【教授に聞く】入れ歯による口内炎とは!入れ歯につきやすい細菌との関係性に迫る

【教授に聞く】入れ歯による口内炎とは!入れ歯につきやすい細菌との関係性に迫る

人(ヒト)の口の中には数多くの微生物がすんでいて、それらは常在菌と呼ばれています。その中にはカビの一種であるカンジダ菌がいます。

カンジダ菌が引き起こしてしまう症状として、口腔カンジダ症などが知られていますが、入れ歯をしている方が気をつけなければいけない口腔カンジダ症があることをご存じでしょうか?

鶴見大学歯学部口腔内科学講座・里村一人(さとむらかずひと)教授、堤千明(つつみちあき)先生にインタビューを行い、入れ歯とカンジダ症の関係性を解説していただきます。

この記事の目次

入れ歯による口腔カンジダ症!義歯性口内炎(ぎしせいこうないえん)とは

里村一人教授

Q1.入れ歯をつけている方がかかってしまうカンジダ症があると聞きました

里村一人教授:口腔ケアの重要性が問われていますが、高齢者で身体が不自由になり、歯磨きや義歯(入れ歯)のケアが十分にできないという方が増えています。

そういう方が古い入れ歯をつけていると、入れ歯による口腔カンジダ症にかかってしまう場合があります。

堤千明先生:口腔カンジダ症の一種として、義歯性口内炎(ぎしせいこうないえん)というものがあります。義歯には、細菌がつきやすく、デンチャープラークという細菌叢(そう)を義歯表面につくるんですね。

デンチャープラークというのは、歯につく歯垢(デンタルプラーク)とは少し違っていて、カンジダ菌が多くいます。そのため、デンチャープラークに潜むカンジダ菌が引き起こす口腔粘膜疾患を義歯性口内炎と呼んでいます。

入れ歯と粘膜の間で増殖!人の体液が栄養源

Q2.入れ歯につくプラークには、なぜカンジダ菌が多いのでしょうか?

堤千明先生:義歯は、顎などの粘膜と直接接している部分がありますよね。粘膜表面には、唾液腺がつくった唾液の他にも、少量の血液や滲出液(しんしゅつえき)といった人の体液があります。

カンジダ菌は、そういった人の体液を栄養源としている菌なので、体液が長時間に渡って停滞しやすいところ、すなわち入れ歯と粘膜が接している部分で増えやすいと考えられています。

歯のプラークも、歯の硬い組織の上に微生物がついて形成されていきます。しかし歯の表面では血液や体液が長時間に渡って停滞することがないのでカンジダ菌は増えにくいといわれています。

里村一人教授:入れ歯の裏面などに、カビであるカンジダ菌が一度付着してしまうと、普通に洗っただけではなかなか除去できない状態になります。そうすると、常にカンジダ菌を被せて粘膜を押さえつけていることになるわけですから、その部分に口腔カンジダ症が発生することになります。典型的な症状として、入れ歯の形に応じた紅斑(こうはん)がみられます。

これは、紅斑性カンジダ症といって入れ歯をしている高齢者に多いのですが、これまではあまり注目されていなかったんです。カンジダ症というと“白いもの”というイメージがありましたが、最近の超高齢社会の進行によって罹患している高齢者が多いことが明らかとなってきました。

最近では前向きに治療が始まっていますが、高齢者で義歯をされている方の中には、この症状を抱えている方も一定数以上いらっしゃる可能性があると思いますよ。

入れ歯による口腔カンジダ症を改善できない現実的な問題とは

堤千明先生

Q3.入れ歯による口腔カンジダ症になった場合、どうしたらいいのでしょう?

堤千明先生:やはり、外して洗う、洗浄液に漬けておくということが大切になってきますね。

ですが、ご自身でなかなか手入れをすることが難しいという方も多く、流水で洗ってそのままつけてしまう方が多くいらっしゃるのも現状です…。

私は、そういった自分の力で洗えない入れ歯を、どう洗浄するかという研究をしています。

里村一人教授:治療としての観点からですが、ある一定以上デンチャープラークのついてしまった入れ歯は、つくり替えるか、粘膜にあたる部分をかなり削って、新しい材料で裏打ちする必要があると思います。

それは、一定以上カンジダ菌で汚染されてしまうと、多少水で洗ったり、ブラッシングしたりしてもすべては取れないからですね。そして、義歯をつけている間にまたカンジダ菌が繁殖してしまうからです。

堤千明先生:ただ、施設に入居されている方には、入れ歯をつくり直すということが難しい方が多いんですね。

とくに、噛み合わせの型を取るとき、強く咬むことができないんです。そのため、不潔なまま使用してしまっているということが、現実的な問題としてあるんです。

今後はこのような方たちにも清潔な義歯を使っていただけるような支援体制の整備に向けた研究活動を行っています。

鶴見大学 歯学部 口腔内科学講座
里村一人教授監修
経歴・プロフィール

昭和63年3月:徳島大学歯学部卒業
昭和63年4月:徳島大学大学院歯学研究科(口腔外科学第一講座)入学
平成4年3月:徳島大学大学院歯学研究科修了 学位取得【博士(歯学)】
平成4年4月:徳島大学助手歯学部(口腔外科学第一講座)
平成7年1月:米国国立衛生研究所 (NIH, National Institute of Dental and Craniofacial Research) Visiting Fellow (長期出張)
平成13年7月:徳島大学講師歯学部附属病院(第一口腔外科)
平成15年10月:徳島大学講師医学部・歯学部附属病院(歯科口腔外科)
平成17年1月:徳島大学准教授大学院ヘルスバイオサイエンス研究部(口腔顎顔面外科学分野)
平成21年4月:鶴見大学歯学部教授(口腔内科学講座)
平成28年4月:鶴見大学歯学部長(併任) ※平成31年3月まで
平成31年4月:鶴見大学副学長(併任)
現在に至る

ドクター詳細ページへ
鶴見大学 歯学部 口腔内科学(口腔外科学第二)講座
堤千明博士(歯学)監修
経歴・プロフィール

鶴見大学歯学部 学部助手

ドクター詳細ページへ
詳細を見る
執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

ページトップへ