」です。病気である以上、根本治療を図るためには、医療機関を受診するしかありません。しかし、「セルフケアによって、歯槽膿漏を防ぎたい」というニーズがあるのも事実でしょう。

こちらの記事では「歯槽膿漏になる確率を下げる」という観点で、「歯磨き粉の成分」を紹介することにしました。歯槽膿漏(歯周病)は、歯を失う原因の第1位。少なくとも「歯槽膿漏のリスクを下げよう」と意識づけをすることには、大きな意味があるはずです。

この記事の目次

1.殺菌成分の含まれた歯磨き粉で、歯槽膿漏リスクを下げる!

歯槽膿漏の原因は、歯周ポケット内部の歯周病菌です。それならば、歯周病菌を殺菌する成分が入った歯磨き粉を使うことで、歯周病リスクを下げることができるかもしれません。実際、「歯周病菌を殺菌する」という発想の歯磨き粉が販売されています。

「歯周病菌を殺菌するための成分」としては、たとえば、以下のような成分が知られています。

1-1 塩化セチルピリジニウム(CPC)

さまざまな種類の真正細菌・真菌に対して、抗菌作用を持っています。口内炎・口腔内外傷の感染予防にも使われる成分です。口腔内を浮遊している細菌・真菌に対して、強い殺菌力を有します。歯磨き粉のほか、洗口液(デンタルリンス)などに配合されることがある成分です。

1-2 イソプロピルメチルフェノール(IPMP)

虫歯菌・歯周病菌は、「バイオフィルム」と呼ばれる膜状の構造を作り出します。「粘性のある分泌物質」をまとって、折り重なるように生息しているのです。そのため、洗口液などに含まれる殺菌成分は、「分泌物質の膜」に阻まれ、なかなか内部まで浸透しません。

そんな中、IPMPはある程度、バイオフィルムの内部に浸透し、より効率的に殺菌作用を発揮するのではないか…と期待されています。家庭用品メーカー大手―ライオンの実験により、「バイオフィルムを付着させたフィルターを透過した」という結果が出ています。以上から、(あくまで実験室レベルのデータなので、口腔内で同様の働きをする確証はありませんが)IPMPはバイオフィルムに対して、一定の浸透力が期待される殺菌成分です。

参照URL:http://www.lion.co.jp/ja/company/rd/topics/180

1-3 ヒノキチオール

ヒノキ科の樹木に含まれる成分です。1936年にタイワンヒノキから発見された成分で、日本のヒノキにはわずかに含まれるだけです。香料のほか、抗菌剤にも用いられます。幅広い菌に対して抗菌作用を有していながら、毒性の低い天然成分です。

殺菌成分を配合した歯磨き粉を選ぶ上での注意点

ここまで、歯磨き粉の殺菌成分を紹介してきましたが、あくまでも「歯磨きを補助する成分」と認識してください。先述したとおり、虫歯菌・歯周病菌は「粘性のある分泌物質」をまとってバイオフィルムを構成しています。

分泌物質がバリアのように働くので、たとえば、洗口液の殺菌成分などはほとんど浸透しません。殺菌作用が及ぶのは、表面付近にいる細菌だけです。細菌の大半は、生き残ってしまうのです。

結局のところ、口腔バイオフィルムを取り除くためには、歯ブラシを用いた物理的清掃がもっとも重要です。殺菌成分を跳ね返すバイオフィルムも、歯ブラシで物理的に擦れば、剥がれ落ちるからです。あくまでも「歯磨きでバイオフィルムを除去する」ことが歯槽膿漏を防ぐための最重要ポイントであり、殺菌成分は「口腔内に浮遊している細菌を効率良く殺菌する成分」に過ぎません。

2.抗炎症成分の含まれた歯磨き粉で、歯槽膿漏の症状を抑える!

成人の約8割は軽度の歯周病を起こしています。ほとんどの人は、少なくとも歯槽膿漏になりかかった状態であり、歯茎には軽い炎症が出ているのです。もし、歯茎に違和感・不快感があるなら、炎症のせいかもしれません。そこで、歯茎の炎症を緩和するために、抗炎症成分を配合した歯磨き粉が市販されています。

軽度歯周病の(歯槽膿漏になりかかっている)歯茎の炎症を緩和するための成分としては、以下のような成分が知られています。

2-1 グリチルリチン

漢方の原料になる植物―甘草の有効成分が、グリチルリチンです。消化性潰瘍の治療薬、去痰薬として用いられるほか、抗炎症作用も知られています。甘味料として食品添加物に用いることもあります。

グリチルリチン誘導体(体内でグリチルリチンに変わる物質)の「グリチルリチン酸ジカリウム」「グリチルリチン酸モノアンモニウム」「β-グリチルレチン」として医薬部外品・化粧品などに配合されることも多いです。

2-2 トラネキサム酸

止血剤・抗炎症剤として、医薬品にも使われる成分です。アフタ性口内炎など、口内炎を消炎する薬としても使われるので、「口腔内の炎症を抑える作用」に関しては、広く認められています。ラットに経口摂取させる実験では、「LD50>10g/kg」となっており、これは医薬品成分としては、リスクが低いです。

「LD50値」は「実験動物の半分が死亡する分量」なので、トラネキサム酸は「体重1kgあたり10g相当を経口投与しても、ラットの半数が死亡するには至らなかった」という意味です。ちなみに、食塩(塩化ナトリウム)をラットに経口摂取させると「LD50=3g/kg(体重1lgあたり3g相当を投与した結果、半数が死亡)」です。この事実から、トラネキサム酸のリスクは低いと判断しても、問題はないと考えられます。

参照URL:http://www.jpec.gr.jp/detail=normal&date=safetydata/a/dae24.html

2-3 当帰エキス

当帰は漢方に使われる生薬の1つです。中国の後漢~三国時代に成立した本草書(中国伝統医学の書物)『神農本草経』にも記載されている生薬です。現代においても、血管拡張・抗炎症・鎮痛などの薬理作用を期待して使用する例があります。

厚生労働大臣が定める医薬品の規格基準書―「日本薬局方」の「生薬総則」にも「トウキ」「トウキ末」として記載されていることから、一定の薬理作用については認められていると判断して差し支えないでしょう。

参照URL①:https://www.pmda.go.jp/files/000158407.pdf
参照URL②:http://www.mt-pharma.co.jp/healthcare/herbal_medicine/24.html

抗炎症成分を配合した歯磨き粉を選ぶ上での注意点

抗炎症成分が有しているのは、あくまでも「炎症を緩和する作用」です。残念ながら、歯周病そのものが治るわけではないので、注意してください。風邪で頭痛がするとき、鎮痛剤を飲んで痛みが緩和されても、風邪自体が治ったわけではありません。同様に、炎症が一時的に緩和されても、歯周病・歯槽膿漏が快方に向かうわけではないのです。

根本へのアプローチを望むなら、歯科医院を受診して歯周病治療を受けるしかありません。「歯磨き粉で歯槽膿漏か解消するわけではない」という部分を理解し、あくまでも「現在の症状・悩みを緩和する」という目的で使用してください。

3.まとめ

殺菌成分を配合した歯磨き粉を使用することで、「歯槽膿漏になる確率を下げる」ことは期待しても良いでしょう。また、現代人のほとんどは軽度歯周病に罹患していますから、「歯茎の腫れ・炎症を一時的に鎮める作用」も口腔内の違和感を緩和するために役立つと思います。

ただ、歯槽膿漏を治療するためには、歯科医院での処置が不可欠です。歯茎に発赤・腫れ・違和感があるなら、早めに歯科医院を受診するようにしてください。末永く歯を残すためには、早め早めに歯科医院を受診することが第一です。

先生からのコメント

歯磨き粉に頼るのは良いですが、清涼感などで全体を磨いてなくても磨けているように思うこともありますし、うがいも程々が良いと思います。せっかくの効果がうがいでなくなってしまいます。rnそれとあまり沢山に歯磨き粉を付けない方がよいですね。味とかの刺激によって唾液が出てきて、うがいしたくなってしまいますので。長く磨けなくなりますので注意して下さい。

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執筆者:歯の教科書 編集部

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