グラグラと動く歯を見つけると心配になりますが、痛みがないからといって揺すったり放置したりせず、歯科医院で原因を診てもらい、適切な治療を受けることが大切です。
この記事では、歯がグラグラ動くさまざまな原因、正常な歯の動きと異常な歯の動きの見極め方、そして原因別の治療法について詳しくご紹介します。
この記事の目次
1.歯がグラグラ動く7つの原因と治療法
歯はガッチリと固まって動かないものではなく、実はある程度の弾力性を持ちながら、多少は動くものです。しかし、大きくグラつくようであれば、何らかの疾患が考えられます。歯がグラグラするさまざまな原因について、ご紹介しましょう。
①歯周病
歯周病菌は、歯茎の炎症を引き起こすだけでなく、歯を支える骨を痩せさせる原因にもなります。歯周病が重度に進行すると、歯がグラグラし始め、放置すると最終的に歯が抜けてしまう恐れがあります。これは日本人が歯を失う主要な原因のひとつです。
<治療法>
歯周病菌を低減することが歯周病の基本治療となります。歯周病菌のすみかとなる歯垢や歯石の除去をはじめ、薬剤を用いて菌の繁殖を抑えるといった治療法が主体となります。また、歯のグラグラが大きい場合には、隣の歯と接着剤で固定するか、かぶせ物で隣の歯と連結します。
②歯ぎしりなどの癖
強い歯ぎしりの癖があると、歯に強い力がかかり、エナメル質がすり減ってしまいます。その結果、歯がグラグラしてくることがあります。通常、歯は食事中以外はほとんど接触しませんが、歯ぎしりや食事以外で歯が接触することが多いと、歯に大きな負担がかかります。
<治療法>
まず、スプリント療法と呼ばれるマウスピースを使った治療で、歯に掛かる力を軽減することなどから始めます。根本的な治療は癖の改善となります。無意識に行ってしまう癖を自覚する認知行動療法などによって、悪い癖を改善していきます。
③噛み合わせが悪い
噛み合わせのバランスが悪いと、歯が揺れる原因になります。左右どちらかの噛み合わせが高いと、噛みやすい方ばかりで噛む癖がつき、その歯に大きな負担がかかります。その結果、歯が揺れるだけでなく、使うあごの筋肉に左右差が生じ、顎関節症につながることもあります。
<治療法>
歯並びが原因で悪い噛み合わせになっている場合には、矯正歯科で歯の矯正治療をすることが必要となります。
④かぶせ物の不具合
虫歯や接着剤の劣化によって、かぶせ物と歯の接着が悪くなると、歯が揺れるように感じることがあります。この場合、虫歯を治療して新しいかぶせ物を付け直すことで、すぐに改善できます。しかし、そのまま放置しておくと虫歯が悪化する可能性があるため、早めの処置が必要です。
<治療法>
かぶせ物の高さが合わない場合や、接着が悪い場合などではかぶせ物の調整や作り直しが必要となります。
⑤歯根の破損
歯根が割れてしまうと歯が揺れる原因になります。神経がある場合には、歯が動揺するだけでなく強い痛みが伴いますが、抜髄(歯の内部の神経や血管組織を取り除くこと)を施した歯は痛みがないので注意が必要です。
<治療法>
亀裂が歯根の先まで入っていて、しかも細菌が歯の内部に侵入している場合には抜歯が必要となることもあります。亀裂が歯根に達していない場合には、接着剤などで修復することも可能です。
⑥歯根嚢胞(しこんのうほう)
歯根嚢胞とは、歯の根っこの先にある、あごの骨の部分に膿がたまる疾患です。歯髄(歯の神経や血管組織)が細菌に感染し炎症を起こすと、このように膿がたまります。嚢胞が大きくなると、歯の根やあごの骨が溶けて歯がグラグラするようになります。
<治療法>
まず根管の治療が必要となります。それだけでは改善が見込めない場合には、歯の根っこの部分を切除する手術が必要となります。
⑦歯の脱臼
歯はあごの骨と歯根膜という組織でつながっています。事故などで歯に強い力が加わると、この歯根膜が部分的にはがれることがあります。これを歯の脱臼といい、歯が揺れることになります。また、歯がすべて取れてしまうことを歯の完全脱臼といいます。
<治療法>
歯とあごの骨をつなぐ歯根膜が再生するまで、歯を接着剤などで固定して経過を見ます。歯のすべてが抜けた場合でも、すぐに元の位置へ固定する処置ができれば、元通りにくっつけることもできます。ただし、歯髄壊死(歯の内部の神経や血管組織が死んでしまうこと)を起こし、元通りにならない可能性もあります。
2.歯がグラグラ動く際の注意点
舌や指で故意に触らない
グラグラしている箇所が見つかると、そこが気になって舌で揺すってしまったり、指で何度も動かしてみたりしてしまうものです。こうした行動は症状を悪化させることになるので、控えるようにしましょう。
固いものや歯にくっつく食べ物を避ける
固いものや歯にくっつく食べ物なども控えましょう。こうした食べ物も、グラグラする歯をさらに揺する結果になるからです。歯科医院で原因を突き止め処置を行うまでは、柔らかい物を食べるようにしましょう。
痛みがある場合は消炎鎮痛剤を服用する
痛みも伴う場合はすぐに治療を受けるべきですが、歯科医院に行くまでの間、痛みが我慢できないときには、市販の消炎鎮痛剤を服用しましょう。ただし痛みが和らいでも放置せず、歯科医院で診てもらうことが肝心です。
歯が抜けたら牛乳で保存する
外傷によって歯が抜けてしまった場合でも、迅速に歯科医院で治療を受ければ再建できる可能性があります。その際、抜けた歯をティッシュやハンカチなどで包むのではなく、牛乳に入れて保管するようにしましょう。もし牛乳がない場合には、口内に入れて唾液に浸しながら、速やかに歯医者さんに向かいましょう。
3.治療が必要かどうかの判断基準
ここでは、正常な歯の動きと治療が必要な歯の動きの違いについて、詳しくご説明します。
前後左右に0.2~0.3ミリ程度動く
歯は隣の歯と接触して支え合っているので、歯のアーチに沿った左右方向には動きにくく、主に前後に動きます。健康な歯でも指で力を加えると、多少は動くものです。前後左右に0.2~0.3ミリ動く程度であれば、健全な歯といえるでしょう。
噛んだときに歯が動く
歯に何らかの問題があれば、指で動かしたときに健康な状態以上に大きく動きます。大きく揺れる歯があるときには、鏡の前で歯を噛み合わせただけでも、歯の動揺が目で見て分かるものです。この二つを試してみて、大きく動くようであれば、すぐに歯科医院で診てもらいましょう。
上下に歯が動く
アーチに沿って指で前後に動かし、鏡で噛んだ時の動きを確認したら、今度は大きく動く歯を軽くつまんで上下に動かしてみてください。上下に動く場合には、歯周病がかなり進行している可能性があります。このような状態では痛みを伴っているケースも多く、すぐに歯科医院で診てもらう必要があります。
4.まとめ
グラグラしている歯があることに気付くと、誰でも動揺してしまうものですが、どんな風に動くのか冷静に見極めましょう。もし前後に0.5ミリ程度の幅以上に大きく動く、または上下に動くようであれば危険な揺れです。ただし、歯の揺れは確かめる程度にとどめ、舌や指で必要以上に揺すったりせず、速やかに歯科医院で診てもらいましょう。
出身校:大阪大学
血液型:O型
誕生日:1956-11-09
出身地:大阪府
趣味・特技:料理
1983年大阪大学歯学部 卒業
1983年大阪大学歯科口腔外科第一講座 入局
1985年大阪逓信病院(現 NTT西日本大阪病院)歯科 勤務
1988年遠藤歯科クリニック 開業
現在に至る

執筆者:
歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。