【教授に聞く】歯科口腔外科ってどういう診療!?口内炎と口腔がんの見分け方も解説

歯科と歯科口腔外科を掲げている歯医者さんはありますが、歯科口腔外科はどのような診療を行っているか気になっている方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は東京歯科大学 水道橋病院口腔外科 山本信治先生に、歯科口腔外科の診療内容や、近年増えている口腔がんについて詳しくお伺いしました。

この記事の目次

山本信治先生に【歯科口腔外科】について聞いてみた!

Q.1 どんな症状があるときに歯科口腔外科に行けばいいの!?受診で多い症状は?

歯科口腔外科に来院される患者さんの症状で多いのは、やはり「親知らずの抜歯」です。

次に多いのは「口腔粘膜の疾患」で、なかなか治らない口内炎、ベロ(舌)が全体的にヒリヒリする舌痛症・舌炎、口の中がねばねばするという症状、味覚異常、腫瘍などです。

そして、顎関節症などのあごの異常、あごの変形の治療、あごの骨折治療などを主に扱っています。

Q.2 口腔がんって、どこにできるがん?

舌の前3分の2の範囲(舌後方3分の1の範囲は舌根といいます)、下顎の歯肉(歯茎)、上顎の歯肉、口蓋(上顎の、上の歯の裏あたりにある硬い部分)、頬の裏にある頬粘膜(きょうねんまく)、口唇、そして顎関節の部分を「口腔」と呼びます(下顎骨と上顎骨も含みます)。その範囲にできるがんの総称が口腔がんです。

舌にできれば「舌がん」、歯茎にできれば「歯肉がん」、ほっぺたにできれば「頬粘膜がん」、口蓋にできれば「口蓋がん」というように、できる部位によって名前が変わります。それを全部合わせて大きな分類として「口腔がん」といいます。

Q.3 普通の口内炎と、がんなどの病気につながる口内炎の違い

普通の口内炎ですと、ビタミンの不足、疲れ、ストレスによってできますね。これが、アフタ性口内炎といわれるものです。これはいろんな所にできます。ベロ(舌)にできたり、唇にできたり、歯茎にできたり、ほっぺた(頬粘膜)にできたり。だいたい1週間から10日くらいで治ります。

ただ、がんにつながるような口内炎にかんしては、2週間以上治らない口内炎は、やはり注意が必要だと思います。2週間以上続いているかどうかが判断基準となります。

Q.4 2週間以上口内炎が治らなかった場合は、「歯科口腔外科」に受診すればいいの?

私たち歯科口腔外科では、舌、口内炎、腫瘍も専門にしております。大学病院や総合病院といった高次医療機関の、「歯科口腔外科」を掲げている診療科に来ていただければ、精密検査をさせていただいて、よりよい治療に結び付けられると思います。

Q.5 口腔がんの原因と、日ごろから自分でできる予防方法

口腔がんには、三大原因があります。「飲酒」「喫煙」「慢性刺激」ですね。特にベロ(舌)ができやすいです。がんはベロ(舌)の脇の、歯があたる側縁にできやすく、あとはベロ(舌)の下のあたりにできやすいです。

歯並びが悪かったり、あるいは治療されていない虫歯があったり、合わない入れ歯が入っていたり、欠けた銀歯、辺縁の合っていないクラウンなどで、慢性的に刺激が加わったりしますと、最初は口内炎だったものが治らなくて、がん化していくことがあります。基本的には、お酒、タバコを含めて、三大リスク因子といわれています。

Q.6 お酒も口腔がんの直接的な刺激になるの?

アルコールの中に、アセトアルデヒドという酵素があるのですが、研究によって発がん物質の発がんに関与しているといわれています。

またアルコールの度数も影響しています。ビールのような4%~5%とアルコールの濃度が薄いものよりも、日本酒、ワイン、焼酎、ウイスキーと、度数が高くなればなるほど、リスクは高くなります。

特にアルコールと関係しているのは口底部ですね。ベロ(舌)の底のあたり、「口底」と呼ばれるあたりなのですが、ここがアルコールを摂取したときに溜まりやすい、停滞しやすい部分なので、アルコールと口底がんは関係があるといわれています。

Q.7 紙タバコから電子タバコに切り替えたら発がんを抑えられる?

タバコにかんしては、ほかの臓器のがんもそうですが、タバコの中に発がん物質や、発がんを誘発するような物質が含まれているということは知られていると思います。

紙のタバコと電子タバコがありますが、電子タバコにしたことによって発がんのリスクが下げられるといったような医学的な根拠はまだ示されておりません。電子タバコに切り替えたからリスクが下がるということは明らかにはいえないと思います。

Q.8 気になる症状があるけど、大学病院を受診したい場合、紹介状がないと相談できないの?

東京歯科大学水道橋病院では、紹介状のないフリーの方の診療もしております。

かかりつけの先生からの紹介状をお持ちになった方が多い傾向にはありますが、「どこに行ったらいいのかわからない」「まだ引っ越してきたばかりでどうしたらいいかわからない」「インターネットで見てよさそうだったから」ということで来院される方もいらっしゃいますよ。

まとめ

今回は、山本先生に歯科口腔外科の診療内容、近年増えている口腔がんについてお聞きしました。大学病院と聞くと、敷居が高く感じがちですが、東京歯科大学 水道橋病院口腔外科では紹介状がなくても診療を受け付けているとのことでした。

次回は引き続き山本先生に、欠損部補綴(インプラントやブリッジ、義歯など)についてお伺いします。

明海大学 歯学部 病態診断治療学講座
山本信治教授監修
経歴・プロフィール

明海大学 歯学部 病態診断治療学講座 口腔額顔面外科学分野Ⅰ 主任教授
東京歯科大学 口腔顎顔面外科学講座 客員教授

【略歴】
東京歯科大学卒業
東京歯科大学大学院歯科学研究科(口腔外科学専攻) 修了
東京歯科大学口腔外科学第一講座 病院助手
東京歯科大学口腔外科学講座 助手
学命により中国北京大学口腔医学院顎顔面口腔外科講座に研究留学
東京歯科大学口腔がんセンター 講師
東京歯科大学口腔外科学講座 講師
東京歯科大学口腔外科学講座 准教授
神奈川歯科大学大学院歯学研究科歯学教育学講座 准教授
神奈川歯科大学 客員教授 臨床教授
東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座 講師
明海大学 歯学部 病態診断治療学講座 主任教授
東京歯科大学 口腔顎顔面外科学講座 客員教授
現在に至る

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執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

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