治療した歯が痛い!神経過敏・2次カリエスの原因&対処法

せっかく歯医者さんで歯科治療を受けたのに「治療した歯が痛い」と悩んでいる人はいませんか? 治療直後に痛みが出たり、あるいは治療から長期間が経過して痛みが出たり、人によっていろいろなケースが考えられます。

こちらの記事では、治療した歯が痛い…と悩んでいる人に向けて、「痛みの原因」と「基本的な対処法」を解説することにしました。「痛みの出ない状態」を取り戻すために、どのような対処が必要なのでしょうか?

この記事の目次

1.治療した歯が痛い!治療直後に痛み出したケース

治療を受けた当日・翌日など、治療してから間もなく痛みだす場合があります。「なぜ、治療を受けたのに痛むのだろう…?」と不思議に感じる人も多いようですが、これは別に驚くほどのことではありません。実のところ、歯医者さんに行った直後、治療した歯が痛いというのは、よくあることなのです。

1-1 歯を削った当日、痛み出した…!

歯を削る治療をした後、歯が痛みだすことがあります。「噛むと痛い」「冷たい水がしみる」といった痛み方をすることが多いです。「治療した歯が痛い」と訴える人が多いのは、わりと初期の虫歯(C2:象牙質齲蝕)の段階で治療した人たちです。

ここで少し、虫歯の進行度について補足しておきましょう。虫歯にはいくつかの段階があり、歯医者さんを受診する段階として多いのは「C2:象牙質齲蝕」と「C3:歯髄の仮性露出」です。C2の段階では、痛むとしても「冷たいもの・甘いものがしみる」程度で、何もしていないときは痛みません。まだ、虫歯が神経まで達していないからです。夜も眠れないほどズキズキと痛むのは、C3の段階になります。

要するに、C2の段階で治療を受けた人は「それほど痛くないけれど治療を受けにきた」という人たちです。しかし、治療で歯を削れば、神経に多少の刺激が加わるのは避けられません。結果、神経が過敏になり、痛みを感じやすくなるわけです。

また、C2の虫歯を治療するにあたっては、「コンポジットレジン」と呼ばれる「歯科用プラスチック樹脂の詰め物」を使うことがよくあります。このコンポジットレジンも、神経に刺激を与える要因になります。レジンはペースト状をしており、歯の穴に詰めてから固めます。「光重合」といって、特定の波長の光を当てることで固まる性質を持っているからです。

問題は、「固まるときに収縮して、体積が減る」という特性です。体積が減るとき、レジンが周囲を引っぱる方向に圧力を与えます。この圧力が神経に伝わると、やはり過敏になって痛むことがあるのです。

基本的な対処法→経過観察 or 抜髄

「削った刺激」にしても、「レジンの刺激」にしても、大半は「一時的に神経が過敏になる」というだけです。多くの場合、数日~1週間で痛みは落ち着いてきます。ただ、削る範囲が「神経ギリギリ」まで達していると、治療後の痛みが治まらない場合もあります。そういったケースでは、やむを得ず「抜髄(神経を抜く治療)」をすることになります。

1-2 根の治療(根管治療)の当日、痛み出した…!

虫歯がC3の段階に達していると、抜髄(神経を抜く治療)が必要になります。局所麻酔下で歯髄(神経)を取り除き、いわゆる「根の治療」をおこないます。歯の内部に残っている虫歯を除去して、無菌化する処置です。正式名称では「根管治療」と呼びます。

さて、根管治療の後、神経がなくなったはずの歯が痛むことがあります。患者さんにしてみれば、「もう神経はなくなっているのに、どうして…?」となるところでしょう。しかし、抜髄の直後に痛みが出ることは、決して珍しいことではありません。

根管治療の「根管」は、「歯の内部にある神経・血管の通り道」です。非常に細く、複雑に入り組んでいるので、根管治療のときに内部を削って拡大します。細く曲がりくねった複数の根管を、太く真っ直ぐな1本の根管にまとめるわけです。そうしないと、感染防止の薬剤を隙間なく詰めることができません。当然、根管の拡大に伴い、あちこちの細い根管内に入っている神経も取り除かれていきます。

しかし、細い根管を詳細に探し当てすべての神経を除去するというのは、決して容易な作業ではありません。分岐している細い根管―副根管の神経まで、100%除去できる保証はありません。すると、取り残した神経が痛むことがあるのです。

基本的な対処法→根管内の消毒・洗浄 or 水酸化カルシウム製剤

多少、神経の取り残しがあるくらいなら、それは普通の経過です。神経をすべて取り除くことなど、そもそも期待できません。根管をきちんと消毒・洗浄すれば、内部を無菌化することができます。無菌化が完了すれば炎症も鎮まり、痛みもなくなっていくことが多いです。

治療器具の入っていかない「細い副根管」に関しては、「水酸化カルシウム製剤」を入れて根管閉鎖を期待する方法もあります。水酸化カルシウムの働きにより、副根管の入り口が骨組織で閉鎖されるからです。骨組織による封鎖のことを「アペキシフィケーション」と呼びます。

2.治療した歯が痛い!長期間を経て痛み出したケース

治療直後ではなく、過去に治療した歯が数年後に痛みだすこともあります。この場合、痛みの原因は3種類に区分することができます。神経が残っている歯なら「虫歯の再発」、神経を取り除いた歯なら「根尖性歯周炎」が真っ先に疑われますが、そのほかに「歯周病の急性発作」も考えられます。

2-1 神経が残っている歯が痛み出した…!

痛みの原因として高確率なのは、虫歯の再発です。詰め物・かぶせ物の奥で虫歯が再発し、虫歯菌が神経に達したものと思われます。多くの場合、神経の炎症(歯髄炎)が起きて、強い痛みに襲われます。

虫歯が再発することを「2次カリエス」と呼びます。歯科医院によっては「受診理由となる虫歯の半分以上が2次カリエス」というところもあり、「虫歯は非常に再発率の高い疾病である」という事実がわかります。

銀歯など、削った部分を埋めるための人工物を「補綴物(ほてつぶつ)」といいます。補綴物は人工物なので、虫歯になることはありません。しかし、補綴物の下には天然歯が残っており、天然歯の部分は虫歯になる恐れがあります。

さて、人間の噛む力は、だいたい本人の体重に等しいと考えられています。体重60kgの人なら、60kgの強さで噛んでいるわけです。60kgの衝撃が毎日加わるわけですから、補綴物が変形することは珍しくありません。そして、補綴物が変形するたびに、「歯と補綴物の隙間」は大きくなっていきます。

そして、あるとき、歯と補綴物の隙間に歯垢(プラーク)が溜まりはじめ、補綴物の奥が虫歯になるのです。補綴物の裏側は目で見ることができませんから、早期に気づくことは不可能です。ある日、虫歯菌が歯髄に達して「治療した歯が痛い」と気づくのです。

基本的な対処法→虫歯の再治療

2次カリエスは虫歯の再発ですから、再治療をするしかありません。たいてい、2次カリエスに気づくのは「何もしなくてもズキズキ痛む段階」になってからです。要するに、C3の段階になっている…ということです。この段階で治療をすると、基本的には抜髄(神経を抜く治療)になります。

2-2 神経を取り除いた歯が痛み出した…!

「神経を抜いた歯は痛まない」と信じている人も多いですが、実のところ、そうとも言い切れません。すでに神経を除去したはずの歯が痛む…ということも起こります。神経を抜いた歯が強く痛む場合、「根尖性歯周炎」が疑われます。

神経を抜く治療をすると、歯の内部には空洞が生じます。神経の入っていた部分が空っぽになるからです。空洞を放っておいては、歯の内部が再感染してしまいます。そこで、神経を抜いた後に「根管治療」をおこなうのです。根管治療は「歯の内部にある虫歯をきれいに取り除き、空洞に薬剤を詰めこむ治療」です。薬剤はもちろん、再感染を防ぐための薬剤になります。

ただ、薬剤は万能ではありません。現代の医学では、再感染の確率をゼロにすることはできないのです。結果、一定の確率で、歯の内部が再感染することになります。しかし、すでに神経がないので、歯の内部が再感染して虫歯になっても、気づくことは不可能です。

そのため、再感染した場合、歯の内部は虫歯菌の巣窟になってしまいます。歯髄腔(神経の入っていた空間)、根管(歯の根っこ方面にある神経・血管の通り道)が感染し、最終的には歯の根に到達するのです。虫歯菌が歯根におよび、周囲に炎症を起こすと「根尖性歯周炎」になります。

歯根周囲の炎症を「根尖病変(根尖病巣)」と呼んでいます。当初は「歯茎が腫れる」といった症状をきたし、さらに悪化すると膿が溜まってきます。大量の膿が溜まると、歯茎が内側から圧迫されて強い痛みを覚えます。

基本的な対処法→感染根管治療or歯根端切除術or抜歯

根本原因は「歯の内部が細菌感染したこと」なので、歯の内部を再び無菌化する方針になります。具体的には、虫歯における「根の治療」を再び実施します。これを「感染根管治療」と呼んでいます。

感染根管治療で無菌化できなければ、歯根端切除術を試みます。歯茎を切開して歯根を露出させ、歯根の先端を切除するのです。さらに、歯根の切断面から薬剤を詰める「逆根管充填」をおこない、歯内の無菌化を目指します。この方法でも無菌化が望めないようであれば、残念ながら抜歯を余儀なくされます。

2-3 急に歯茎が腫れあがった…!

「治療した歯が痛い」と思っても、実際には「歯茎が腫れあがっている」というケースがあります。痛み方が根尖性歯周炎と似ているので、患者さん自身が判別するのは困難だと思いますが、「虫歯の再発がなく、歯茎だけが腫れている」という部分が異なります。この場合、原因は歯周病の急性発作です。

基本的に、歯周病菌は痛みの出ないまま進行していくのが普通です。しかし、たまに「歯周ポケットの歯周病菌が歯茎に感染して炎症を起こす」という症例があります。これを「歯周病の急性発作(急発)」と呼びます。

基本的な対処法→抗生物質による消炎

歯茎への細菌感染が原因なので、「歯科治療で原因を取り除く」という方向にはなりません。まさか炎症1回で歯茎を切り取るわけにもいきませんから、薬で炎症を鎮めることになります。細菌感染なので、抗生物質で原因菌を抑え、消炎を図ることになるでしょう。

3.まとめ

歯科治療において「治療した歯が痛い」というケースは珍しくありません。大切なのは、早期に歯医者さんを受診し、正しい処置を受けることです。「何か問題が起きているのか、経過観察で良いのか」をきちんと診断してもらえば、それほど大きな問題になることはありません。自己判断を避け、「何か問題を感じたら、歯医者さんに相談する」という習慣づけをしましょう。

 

先生からのコメント

治療後、麻酔が切れた後に痛みが出ること・・・歯医者さんもリスクを考えて説明をあらかじめしている所が多いと思います。よく説明する内容としてお話をするなら、冷水痛は一過性で経過観察すれば治まることが多いです。咬合痛に関しては、噛み合わせ調整で対応できることが多いです。ただし、自発痛(ズキズキと脈打つような拍動痛)が出てしまった場合や、温熱痛が出現してしまった場合は神経を取る治療に移行することが多いです。とにかく、痛みが出たら通院中の歯医者さんによく相談してください。

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。