歯科医師連盟、歯科医師会とは?組織の活動や日本の医療が直面している問題を公開

歯科医師連盟、歯科医師会とは?組織の活動や日本の医療が直面している問題を公開

日本歯科医師会や、日本歯科医師連盟という組織の名称を聞いたことはあるでしょうか。

歯医者さんが所属している団体なのですが、どういった活動を行っているのか、入会している人の割合は?どのような目的を持って入会しているのかなど、詳しくは知りません。

そこで、日本歯科医師連盟・高橋英登(たかはしひでと)会長にインタビューを行い、組織が行っている活動や目的などを、わかりやすく解説してもらいます。

すると、組織が目指している目標のほか、現在、日本の医療が抱えている問題点などが浮き彫りになりました。

この記事の目次

歯科医療向上の実現を目指す!日本歯科医師連盟のロビー活動

Q1.日本歯科医師会、日本歯科医師連盟とは、どういった組織で、どういう活動をしているのでしょうか?

日本歯科医師会は公益社団法人であり、国民のための歯科医療を充実させ、国民を幸せにすることを目的としています。結果的に歯科医師の目的である“国民のための優良な歯科医療の拡充”を目指した組織です。

日本歯科医師連盟は会員である歯科医師が国民のために優良な歯科医療を行えるよう診療環境を整え、リスクの低い医療に傾注することができるよう結果的には国民医療の発展に資する。そのことを目的としていますから、目指すところは同じです。

日本歯科医師会に入会する歯科医師は、国民の健康と福祉の増進のために働こうと思っているわけですから、歯科医師にとって不安なくより良い診療ができる環境が必要になってくるんですね。

そこで、われわれ日本歯科医師連盟の第一の目的は、日本歯科医師会の会員がよりよい歯科医療を行える環境を整えていくということになります。

ではなぜ、組織をわざわざ2つに分けているのか。それは公益社団法人である日本歯科医師会というのは政治的な活動ができないんですね。全くできないというわけではないのですが、非常にやりにくい状況にあるんですよ。

そのため日本歯科医師連盟は、国民の代表である議員さんたちに丁寧に説明をして歯科医療の大切さ必要性を理解してもらい、世界に誇れる医療保険制度「国民皆保険」を持続させるということを第一に掲げて活動しているんです。これまで日本では、ロビー活動と聞くとあまり良いイメージを持たれていないかもしれません。

ですがもともとは、ロビー活動とは専門知識を豊富に持つ団体側から議員や官僚に正しい情報提供をして政策に反映していくことを目的としています。現在、当連盟ではコンプライアンス順守のもと、国民に公平かつきめ細かな歯科医療を持続的に提供できるよう、歯科保健医療の充実が全身にもたらす良い影響のエビデンスを示して健康寿命延伸にむけた活動をしています。

地域医療に貢献!歯科医師会の3層構造

Q2.歯科医師会が都道府県だけでなく、都市区にいたるまで、細分化して設立されている目的は何なんでしょうか?

地域医療を支えるという目的があるんです。例えば、郡市区の歯科医師会では、保健所や行政と一緒に行事や歯科健診を行っているので、直接、市区民と歯科医師の接触がありますよね。そうすることで地域の状況を把握することができるんです。

歯科医師連盟も3層構造という形を取っていて、郡市区歯科医師連盟があり、都道府県歯科医師連盟があり、日本歯科医師連盟があるわけです。まずは、その3つに入ってそれぞれの区議、県議、国会議員に対するアプローチが可能となります。

歯科医師は全員、歯科医師会、歯科医師連盟に入っている?

Q3.歯科医師会、歯科医師連盟に入らないということもできるのでしょうか?

例えば弁護士の場合、弁護士会に入らなければ独立して業務を行うことができませんよね。

ですが、歯科医師は関係ありません。歯科医師会、歯科医師連盟に入らなくても開業することも勤務医として働くことも可能です。

任意での入会が原則です。しかし我々医療に携わる者にとって個々の医療機関での社会貢献だけでなく組織として行政と組んでの健診事業等の公益事業に関与することも医療人として必要欠くべからざる事と思います。

連盟に入らない歯科医師は1万人!その理由とは

Q4.歯科医師会、歯科医師連盟には同時に入会することになるのでしょうか?

昔は両方入るのが当たり前だったんですけれども、今は入らない方もいますね。

理由は、われわれ日本歯科医師連盟が政策を進めるために、その時点での政権与党と連携しているのも一つの理由かもしれません。支持政党は各人の自由思想ですから。

また、以前ほどゆとりがなくなってきていることも関係あるかもしれません。歯科医師会・歯科医師連盟に加わると、公的な活動に時間を取られることになるので、その時間があったら患者さんを診ようと考える方もいますよね。

ですから、日本歯科医師会の会員で日本歯科医師連盟に入っているのは現在約79%。日本歯科医師会に入っていて、日本歯科医師連盟に入らないという方は1万人くらいいますね。

Q5.歯科医師会に入らないという方もいるのでしょうか?

残念ですが、入会しないケースはあります。最近では歯科医師会を辞めてしまう人もいます。

歯科医師会に入っても「役員をやってほしい」とか「委員会の委員をやってほしい」など公的な仕事が結構ありますからね。これらの仕事は地域医療、公衆衛生向上のために重要です。

ただ自院の診療以外のプラスαの業務になりますし、その対価は殆どなくボランティア的な要素が大きいのも事実ですから。

若い歯科医師の入会率が低下しています。これは、組織にとっての大きな問題なんです。

入会に関しては任意ですし、入らなくても開業はできるので、なかなか難しい問題があります。

歯科医師会・歯科医師連盟の転換期

Q6.入会率が低下してるとありましたが、歯科医師会・歯科医師連盟は今後どうあるべきとお考えなのかお聞かせください

昔は開業歯科医師になれば、歯科医師会に入ることが当たり前で…。歯科医師会に入るということは、歯科医師連盟に同時に入会するというのが当たり前の時代。

ですが今はそうじゃない。まずは、「歯科医師会に入って、国民の幸せのために社会貢献していくんだ!」とプライドを持って仕事ができるような、イメージアップ作戦をやっていかなければいけないですよね。

そして、歯科医師連盟に入ることで「歯科医師が歯科医療を遂行していくうえで、これだけメリットがあるんだよ」というプロパガンダが必要になってきています。ある意味、転換期を迎えています。

それができないと、「別に入らなくてもいい」という誤ったイメージがついてしまいますよね。

ですから現在、当組織ではよりよい歯科医療の提供、向上のための環境整備に尽力しています。具体的には歯科診療報酬の適正評価を構築したり、個人事業者の事業継承税制の創設を行ったりなど、入会メリットの提供をしています。

我が国の公的保険制度は国策により決定されます。故に、立法府であり、国民の代表である国会議員の方々に歯科医療の大切さを理解していただかなくては、良い方向に舵を切ることはできません。

日本歯科医師連盟
高橋英登会長監修
経歴・プロフィール

昭和52年:日本歯科大学歯学部 卒業 
昭和54年:東京都杉並区に井荻歯科医院開設
昭和62年:日本歯科大学歯学部歯科補綴学教室第2講座 講師  
昭和63年:東京都国民健康保険診療報酬審査委員(平成12年まで)
平成13年:日本接着歯学会 理事(平成21年まで)
平成18年:日本歯科医師会社会保険委員会委員(平成25年6月まで)
平成19年:東京都杉並区歯科医師会 会長(平成25年6月まで)
平成21年:日本歯科医師連盟 常任理事(平成25年6月まで)
平成22年:日本接着歯学会 副会長(平成26年3月まで)
平成23年:日本歯科大学生命歯学部 客員教授(現在に至る)
平成25年:東京都歯科医師連盟 会長(平成29年6月まで)
平成25年:日本歯科医師連盟 副会長(平成27年6月まで)
平成27年:日本歯科医師連盟 会長
現在に至る

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執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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