親知らずと発熱の関係とは?歯性感染症の症状・治療法を解説

親知らずと発熱の関係とは?歯性感染症の症状・治療法を解説

親知らずの炎症を放置すると、発熱・喉の痛みなど「風邪に似た症状」をきたすことがあります。ごく珍しいケースではありますが、全身症状が悪化して生命にかかわるほどの重症になる例もあるほどです。

この記事では、親知らずの炎症がもたらす発熱について解説しています。「どのような症状がみられたら要注意なのか  」を含めて掲載していますので、ぜひ、参考にしてください。

この記事の目次

1.なぜ、親知らずの炎症で発熱することがある?

虫歯・歯周病を含めて、口腔内の炎症は「歯・歯周組織が細菌に感染すること」が主な原因です。

当然ながら、感染が拡大すれば、周囲の組織にまで炎症が広がります。喉に広がれば「喉の痛み」が現れ、広範囲に拡大すれば発熱・倦怠感といった「全身症状」が現れます。

親知らずが原因で起こる炎症を「智歯周囲炎」と呼んでいます。智歯周囲炎を招くのは、たいてい「斜めに生えた親知らず」です。

親知らずが斜めに生えることで歯ブラシが届きにくい場所ができると、周囲の衛生状態が低下します。結果、親知らずの周囲が細菌の温床になってしまい、感染・炎症へとつながっていきます。

口腔内の炎症が周囲に拡大した状態を「歯性感染症」と総称しています。親知らず周辺の炎症に起因する発熱・倦怠感は「智歯周囲炎を発端とする歯性感染症」ということになります。

智歯周囲炎がどのように拡大し、発熱のほかにどんな症状がみられるのか、確認していきましょう。

1-1 最初は親知らず周辺の局所的炎症

初期症状は、親知らず周辺の歯茎の炎症です。うまくブラッシングできていなかった場所に歯垢(しこう)が溜まり、細菌感染を起こした歯茎に腫れ・痛みが生じます。

この時点では「歯茎が炎症を起こしている」という程度の自覚症状であることがほとんどです。

親知らずが与える影響のイラスト

1-2 智歯周囲炎が悪化!口腔・喉に炎症が拡大

智歯周囲炎が拡大すると、周囲の組織に炎症が及びます。

口腔内で広がると、口腔底(こうくうてい=舌の下にあたる口の底部分)に水ぶくれができたり、広範囲が赤く腫れたりします。喉の方向に炎症が広がると「唾液を飲みこむときに喉が痛む」など風邪に似た症状が現れます。

このあたりまで拡大すると、発熱がみられることも多いです。

1-3 顎が感染すると、顔が大きく腫れあがることも!

感染が顎に拡大すると「顎骨骨膜炎(がっこつこつまくえん)」を起こすことがあります。顎の骨を覆っている膜が細菌感染を起こした状態です。

外見的にわかるほど頬が腫れ、強い痛みをともないます。心拍に合わせてズキズキと痛む「拍動痛」を訴える人もいます。首のリンパ節が腫れて「押すと痛む」こともあります。

下の親知らずが智歯周囲炎を起こした場合、顎骨骨膜炎を起こしやすい傾向です。

1-4 感染範囲が広がると、蜂窩織炎に!

口腔内・頬粘膜にむくみが出て、広範囲で炎症が見られる場合は「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」を起こしているかもしれません。

これらは強い痛みがあり「口がうまく開かない(開口困難)」「唾液を飲みこむのさえ難しい(嚥下困難)」などの症状をともないます。

ここまで炎症が拡大すると、38℃以上の発熱・頭痛・倦怠感など全身症状が出ることもあります。

1-5 首から下に炎症が及ぶと、命にかかわるリスクも!

さらなる悪化が続くと、扁桃・リンパ節がパンパンに腫れあがり、発熱・倦怠感も強まります。

また、珍しいケースとされていますが、炎症が首から下に及ぶと危険な状態に陥ることもあるようです。

肺に膿が溜まる「膿胸(のうきょう)」、心臓が感染したことによる「急性心筋炎」など、生命にかかわる症状をきたす恐れもあるからです。

2.親知らずに起因する発熱!歯性感染症の治療法とは?

「38℃を超える発熱」など強い全身症状が出ているなら、速やかに医療機関を受診しましょう。

口腔内の細菌感染が全身症状に発展するような場合、免疫力が低下していることが考えられるため、そのまま自然治癒を期待するのはおすすめできません。

この章では、智歯周囲炎による歯性感染症の治療法を紹介します。

2-1 抗菌薬による薬物療法

細菌感染なので、抗菌薬を投与して原因菌を抑える治療がおこなわれます。

智歯周囲炎を原因とする場合、原因菌は「不衛生な親知らず周辺で繁殖した雑菌」です。つまり、複数の細菌に感染していることになります。

そのため、さまざまな菌に対して作用するペニシリン系・セフェム系の抗菌薬を用いるのが基本的な方法です。経口投与・注射の2通りが考えられますが、重症の場合は1日数回の点滴をおこなうこともあるようです。

2-2 膿瘍があれば外科的治療

炎症の刺激が繰り返された結果、歯茎など組織の中に膿が溜まった状態になることがあります。これを「膿瘍(のうよう)」と呼びます。

膿瘍ができている場合、切開して膿を排出することもあります。

2-3 原因となった親知らずの抜歯

智歯周囲炎が発端になったのであれば、根本的な原因は親知らずです。いったん炎症が鎮(しず)まっても、親知らずが残っていれば炎症が再発するリスクがあります。

特に斜めに生えている親知らずは、その後も歯磨きの妨げになり、周囲で雑菌が繁殖する原因になります。そのため、炎症が鎮まるのを待ってから親知らずを抜歯することもあります。

抜歯することで智歯周囲炎の心配もなくなり、今まで不衛生だった箇所もケアが行き届くようになります。

3.まとめ

親知らずの炎症が広がると、歯性感染症に発展し、発熱・喉の痛み・倦怠感など風邪のような症状をきたすことがあります。38℃といった高熱が出るケースもあるため、炎症を拡大させないことが大切です。

歯性感染症の疑いが強い人は、歯科口腔外科の受診がおすすめですが、近くにない場合はかかりつけの歯医者さんを受診しましょう。

先生からのコメント

智歯周囲炎などには、レーザーも有効です。麻酔しないで治療できることが多く、レーザーもいろんな種類があります。レーザーのある歯科医院で相談してください。

医院情報
住所:東京都葛飾区お花茶屋2-5-16
電話:03-3601-7051
執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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