【教授に聞く】歯肉の腫れは歯周病の初期!?インプラントでも注意が必要なわけ

【教授に聞く】歯肉の腫れは歯周病の初期!?インプラントでも注意が必要なわけ

よく耳にする歯周病とはどういった病気なのか、日本歯科大学生命歯学部・沼部幸博(ぬまべゆきひろ)教授に詳しく解説していただきました。

また、歯周病とよばれたり、歯槽膿漏(のうろう)とよばれたりする違いや、どの段階から口臭が発せられるのかなど教えていただきます。

さらに、インプラントを入れていることで起こる歯周病と同様のトラブルについても説明していただきました。

歯周病の知識を前もって理解しておくために、お役立てください。

この記事の目次

進行は人それぞれ!菌の強さや遺伝も関係

沼部幸博教授

歯の教科書 編集部
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歯周病とはどのような病気なのでしょうか?

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沼部幸博教授

歯周病の症状というのは、歯の周りの歯茎が赤く腫れて血が出るようになり、やがて歯が“グラグラ”してきて膿(うみ)も出てくるようになり、次第に歯のグラグラが大きくなり、最後には歯が抜けてしまうという病気になります。

ただ、その症状には個人差があって、進行が早い人もいれば、遅い人もいますね。

歯の教科書 編集部
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進行が早い人、遅い人の違いは何なのか教えてください。

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沼部幸博教授

その原因はまずお口の中の汚れの具合、そして汚れの中にいる病原菌の種類病原菌の力、さらに歯ぐきなどの抵抗力に関係しているのではないかと考えられています。

また、遺伝的に歯周病になりやすい方がいらっしゃることは分かっているんですね。

歯の教科書 編集部
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なぜ遺伝的に歯周病になりやすい方がいると分かったのですか?

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沼部幸博教授

家族の口内状況を調べることで分かってきたんです。

お父さん・お母さんのどちらかに歯周病があり、比較的若いうちから発症し、進行しているとします。すると、子供も同じような症状が出ていることがあるのです。

このように歯周病と遺伝の関係は、昔から知られています。

歯槽膿漏や歯周炎、その違いは?

歯の教科書 編集部
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歯周病とよんだり、歯槽膿漏とよんだりしますが、何か違いがあるのでしょうか?

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沼部幸博教授

歯周病、歯槽膿漏というのは、両方同じ病気であるとの考え方でいいと思います。

ただ、歯槽膿漏というと、歯がグラグラしていて、血や膿が出ていて、口が臭いといった古くからのイメージがあります。

なので、進行した状態の歯周病を指していると考えてもらってもいいですよ。

歯の教科書 編集部
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歯周炎とよばれることもありますが、これはどういった状態なのでしょうか?

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沼部幸博教授

これは歯周病という症状がどういう段階を踏んで進行していくのかという話になります。

歯周病はまず、歯と歯茎の境目に汚れが溜まることで、歯茎に炎症が起こりますが、その初期段階として炎症がまだ限局しているのが「歯肉炎」という状態になります。

次に、汚れを取らず歯肉炎を放置していると炎症が拡大して腫れが大きくなり、歯の周りの土台の骨までもが段階的に破壊されて行く「歯周炎」という段階に入るんです。この歯周炎には軽度、中等度、重度といった段階があり、歯を支えている骨がなくなって行くわけですので、最後には歯が抜け落ちてしまうのです。

ですから、歯周炎というのは進行した歯周病であるというふうに考えてください。

口臭と歯周病!まずは汚れを落とすことで改善を目指す

歯の教科書 編集部
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歯周病に関連する口臭ですが、口臭はどのくらいの段階から発せられるのでしょうか?

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沼部幸博教授

これも人により異なるとは思うんですが、進行した歯周病の状態、歯槽膿漏の状態になると、膿が出たりもしますので、お口の中の臭いが強くなったりします。

また歯周病の原因は、歯の周りや舌の表面についたばい菌の塊、汚れですので、その汚れから発せられる臭いもあります。汚れと歯周病の病態が加わると強い臭いになります。

お口が臭うと感じたら、お口の中が不潔な状態にあるということを自覚していただいて、しっかりとケアを行ってください。

インプラントでの注意点!インプラント周囲での炎症

歯の教科書 編集部
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歯を失ってインプラントを入れた場合、もう歯周病を気にする必要はないですか?

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沼部幸博教授

もちろん歯がなければ、その場所は歯の周りの病気の歯周病になることはないんです。ですが、入れたインプラントの周りも歯周病と同じようなメカニズムで周囲の組織が壊れていくことが分かっています。

これにも歯周病のように段階がありまして、最初にインプラントの周りに汚れが溜まってくると、そこに炎症が起こるんですね。

これは歯肉炎と同じような段階で、インプラント周囲粘膜炎といいます。それが進行しますと、インプラント周囲炎という、歯周炎と同等の段階になってきます。

インプラント周囲炎が進行すると、やがてインプラントの周りの骨が壊されて行きます。最終的には入れたインプラントが取れてしまう可能性があります。

なぜ歯周病、インプラント周囲炎に気づきづらい?

歯の教科書 編集部
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歯周病、インプラント周囲炎は進行に気づきづらいものなのでしょうか?

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沼部幸博教授

歯周病の場合、初期症状ではそれほど痛みを伴わないケースが多いため気づきづらいということがあります。

なぜかというと、歯周病の初期は歯の周りに炎症が起こり、歯茎が腫れてくるのですが、歯茎の腫れというのはよほどひどい状態にならないと痛みとして感じづらいのです。本当は鏡などでよく見ると歯茎が赤くなったり、歯磨きの際に血が出たりしているはずなのですが…。

インプラントの周りも同じように歯茎が腫れて組織が壊れていきます。

歯の教科書 編集部
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歯周病とインプラント周囲炎では、進行の段階で痛みに差はありますか?

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沼部幸博教授

痛みは、歯周病とインプラントの周囲の炎症とで違いはないとは思いますが、これについてのきちんとした研究はありません。

インプラント周囲炎は、歯周病より気づきにくい?

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

インプラント周囲炎も進行すると、インプラントがグラグラしだすのでしょうか?

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沼部幸博教授

インプラントというのは、骨の中にがっちりと埋まっていますので、周りの骨が減っていっても、歯と比較すると揺れが起こりにくいと思います。

そのため、インプラント周囲炎になっていることに気づかず、気づいたときにはかなり進行していたという方がいらっしゃるのも事実です。

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

そういった方は、またインプラントを埋め込めるものなのでしょうか?

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沼部幸博教授

インプラントを入れて、その周りが炎症になり周りの骨が壊れて、インプラントが抜けてしまった…。

そうしたケースで、再びインプラントをするということは、できなくはないのですが、さまざまな治療技術が必要になってきます。

なぜかというと、インプラントを支えるべき骨がなくなっているので、そこに骨を増やしてまたインプラントを埋めるということをしなければなりません。

ただここで強調したいのは、インプラントをされている方のほとんどは、一度歯のお手入れが悪くて歯周病やむし歯で歯を失った経験のある方です。歯を失ったところにインプラントを埋めて、それもまた失うという経験をしないためにも、日々のお口の中のケアを徹底して汚れをためない努力をすると共に、お口の中の異変にすぐ気づけるようにしていただきたいですね。

そして、大切な歯やインプラントを守るためにも、歯周病、インプラント周囲炎予防のため、定期的に歯医者さんに通って歯のクリーニングを受けることをおすすめします。

歯の教科書 編集部まとめ

歯周病の進行は、人によってさまざまですが、歯を失ってしまう大きな原因ですので注意が必要です。

そして、歯周病と関連づけられることが多い口臭のトラブルですが、まずは不潔な状態になっているお口であるということを自覚して、お口の中のケアに努めることが大切だと分かりました。

さらにインプラントを入れている方の場合には、汚れをためて歯を失ってしまった経験を繰り返さない努力が必要です。

これらのことから、歯周病、インプラント周囲炎の予防、対策には日ごろのケアのほか、かかりつけの歯医者さんに通い、お口の中を定期的にチェックしてもらうことも重要であるといえます。

日本歯科大学 生命歯学部 歯周病学講座
沼部幸博教授監修
経歴・プロフィール

1983年3月:日本歯科大学歯学部卒業
1987年3月:日本歯科大学大学院修了(歯学博士)
1987年4月:日本歯科大学歯学部歯周病学教室 助手
1989年4月:日本歯科大学歯学部歯周病学教室 講師
1989年9月:カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)歯学部 客員講師(〜1991年)
1993年4月:日本歯科大学歯学部歯周病学教室 助教授
2005年6月~:日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座 教授
2018年4月~:日本歯科大学生命歯学部 学部長
現在に至る

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執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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