笑ったときに、上の歯茎が見えてしまうことを「ガミースマイル」と呼んでいます。「笑顔になると、白い歯が見えるはず」という先入観があるためでしょうか? 「笑うと歯茎が目立つ」というのが、コンプレックスになるケースも多いようです。
こちらの記事では、ガミースマイルに悩んでいる人に向けて、「ガミースマイルの治療法」を解説することにしました。コンプレックスを解消するためにどのような方法があるのか…、ぜひ基礎知識の収集にお役立てください。
この記事の目次
1.ガミースマイルの要因
ガミースマイル自体は単なる個性であり、それ自体が病気というものではありません。ただ、患者さんが強いコンプレックスを抱いている場合は、美容面での治療対象になり得ます。美容面の治療なので、自由診療になります。
さて、ガミースマイルは「笑うと上の歯茎が目立つ」という「状態」を指し示す言葉です。ガミースマイルの要因は、人によっていくつかのパターンにわかれます。要因ごとに治療方針も異なってきますから、まずは「ガミースマイルの主な要因」を確認することにしましょう。
1-1 上顎の骨格が発達している場合
上顎の骨格が大きく発達していると、ガミースマイルの要因になります。上顎がせり出しているので、口を開けたとき「上顎の歯茎」が前面に出てくるわけです。上顎自体が大きいと「唇が上顎を覆いきれない状態」になっていることもあります。この場合、唇の力をゆるめただけで、勝手に口が開き、歯茎が露出する…というケースも考えられます。
1-2 上唇を上げる筋肉が発達している場合
上唇を上げる筋肉が発達していると、「笑ったときに唇を大きく引き上げる力加減」が習慣化してしまいます。本人にその気がなくても、笑顔になっただけで「上の歯茎が露出するほど、上唇を大きく引き上げる力」が働くのです。筋肉の力が強すぎるからです。この場合は筋力の問題であって、「顔のつくりに要因がある人」とは少し事情が違ってきます。
1-3 歯の大きさ・生え方に要因がある場合
歯が短かったり、歯が低い位置に生えていたりすると、笑ったときに歯茎が見えやすくなります。「歯の面積」と「歯茎の面積」を比較したとき、「歯茎の面積」が大きく、結果的に目立ちやすくなる…と考えてください。
1-4 歯茎が発達している場合
歯茎の粘膜が発達して歯に覆いかぶさっていると、ガミースマイルの要因になります。歯茎が大きく盛りあがり、歯の一部を覆い隠すほどの面積になっているわけです。「歯茎の面積が大きい」という意味では、「歯が短いことによるガミースマイル」と似ています。ただし、こちらは「歯の長さは普通だが、歯茎がせり出している状態」です。
2.要因別にまとめる!ガミースマイルの治療法
それでは、要因別に「基本的な治療方法」を確認することにしましょう。ただ、実際には複数の要因が組み合わさっていることもあります。必ずしも、1つの治療法だけでガミースマイルが解消するとは限りません。以下の治療法は、あくまでも「症例を踏まえた目安」として参考にとどめてください。
2-1 上顎が要因のガミースマイル治療法
上顎骨切り術
骨格自体を変える必要があるので、上顎骨の部分切除をおこないます。上顎の縦幅を短くするため、一部を切除してプレートで固定します。手術前に歯列矯正をする必要がある上、手術に際しては1~3週間の入院を要します。
また、術後3か月ほどは流動食・刻み食になり、固定物を摂取することができません。また、上顎骨が固定された後、固定用プレートを抜去する手術のために、1週間ほどの再入院が必要です。
身体への負担が大きく、期間・費用もかさむため、ガミースマイルの美容整形手術の中でも特にハードルが高くなります。また、上顎の縦幅が短くなることから、顔だち自体が変わってしまいます。単に「ガミースマイルを治した」というだけにはとどまりません。
2-2 上唇の筋肉が要因のガミースマイル治療法
粘膜切除術orボトックス注射
治療方針は2通り考えられます。「唇を上げても歯茎が露出しないようにする方針」「唇が大きく上がらないようにする方針」の2種類です。
「唇を上げても歯茎が露出しないようにする方針」ならば、「粘膜切除術」が選択されます。「上唇の裏側」と「歯茎の粘膜」を一部切除した上で縫い合わせるのです。上唇と歯茎が一部縫合されるので、上の歯茎の面積自体が狭まります。唇を上げたとしても、歯茎が大きく露出することはありません。
「唇が大きく上がらないようにする方針」ならば、「ボトックス注射」になります。ボトックスは「A型ボツリヌス毒素製剤」といって、筋肉の緊張を緩める働きがあります。唇を上げる筋肉に作用させれば、筋肉に力が入りにくくなり、唇が上がりにくくなるわけです。注射を打つだけなので、施術時間は5分程度です。術後の腫れなどもほとんどありませんが、永続性はなく、4~6か月ほどで再処置が必要になります。
2-3 歯が要因のガミースマイル治療法
歯冠長延長術or歯列矯正
基本的に、歯の長さが要因であれば「歯冠長延長術」、生え方が要因であれば「歯列矯正」が選択されます。
歯冠長延長術は、「セラミック矯正」と呼ばれる術式に似た方法です。まずは「かぶせ物治療」をするときの要領で歯を削り、さらに歯槽骨の一部も削ります。その上で、もともとの歯より長い「セラミックのかぶせ物」をかぶせて、歯の長さを延長します。「歯の面積」が増えたことで、歯茎が目立たなくなるわけです。ガミースマイルを手早く解消できる方法ですが、前歯を大きく削らなければなりません。前歯の寿命を縮めるという意味では、デメリットも大きい方法です。
歯の生え方に問題があるなら、歯列矯正で問題を解消できることが多いです。左右の歯を1本ずつ抜歯することが多いものの、歯の生える位置がより上になるように、「歯を上に押しこむ歯列矯正」をおこないます。健康な歯にダメージを与えなくて済むので、比較的、歯に優しい治療方針といえます。
2-4 歯茎が要因のガミースマイル治療法
歯肉整形
歯茎が発達しているのが要因ならば、歯肉を切除することでガミースマイルを解消できます。歯・骨に手をつけないので、整形手術としてはダメージ・リスクの少ない方法です。
ただし、歯周ポケットの範囲を超えて歯肉を切除することはできません。多くの場合、4mmほど歯肉を切除するのが限界です。
また、歯の根元部分にある歯肉を切除するので、「重度歯周病の人」「かぶせ物治療をしている人」は適応外です。歯周病を悪化させたり、かぶせ物の根元が露出したりといった問題が起こるからです。
3.まとめ
ガミースマイルの治療法は、要因ごとに大きく異なります。治療期間・負担・リスクなどが違ってきますので、まずは「ガミースマイルの要因は何か」を特定することからはじめましょう。
口の中の手術をおこなう場合は、歯科口腔外科の範疇になります。美容目的の自由診療を実施している歯科口腔外科に相談してみてください。
近年、内容にも記載してありますように、ボツリヌストキシン(ボトックス)の応用が非常に安全な有効性がある医療法とされております。
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歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。