口腔癌の種類・特徴をチェック!口の中の健康を守るための基礎知識

口腔癌の種類・特徴をチェック!口の中の健康を守るための基礎知識

2016年、日本人の死因第1位は癌でした。推計37万4,000人が癌で亡くなったと考えられています。死因第2位の心疾患が19万3,000人ですから、2倍ほどの差があります。癌が脳卒中を抜いて、死亡原因の第1位になったのは1981年のことでした。以来、35年間にわたって、日本人の最たる死因であり続けています。

さて、癌は身体のあらゆる場所に発生することで知られています。ですから、口の中に癌ができることもあるわけです。口の中にできる癌を指して、「口腔癌」と呼んでいます。こちらの記事では、「口腔癌の種類」「主な原因」をまとめることにしました。

この記事の目次

1.口腔癌とは何か?

口腔癌の発生率は、身体に発生する癌全体の1~3%です。肺癌・胃癌などに比べれば少ない部類ですが、しかし、「近年増加傾向にある癌」の1つとされています。実際、国立がんセンターが発表している死亡者数データによれば、「口腔・咽頭癌の死亡者数」は明確に増加しています。

2.発生部位で分類!口腔癌の種別

口腔癌をきちんと理解するためには、「口腔」という言葉の定義を知る必要があります。口腔とは「口唇・頬粘膜・歯槽・硬口蓋・口腔底・舌先2/3・軟口蓋・顎骨・唾液腺」から構成される部位です。実は、「舌の根元1/3」は舌根と呼ばれ、口腔ではなく中咽頭(のど)に属しています。

さて、口腔癌というのは「口腔にできる癌」ですから、上述した口腔の範囲内に発生する癌を指します。同じ口腔癌でも、発生した場所によって名前が変わります。ここからは、それぞれの種類について確認しましょう。

以下に、それぞれの口腔癌に関して「日本における発生率」を記していますが、これは2002年におこなわれた「日本頭頸部癌学会」の集計に基づきます。

2-1 舌癌

舌に発生する癌で、口腔癌全体の60.0%を占めます。舌の中央に発生することは少なく、辺縁部(ふちの部分)に好発する傾向です。根治には外科手術がおこなわれることが多いですが、進行癌では舌の大部分を切除することもあり、嚥下・発音に大きな障がいを残す恐れもあります。

2-2 下顎歯肉癌

下顎の歯茎に発生する癌で、口腔癌全体の11.7%にあたります。早い段階で下顎骨に浸潤して、骨組織を破壊する傾向があります。進行癌では下顎骨の区域切除(下顎骨の一部を切除することで、顎の骨の連続性が失われる)をおこなうことがあり、「顔の輪郭が変わる」「摂食機能が低下する」といった後遺症が残るケースがあります。

2-3 上顎歯肉癌・硬口蓋癌(こうこうがいがん)

上顎の歯肉にできる上顎歯肉癌は口腔癌全体の6.0%、口腔の天井部分にできる硬口蓋癌は3.1%を占めます。上顎骨・副鼻腔など上部に浸潤すると、切除範囲に眼窩が含まれることもあり、下顎に比べて術後の後遺症が大きくなる傾向です。

2-4 口腔底癌

口腔の底(舌の下)に発生する癌で、口腔癌全体の9.7%にあたります。前歯の裏側付近にできる「正中型」、奥歯の内側付近にできる「側方型」にわけられ、正中型のほうが多く見られます。

2-5 頬粘膜癌(きょうねんまくがん)

頬の内側にあたる口腔粘膜に発生する癌で、口腔癌全体の9.3%に相当します。上下の顎骨・歯茎などに浸潤するので、進行がんでは切除範囲が広がる傾向です。

2-6 口唇癌

唇に発生する癌です。日本では、口腔癌の中で特に発生頻度が低くなっています。早期発見しやすく、腫瘍がなかなか大きくならないので、口腔癌の中では予後が良好な部類です。ただ、「上唇の口唇癌」は下唇より癌の発達が早く、やや転移のリスクが高くなります。

3.腫瘍の特徴で分類!口腔癌の種別

口腔癌の分類方法は1つではありません。原発部位(最初に腫瘍ができた場所)のほか、腫瘍の特徴で区別する考え方も存在します。腫瘍の特徴により「転移するリスク」が異なりますので、こちらの種別も確認してみましょう。

3-1 外向型

腫瘍が外に向けて発育するものを指します。デキモノのような腫瘍がだんだん大きくなり、隆起します。「白くざらざらした隆起」「イボ状で不定形の隆起」といった外見的特徴をとることが多いです。所属リンパ節への一次転移率は12.6%となっています。

3-2 内向型

腫瘍が身体の内側に向けて発育するものを指します。潰瘍のように、えぐれていく傾向があります。「口内炎が深く大きくえぐれるような見た目」になる傾向です。所属リンパ節への一次転移率は24.9%となっており、明らかに転移のリスクが高くなっています。

3-3 表在型

腫瘍が表面で発育するものを指します。粘膜表面がただれていくようなイメージです。所属リンパ節への一次転移率は4.9%で、転移リスクはもっとも低くなります。ただし、原発部位での再発率はもっとも高くなっています。

参照URL①:http://jsco-cpg.jp/guideline/04.html
参照URL②:http://jsco-cpg.jp/guideline/04_2.html

3.口腔癌のリスクファクターとは?

口腔癌の発生確率を高めてしまうリスクファクターには、どのようなものがあるのでしょうか? 口腔癌のリスクを高めるのは、口腔粘膜に対する慢性的な刺激です。この章では、口腔癌につながる慢性的刺激のリスクファクターを紹介することにしましょう。

3-1 喫煙の習慣がある

タバコは口腔癌のリスクを高める代表的な習慣です。特にパイプ・葉巻など口腔喫煙する種類のタバコを好む場合、口腔癌リスクが増大しやすくなります。時折、「パイプ・葉巻は肺癌リスクがあまり上がらない」と吹聴している人がいますが、そのぶん、口腔癌リスクが跳ね上がるので注意しましょう。

3-2 飲酒の習慣がある

アルコールもまた、口腔癌リスクを高めるリスクファクターです。特にウイスキー・焼酎などアルコール度数の高いものを好む人は要注意です。度数の高いお酒ほど、口腔粘膜への刺激は強くなります。また、「お酒が入ると顔が赤くなりやすい人」「あまりお酒に強くない人」はアルコールの影響を受けやすいので、よりリスクが上がります。

3-3 歯磨き・入れ歯洗浄を怠りがち

1日2回以上の歯磨きをしていない人、入れ歯をきちんと洗浄していない人も口腔癌リスクが上がりやすくなります。口腔内の衛生状態に問題があると、雑菌が繁殖して、炎症を起こしやすくなるからです。

3-4 口の中を頻繁に噛む or 詰め物・歯の尖った部位が引っかかる

口腔内の同じ場所を頻繁に噛む癖があったり、詰め物・尖った部位が同じ場所に引っかかったりする場合、口腔癌のリスクが増大します。同じ場所に慢性的な物理的刺激が加わっているからです。

4.まとめ

2015年、日本国内において「口腔癌・咽頭癌により死亡した人」は約7,400人と推計されています。癌全体の中では数%の発生率ですが、毎年、数千人が口腔癌で命を落としているのはれっきとした事実です。

幸い、内臓と違って口腔内は自分の目で確認することができます。口腔癌の特徴を知り、時折、鏡で口の中をチェックしてみましょう。口腔癌に限らず、口腔内の違和感・病変を早期に発見できれば、口腔内の健康状態を維持・向上することにつながるはずです。

 

先生からのコメント

癌・・・。怖いですね。診療している歯科医師から見ても癌は怖いです。そのために早期発見が何よりも大切になります。早期発見できる大きな要因として日々の診療から考えられるのは、定期検診として同じクリニック、同じ歯科医師に診てもらい続けることだと思います。同じ人間が診療にあたっていれば、以前と変わったことに素早く気が付けるからです。もちろん、進行していれば誰が診ても一目瞭然なわけですが。なによりも早期発見・早期治療。これに限ります。

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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