感染症と歯磨きによる予防について、東京医科歯科大学・木下淳博教授にお話を伺いました。
微生物からの感染を予防するために大切な歯磨きについて、どういった道具を使うことが望ましいのかなどを解説していただきます。
※前回の記事「歯科衛生士になるには!今、1万人不足しているという問題」
口腔ケアで感染症リスクを軽減
歯周病菌がインフルエンザなどのウイルスによる感染をしやすくするという話もあります。口腔ケアをしっかりと行うことで、感染症のリスクを下げることはできますか?
ウイルスに感染しやすくなるという報告もいくつかありますが、まだ定説にはいたっていないです。ですが、歯周病菌を除去することで、歯周病予防にもなりますし、ウイルスにも感染しにくくなるのであれば、やらない手はないですよね。
つまり、どちらにとってもよいことなので、エビデンスがまだしっかりと取れていないからとか、定説になっていないからやらないという手はなく、ブラッシングをしっかりやるべきだと思いますよ。
また、喫煙をすると歯周病になりやすい、肺がんになりやすいといわれています。ならば、止めた方がいいですよね。
感染症予防には、手洗い、うがいのほかにも、歯磨きが大切になってきますね…。
ウイルス感染を予防するためには、歯磨きをしましょうという結果も出ています。これも、エビデンスの問題というよりも、結果として期待できるのであれば取り入れていきましょう。
インフルエンザウイルスだけでなく、コロナウイルスに関しても同じ考えでいいと思いますよ。歯周病菌を減らすことが、ウイルス感染のリスクを下げる可能性があるならば、是非率先してすすめたいと思います。
入院時やウイルス感染時の口腔ケアは、特に重要になってくると思います。今後、エビデンスは築かれてくると思いますが、それを待つ必要はないでしょう。
より良い口腔ケアのアドバイス
どのような歯磨きをするといいかアドバイスをお願いします。
ベロ・舌を清掃して舌苔(ぜったい)を除去することも大切です。歯だけでなく、舌も、口腔内細菌の溜り場になっています。
それと歯ブラシの道具なのですが、個人的には電動歯ブラシをすすめています。手で歯ブラシを動かして磨かなければいけないところを、機械が振動して磨いてくれる。電動歯ブラシを使わない手はないと思いますね。
人はブラシの当て方だけに集中すればいいんですから。
ほかにも超音波歯ブラシなどもありますよね。エビデンスのレベルはさまざまですが、どうせ同じ時間をかけるなら、自分で磨くだけではおろそかになってしまう部分を、少しでもカバーしてくれるような機能がついているものをおすすめしたいですね。
もちろん、電動歯ブラシは手動のものより高額ですが、本体は何年も使えるものですし、将来の健康を左右するものにはある程度のお金はかけてほしいと思っています。
歯ブラシのかたさは、どういったものをおすすめしていますか?
私は歯茎を重点的は磨かない方法、歯茎のぎりぎりまでを磨くやり方を推奨していますので、「ふつう」や「かため」でいいと考えています。
これが、歯茎も一緒に磨く方法だと、かためではダメですよ。その場合にはやわらかめを使用してください。歯ブラシの硬さは、磨き方を教わるときに一緒に確認してください。
歯を磨く時間の目安などもあったりするのでしょうか?
トータルの目安時間というアドバイスはしていないです。
そうではなく、1カ所に対して、その人の磨き方で、何秒必要になってくるのかということを伝えています。
例えば1カ所10秒磨く必要があるならば、26カ所磨くと、結果的に4分20秒となる。そういった考え方を伝えていますね。
歯の教科書 編集部まとめ
定説になっている、なっていないにかかわらず、口内環境を整えることは、さまざまなリスクヘッジにつながります。これは、歯周病予防だけでなく、ウイルス感染にも有効な可能性があります。
また、木下教授が口腔ケアにおすすめする電動歯ブラシ。振動によって人の手では、おろそかになってしまう箇所を補ってくれる可能性があります。
正しい使い方は歯科医院で教えてもらい、より良い口腔ケアにつなげましょう。
1987年:東京医科歯科大学歯学部卒業
1987年:東京医科歯科大学大学院入学(歯科保存学第二講座)
1991年:東京医科歯科大学大学院修了
1991年:東京医科歯科大学歯学部附属病院医員(第二保存科)
1992年:東京医科歯科大学歯学部附属病院助手(歯科保存学第二講座、第二保存科)
1994年:東京医科歯科大学歯学部助手(歯科保存学第二講座)
1998年:Visiting Instructor, Harvard School of Dental Medicine, Boston, MA (3月~9月)
2000年:東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 生体支持組織学系専攻 生体硬組織再生学講座 歯周病学分野 助手
2004年:東京医科歯科大学 歯学部 口腔保健学科 口腔健康推進統合学講座 口腔疾患予防学分野 教授(~2010年)
東京医科歯科大学 歯学部附属病院 歯科衛生士室長(~2008年)
2005年:東京医科歯科大学 歯学部附属病院 歯科医療情報センター長(~2007年)
2007年:東京医科歯科大学 歯学部附属病院 口腔ケア外来 外来診療科長(~2010年)
2010年:東京医科歯科大学 副学長(メディア教育担当)(~2014)
東京医科歯科大学 図書館情報メディア機構長(~2017)
東京医科歯科大学 図書館情報メディア機構 メディア教育推進部門長(~2016年)
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 環境社会医歯学系専攻 医療政策学講座 教育メディア開発学分野 教授(~現在)
2011年:東京医科歯科大学 図書館情報メディア機構 図書館長(~2017)
2016年:東京医科歯科大学 統合教育機構 事業推進部門 教授(~現在)
2017年:東京医科歯科大学 統合情報機構 副機構長・図書館部門長(~現在)
東京医科歯科大学 統合教育機構 教学IR部門長(~現在)
東京医科歯科大学 歯学部附属病院 病院長補佐・歯科医療情報センター長(~現在)
2020年:東京医科歯科大学 副理事(情報・IR担当)
東京医科歯科大学 統合情報機構 副機構長・情報セキュリティ部門長(~現在)
執筆者:
歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。