スケーリングで歯周病治療!歯を失わないための基礎知識まとめ

歯周病の主な治療法として、「スケーリング」という方法があります。「軽度歯周病」に対する治療法として、歯医者さんでよくおこなわれている方法です。虫歯治療のために歯医者さんを受診した場合でも、多くは歯周病に対する処置がおこなわれます。クリーニングの一環としてスケーリングを受けたことのある人も多いでしょう。

こちらの記事では、歯周病に対する代表的処置であるスケーリングを中心に「歯周病治療に関する基礎知識」をお伝えしたいと思います。

この記事の目次

1.歯周病のメカニズムと、スケーリング

「スケーリングがどのような治療なのか」を理解するためには、まず歯周病のメカニズムを理解する必要があります。「歯周病は歯のまわりに起こる疾患である」「歯周病がひどくなると歯を失うことがある」といった知識は広く知られていますが、細かなメカニズムを説明できる人はそれほど多くないように思えます。そこで、最初に「歯周病の原因」について解説することにしましょう。

1-1 歯周病の原因は、歯周ポケットの歯周病菌!

歯周病は、「歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)」炎症が生じ、歯槽骨が溶けていく病気です。歯周ポケットに歯周病菌が住みつくと、歯茎の粘膜が炎症を起こします。歯周病菌は、炎症を引き起こす「PGN(ペプチドグリカン)」などの物質を産生するからです。炎症が慢性化すると、歯槽骨が溶けはじめ、最終的には歯が抜け落ちることもあります。

主な歯周病菌

・プロフィロモナス・ジンジバリス
・トレポネーマ・デンティコーラ
・タンネレラ・フォーサイセンシス
・アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス

これらの歯周病菌は、タンパク質分解酵素を産生して、歯周組織を破壊していきます。特にジンジバリス菌はLPS(リポ多糖類)・ジンジバインといった物質で、「歯を支える骨(歯槽骨)」を溶かしていきます。LPS・ジンジバインには「体内で骨を吸収する細胞(破骨細胞)」を増やす性質があるからです。

歯周病菌が歯茎の組織内にも入りこむと、病原菌を倒すために免疫細胞が集まってきます。病原菌を捕食する細胞(マクロファージ・好中球)などです。ただ、マクロファージや好中球は「炎症状態にして病原菌と戦え」という情報を伝達するための物質(サイトカイン)を放出する性質があるので、炎症が長期化すると大きな問題が生じます。サイトカインが増えると、「体内で骨を吸収する細胞(破骨細胞)」が活性化され、やはり歯槽骨が溶けてしまうからです。

簡単にいうと、歯周病菌は「歯周ポケットの中で、歯周組織を破壊しながら歯周ポケットの奥へ、歯茎の中へ侵入する」ということになります。

【関連記事】 歯槽骨が溶けるメカニズム~歯周病がなぜ歯を失うことにつながるのか?

1-2 スケーリングで、歯周病の進行を食い止める!

歯周病が重症化すると、歯を支える歯槽骨が失われて、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。歯周病菌が住み処としているのは、主に歯石です。歯石の表面には「目に見えないほど小さな穴」があり、その中で歯周病菌がどんどん増殖しています。

歯周ポケット内の歯石を除去しない限り、歯周病菌を減らすことはできません。そこで、歯周ポケットに住みついた歯周病菌を何とかして追い出す必要が出てきます。そのための手段がスケーリングなのです。

スケーリングでは、「スケーラー」と呼ばれる器具で歯石を削りとります。手動スケーラーは、歯周ポケット内に差しこめるように、鋭利で「フック状」になっています。歯周ポケットの内部にある歯石を除去すれば、歯周病菌は住み処を失って大きく減少します。軽度の歯周病なら、スケーリングだけでも改善が見こめるでしょう。

2.進行度によって治療法は変わる!スケーリング以外の方法も紹介

前述したように、スケーリングは軽度歯周病に対する治療法です。進行した歯周病をスケーリングで完治させることはできません。この章では、歯周病の進行度別に、治療法を解説することにします。

2-1 軽度歯周病~歯周ポケット4mm程度

歯周ポケットが4mm程度の歯周病は、スケーリングで対応するのが基本です。手作業で歯石を掻きとる「手動スケーラー」のほか、超音波の振動で歯石を削りとる「超音波スケーラー」も存在しています。

手動スケーラーによるスケーリングは痛みを訴える人もいます。また、手動スケーラーは「力を入れすぎるとセメント質を削ってしまう」という欠点もあります。セメント質は歯根の表面を覆っている組織で、セメント質が削れると「熱いもの、冷たいものがしみる症状(知覚過敏)」が生じることもあります。

ただ、必ずしも超音波スケーラーが優れている…というわけではありません。超音波スケーラーは「広範囲の歯石を大ざっぱに除去する力」に優れる反面、「細かい部分の歯石を除去する力」が劣ります。実際、超音波スケーラーを採用している歯医者さんでも、「最後の仕上げは手動スケーラー」というのがベーシックです。

2-2 中等度歯周病~歯周ポケット6mm程度

歯周ポケットが6mmくらいまで拡大すると、スケーラーでは歯石を除去しきれません。深い部分の歯石を除去する場合、「ルートプレーニング」という方法が用いられます。より鋭利な「キュレット」という器具を用いて、歯周ポケットの奥にある歯石を除去します。深い部分の歯石を除去する場合、多くは麻酔を用います。

2-3 重度歯周病~歯周ポケット7mm以上

歯周ポケットが7mm以上の場合は、重度歯周病です。すでに歯槽骨の2/3程度が破壊されており、歯がグラグラするなどの症状をきたしていることも多いでしょう。この場合、スケーリング・ルートプレーニングでは十分な結果を期待できません。

重度歯周病の場合、麻酔をおこなって歯茎を切開し、歯周ポケット内を目視確認しながら歯石除去をおこなうというのがです。この種の外科的治療のことを「フラップ手術」と呼んでいます。

3.まとめ

歯周病は、進行すると歯を支える骨までが破壊されてしまいます。しかし、自覚症状がほとんどないので、「問題を自覚してから通院する」というスタンスでは間に合いません。歯を守るためには、定期健診を受診して「早期発見・早期治療」をおこなうことが重要です。早めの対処を心がけ、スケーリングだけで改善が見こめるうちに治療を開始するようにしてください。

 

先生からのコメント

歯医者さんに通うと虫歯の治療で通い始めたはずが回数がかかり治療に全然取り掛かってくれないなんてことはないでしょうか?このスケーリングやその先のルートプレーニングという治療を行ってから次の治療に取り掛かることが理想であるためです。虫歯になった、歯茎が腫れたということはそれだけ口の中にばい菌が繁殖しているということです。回数がかかっても飽きずに通院してくれることを歯科医や歯科衛生士さんたちは皆願っています。

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。