【教授に聞く】口内細菌を“0”にしてはダメ!お口の細菌とはどう付き合うべきか

お口の中にどれだけの数の細菌が住んでいるのか意識したことはありますか?

鶴見大学・歯学部・口腔微生物学講座・大島朋子教授にインタビューを行い、悪さをする菌だけでなく、良い働きをしている菌などはいるのか、口内細菌が全身の健康に影響することはあるのかなど伺いました。

すると、驚くほどの細菌の数と種類がいることが判明しました。また、口内細菌とうまく付き合っていくためにはどうしたらいいのかも説明していただきます。

この記事の目次

誰のお口の中にもいる細菌!良い菌、悪い菌の違いは何?

Q1.口腔微生物学とは、どういった分野で、どのような研究をしているのか教えてください

虫歯や歯周病という名前は、皆さんご存知だと思いますが、その主な原因になっていくるのが口の中にいる微生物なんです。

口腔細菌というのは常在している菌なので、その常在性を解析することで、虫歯や歯周病にどう結びついてくるのかを研究しています。

Q2.腸内細菌のように、口内にも善玉菌・悪玉菌はいるのでしょうか?

腸の中の菌ですとビタミンをつくってくれたり、調子を整えてくれたり、免疫を刺激してくれたりと良い働きをすることが分かっているものもいますが、口の中の場合、善玉菌のような存在がいるのかどうか分かっていないんです。

良いことをしようとしている菌も、悪いことをしようとしている菌もいるわけではなく、結果的に虫歯や歯周病を引き起こしていれば、人間が悪玉菌と名付けて呼んではいますけれども、それぞれの菌をどう区別するか決められていないんですよ。

唾液中に1億個!700種類の細菌たち

Q3.口内にはどのくらいの数の菌が、何種類くらいいるのでしょうか?

菌の数は、1mlの唾液中に10の8乗個・1億個くらい。種類は分かっているもので、だいたい700種です。

700種といっても、人によって持っている細菌の種類や数が異なり、統計して約700種いるということになります。

口内細菌が体内へ!全身の健康に影響

Q4.口腔微生物が全身の病気につながることはありますか?

まず、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)が挙げられます。これは、お口の中の細菌が肺に入ってしまうことで起こる症状です。

唾液が肺の方に入ってしまった場合むせて外にはき出すものですが、高齢者の方は反射が落ちているため、大量に口内の菌が入ってしまうことがあります。これが原因で肺炎を引き起こしてしまうという問題があります。

次に、心内膜炎(しんないまくえん)の原因にもなります。

虫歯が長期に放置された状態だと、ストレプトコッカス属という虫歯菌が何らかの刺激などで血中に入ってしまい、心臓のところまで血流に乗って到達することがあります。

すると、心内膜に定着して増えるという性質があるため、心内膜炎になってしまう恐れがあります。

また、糖尿病の悪化につながります。歯周病が長く続いていることで、全身に炎症性の物質・炎症性サイトカインが常にある一定の濃度で出ている状態になります。

そうすると、糖尿病に影響してくるだけでなく、さまざまな病的状態を引き起こしてしまいます。

それから、歯周病で出血しているところから菌が体内に入り、動脈の壁にへばりつくことで、動脈硬化の原因になっているとも考えられています。

口内細菌を“0”にしてはダメ!正しい細菌との付き合い方

Q5.口腔微生物が悪さをしないためには、どのような取り組みがありますか?

それはやはり口腔ケアで、菌数を限りなく少なくするということが大切です。しかし、菌の数を“0”にしてしまってはダメなんです。0になってしまうと、今度は外来の菌がどんどん入ってきてしまい悪さをしてしまいます。

それを防ぐためにはある程度は菌がいてくれた方がいいんですね。外来の菌から口内を守るというのも常在菌の役割なんです。

もちろん、増えすぎると歯周病原菌や虫歯菌が悪さをしてしまうので、それらが増えない程度に数を抑えておくということが非常に重要です。

※次の記事「口内細菌を増やさない歯磨きのタイミング!朝起きたらうがいをするべき?

鶴見大学 歯学部 口腔微生物学講座
大島朋子教授監修
経歴・プロフィール

鶴見大学 歯学部 口腔微生物学講座 学内教授
【略歴】
1993年~2000年:鶴見大学歯学部 助手
2001年~2008年:鶴見大学歯学部 講師
2009年~2014年:鶴見大学歯学部 准教授

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執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。