【教授に聞く】感染症を防ぐための口腔ケア!清潔な口内でインフルエンザ、コロナ予防

【教授に聞く】感染症を防ぐための口腔ケア!清潔な口内でインフルエンザ、コロナ予防

口腔ケアが虫歯や歯周病だけではなく、ウイルスなどからの感染症予防にもつながることをご存じでしょうか?

「STOP感染症2020戦略会議」にも参加されている東京医科歯科大学・田上順次教授にインタビューを行い、感染症から身を守るための口腔ケアについて解説していただきました。

この記事の目次

口は体の入り口!入り口をきれいにして感染を予防

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

虫歯や歯周病を予防するための口腔ケア。最近では感染症のリスクも軽減できるといわれているようですが、どのようにお考えですか?

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田上順次教授

口の中には、よく知られているように非常にたくさんの細菌がいます。それは、常在菌といって日ごろから私たちの口の中にいるんですね。

その中には体に必要な菌もいますし、虫歯の原因となる細菌や歯周病の原因菌も含まれています。

生きた体ですから、こうした細菌を全てなくしてしますということは不可能です。全部なくしてしまうと我々も生きてはいけないわけです。ただし、細菌を減らすということは、健康にとっては大事なことになってきます。

口は体の入り口ですから、病原菌も入ってきますよね。ですから、虫歯や歯周病を予防するということだけではなく、感染症を予防する観点からも大切になってくると思います。

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

どのような感染症を予防するために口腔ケアは役立つのでしょうか?

田上順次教授アイコン
田上順次教授

具体的にはインフルエンザのウイルスですね。ウイルスが我々の口内に入ったとしても、そこから粘膜の細胞に入り込まないと、感染ということにはならないんです。口の中で、インフルエンザウィルスが私たちの細胞に入り込みやすくする物質を口腔内の細菌がつくり出すという研究結果があります。

また、ある養護施設においては、歯科衛生士が入所者の口腔ケアをしっかりと行った結果、インフルエンザの感染者数が減ったという調査結果も出ています。

ですから口内の細菌数をできるだけ減らしてきれいな状態にしておくというのは、感染予防につながるといえます。

コロナウイルスに関しては今のところ情報としてはありませんけれども、似たようなことが期待できる可能性はあるかもしれませんね。

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

歯周病菌がいることでインフルエンザウイルスを活性化させてしまうことはあるのですか?

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田上順次教授

歯周病菌だけでもインフルエンザウィルスが細胞に入り込みやすくするといわれています。

ほかにも、歯周病菌自体が全身でさまざまな悪さをすることが分かっています。特に糖尿病や血管系の疾患を引き起こすといわれているので、注意が必要です。

感染予防に歯ブラシ!より良い磨き方とは

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

感染予防につながるブラッシングのポイントを教えてください。

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田上順次教授

非常に単純なことなんですよ。細菌を減らすということは、プラークを減らすということです。

しっかりとプラークを取ることを念頭に置いた歯磨きや、デンタルフロス、歯間ブラシを活用した歯間部の清掃を行ってください。

「磨いた」といってもプラークが取れていなければ、磨けたことにはなっていないので…。

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

外から帰って来たら手洗い、うがいのほか、歯磨きをした方が予防のためには良いのでしょうか?

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田上順次教授

もちろんです。ですが、あまり神経質になってしまっても、みんなが実行できるわけではありませんからね。少なくとも1日に1回は、例えば夜寝る前には時間をかけて汚れを取って、歯間部の清掃をするということでかなり違うと思います。

帰ってきて歯を磨くということは難しいこともありますが、普段から口内の細菌が増えないようにしておくということが大切ですね。

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

今後、予防への関心はさらに高まっていくと思います。田上教授が予防について、改めて発信したい提言がありましたら教えてください。

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田上順次教授

口の中をきれいにするということは、ただ歯を守るということだけでなく、体に入ってくる細菌・ウイルスの感染を防ぐということにつながります。

口内を清潔に保ち、全身の健康を維持できるようにしましょう。

歯の教科書 編集部まとめ

日々のブラッシングが虫歯や歯周病予防だけでなく、インフルエンザなどから身を守ることにもつながると分かりました。

具体的には歯についたプラークをしっかりと取り、歯間部を清掃するというシンプルな内容です。また、決して無理な清掃がもとめられているわけではなく、毎食後歯磨きができなかった場合でも、寝る前に1日に1回は時間をかけて磨くだけでも変わってくるといいます。

これだけのことで、全身の病へのリスクを下げることができるのであれば、ぜひ取り入れていくべきだと感じました。

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
う蝕制御学分野
田上順次教授監修
経歴・プロフィール

1980年 東京医科歯科大学歯学部卒業
1984年 東京医科歯科大学大学院歯学研究科博士課程修了(歯学博士)
1984年 東京医科歯科大学歯科保存学第一講座助手(1994年まで)
1987年 米国ジョージア医科大学 Adjunct Assistant Professor(1988年まで)
1994年 奥羽大学歯学部歯科保存学第一講座教授(1995年まで)
1995年 東京医科歯科大学歯学部歯科保存学第一講座教授(2021年まで)
この間、同大学にて、歯学部附属歯科技工士学校長、歯学部附属病院歯科器材・薬品開発センター長、歯学部長、大学院医歯学総合研究科研究科長、理事・副学長 等を歴任
2021年 東京医科歯科大学名誉教授
現在 朝日大学客員教授、奥羽大学客員教授、昭和大学客員教授、医療法人徳真会 先端歯科センター長

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執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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