【教授に聞く】ドライマウスの原因は?何科で見てもらう?併発する病気なども詳しく解説

【教授に聞く】ドライマウスの原因は?何科で見てもらう?併発する病気なども詳しく解説

最近ずっと口が乾いている、口の中がネバつく、乾いたものが食べづらいといった症状で困っているならば、それはドライマウスかもしれません。

今回は、鶴見大学歯学部附属病院 口腔機能診療科准教授 中川洋一(なかがわよういち)先生にドライマウスの原因や受診すべき診療科、併発する病気などを詳しく解説していただきます。

この記事の目次

中川洋一先生に【ドライマウス】について聞いてみた!

Q.1  「ドライマウス」とはどんな症状?

ドライマウスというのは「口が渇いている」という症状です。いろいろな原因がありますが、患者さんが自分で「口が渇いて困るなあ」と思って医療機関を受診すると、「ドライマウス(口腔乾燥)」という診断名がつきます。

Q.2 そもそも唾液はどこで作られるの

口の中には、唾液をつくる組織である唾液腺がたくさん存在しています。

粘膜など口の中全体にある小さな唾液腺を小唾液腺と呼んでいます。それとは別に、大きな唾液腺が三つあります。耳の下(耳下線)、あごの下(顎下腺)、舌の下(舌下腺)、という大唾液腺です。

この大唾液腺と小唾液腺をあわせて「唾液腺」と呼びます。

Q.3 ドライマウスになる原因とは?

原因はたくさんあります。

一つは、唾液腺が壊れて、唾液の分泌量が減ってしまうということです。

もう一つが、唾液は普通に出ているのに、口が開いたままなどで唾液が蒸発してしまうという状態です。

そして、口の中の唾液の「膜」が薄くなってしまうことも原因の一つです。これはどういうことかというと、口に力が入りすぎてしまい、舌と上あごの隙間が狭くなってしまう状態です。

普通であれば、粘膜の上に唾液の「膜」が、ある程度の厚みであるのですが、その「膜」が薄くなると、患者さんとしては「口が乾いた」という感覚が起きます。

また、口の粘膜の感覚が過敏になって、実際には乾いていないのに「乾いた」と感じるということも原因として挙げられます。

Q.4 どうして唾液の量が減ってしまうの?

ドライマウスの原因として多いのは「唾液の量が減る」ということですが、唾液が減る原因としてよく知られているのは自己免疫疾患(自分の体が自分の体を壊してしまう病気)の、「シェーグレン症候群」が挙げられます。

これは、唾液腺と涙腺が壊れて、口が乾くと同時に目も乾いてくるという病気です。ただ、この病気と診断されるのは、ドライマウスの患者さんのうちの10%くらいです。

そのほかには、ストレスがかかったなど、メンタル的なことで唾液が減ることもあります。緊張すると口がカラカラになりますよね?そういう状態が慢性的に続いて唾液が減ることもあります。

あとは薬の副作用や、高齢になって加齢のせいで乾くということもあるかもしれません。

Q.5 シェーグレン症候群で「唾液腺が壊れる」というのは、主にどこの唾液腺のことをさすの?

小さい唾液腺も、大きい唾液腺も、全部壊れてしまいます。

自分の体が自分の体を壊してしまう状態なのですが、リンパ球という免疫細胞が、唾液腺から唾液を分泌する細胞を壊してしまいます。

シェーグレン症候群は厄介な病気で「難病」とされています。難病というのは、原因がわからないために対処法もまだわかっていないという病気です。原因療法がないので、対症療法で対応します。

Q.6 シェーグレン症候群の対症療法とは?

唾液分泌を促す飲み薬を服用する、またはそれにプラスして洗口液を使うとか、ジェルを使うとか、市販されている口腔ケア用品を併用しながら対処していきます。

Q.7 ドライマウスかどうかを、舌などの見た目で判断することはできる?

「乾いている」ということはわかると思います。ただ、なかなか他人と比較することがない部分なので、どれくらいだと乾いているというのはわかりづらいと思います。

医療機関でも、唾液の分泌量を量ったり、患者さんの自覚症状を聞いたりして参考にしながら判断をしますが、見た目も大事にしています。

舌の表面の乾き具合、唇の内側の乾き具合を観察して、乾燥しているかどうかを判断するようにしています。

ご自分でも自覚症状として「乾いている」とわかるはずですが、判断できるかどうかは難しいところですね。

Q.8 ドライマウスのときの口の中の特徴は?

唾液には粘膜を潤す「潤滑作用(じゅんかつさよう)」という役目があります。それがなくなってくると、粘膜の表面がすり減るような、細かい傷ができるようになってきます。

それがどんどん進んでいくと、粘膜が再生されにくくなり、正常な組織の構造を作ってくれなくなるので、例えば舌の表面がつるつるになったりとか、ひび割れができたりします。ひび割れができると、症状が相当ひどい状態です。

よく見られるのは、舌がつるつるになるという状態です。舌の表面には舌乳頭(ぜつにゅうとう)というものがあります。

基本は糸状乳頭(しじょうにゅうとう)というけばけばしたものがありますが、そういう構造がなくなると、舌乳頭萎縮(ぜつにゅうとういしゅく)や平滑舌(へいかつぜつ)と呼ばれる、舌がつるつるした状態になってきます。

そういった症状は、唾液が低下して、口の中が乾燥した二次的な結果として起きるものです。

そうなると今度は、口の中の常在菌「カンジダ」というカビの仲間がいるのですが、カンジダはつるつるしたところに生えにくく、ざらざらしたところに生えやすいです。口の中も傷つくとざらざら状態になるために、カンジダがつきやすくなってしまいます。

そうすると今度は「口腔カンジダ症」になります。これも舌の表面がつるつるになり、赤みも増してくるというような変化が、口腔乾燥(ドライマウス)になると起きやすくなります。

そこまでなってくると、自分で口の中を見たときにもわかり、痛みも出てきます。特に触診のときにヒリヒリするとか、味がわかりにくくなったとか、そういう自覚症状も出てきますので、口の中を見るとともに、自覚症状としてどんな症状が出ているかを感じて、それを伝えて、調べてもらうといいと思います。

Q.9 口が乾いているなと思ったらどこの診療科で受診すればいいの?

まずは…ということであれば、やはり歯科になると思います。

自己免疫疾患であれば血液内科、リウマチ内科、膠原病(こうげんびょう)内科など、内科に専門の先生がいらっしゃるので、そちらに見ていただくというのも一つの手です。

唾液腺の治療は、耳鼻咽喉科の先生も得意なので、耳鼻咽喉科を受診するのもいいでしょう。

ただ、口の中のことですから、歯科で見てもらうのが手っ取り早いかとは思います。

Q.10 ドライマウス外来ではどんな検査をするの?

粘膜を見たり、唾液の分泌量を調べたり、シェーグレン症候群が疑われるようでしたら、判断基準として唾液腺の壊れ具合を見る病理検査や血液検査をしたりといったことはドライマウス外来で行います。

自己免疫疾患の場合、シェーグレン症候群だけではなくて、関節リウマチや強皮症などのいろいろな免疫疾患が合併していることがありますので、シェーグレン症候群が疑われる場合は内科の先生に、一緒に見ていただくというような流れです。

Q.11 ドライマウスと併発する病気はある?

唾液が減ると、歯垢などを洗い流してくれる唾液の「自浄作用」が低下します。また、唾液には抗菌もの質が含まれているので唾液による「抗菌作用」も減ってしまいます。洗い流す作用、菌に対する抵抗が低下してくると、虫歯や歯周病になりやすくなります。また「カンジダ」というカビの仲間が増えると、口腔カンジダ症になりやすくなります。

歯周病・虫歯・口腔カンジダ症に注意するということが大切だと思います。

Q.12 口の渇きが気になる!医療機関を受診した方がいい?

そうですね。病院に行って専門的に調べてもらうことが大切だと思います。

全体の10%ほどがシェーグレン症候群であって、そのほかは難病ではない場合も多いので、病気があるかないかを調べるのが大切なのではないかと思います。

まとめ

今回は鶴見大学歯学部附属病院 中川先生にドライマウスの原因や、ドライマウスの舌の外見的特徴などを詳しくお伺いしました。

原因の一つであるシェーグレン症候群は難病にも指定されているため、口の渇きが気になる場合は、病気の有無も含めてまずはしっかりと調べてもらうことが重要です。

次回は中川先生に、夜中の口の渇き対策や、ドライマウスの人が気をつけるべきことなどをお伺いします。

 

鶴見大学歯学部附属病院 口腔機能診療科
中川洋一学内教授監修
経歴・プロフィール

鶴見大学歯学部附属病院  口腔機能診療科 学内教授

【略歴】
鶴見大学歯学部歯学科 卒業
鶴見大学歯学部口腔外科学第二講座 助手
鶴見大学歯学部口腔外科学第二講座 講師
Department of Oral Biology, University of Florida
鶴見大学歯学部口腔内科学講座 講師
鶴見大学歯学部附属病院口腔機能診療科 准教授
現在に至る

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執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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