【口腔底癌の基礎知識まとめ】症状・特徴・治療法について

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「口腔がん」の一種である「口腔底がん」をご存じですか?口腔底がんをはじめとする口腔がんには、初期症状はあまりありません。この記事では、症状や治療法など、基礎となる知識をまとめています。どのように口腔底がんに気づいたら良いか、というポイントも押さえておきましょう。

◆目次
1.口腔底がんとは-症状と予防法
2.口腔底がんの分類と特徴
3.口腔底がんの一般的な治療法
4.まとめ

1.口腔底がんとは-症状と予防法

「口腔底」というのは、「口の底にあたる部分」です。
「舌の裏(舌の下)にあたる部分」と言い換えるとわかりやすいかもしれません。
口腔底部分にできるがんなので、口腔底癌と呼びます。

初期症状に気づきにくく、神経が集まる箇所なので手術が難しいケースが多くあります。
しかし、初期のうちに治療を開始すれば、予後(病気の経過)は悪くありません。

2002年に日本頭頸部癌学会が発表したところによると、すべての口腔がんのうち、口腔底がんは9.7%を占めています。
これは、舌がん(60.0%)、下顎歯肉がん(11.7%)に次いで3番目に高い数値です。

1-1.口腔底がんの症状

口腔底がんの特徴的な症状はないため、口腔がん全体で見られる症状を確認しておきましょう。

・口内の痛み
・腫れ
・しこり
・出血
・ただれ
・口臭
・歯がぐらつく

しかし、これらの症状を自覚できる頃には、口腔がんが進行しているケースがほとんどです。

口内に痛みを感じる男性の写真

初期に気づくことは難しいものの、歯磨きをするときに口の中の状態を確認する習慣をつけましょう。
粘膜や舌に潰瘍(かいよう)ができていないか、2週間以上治らない口内炎がないか、気に掛けておくことが大切です。
指で触ってみて、しこりの有無を確認しましょう。

1-2.口腔がんとは

口の中にできるがんのことを「口腔がん」と呼びます。
がんは身体のあらゆる場所に発生する恐れがありますが、口内にもできることがあります。

国立がん研究センターが2013年にまとめた統計によると、がんと診断された患者さんは952,500人(男女計)でした。
そのうち、口腔がんの人は19,000人(男女計)で、がん患者さん全体へ占める割合は、2%ほどです。
しかし、口腔がんが原因で命を落とす人は、毎年数千人いることも忘れてはなりません。

口腔がんには、「舌がん」「歯肉がん(歯茎のがん)」「硬口蓋がん(上顎にできるがん)」「粘膜がん(口内の粘膜にできるがん)」、そして、「口腔底がん」があります。
この中で、最も発症人数が多いのは、舌がんです。
舌がんの患者さんは、口腔がん全体の約半数に昇ります。

口腔がんについて、詳しくは以下の記事も確認してみてください。
【関連記事】口腔がんの種類・特徴をチェック!口の中の健康を守るための基礎知識

1-3.口腔がんにかかりやすい人

飲酒や喫煙の習慣を長期間、続けている人は、口腔がんになる確率が高まるとされています。
20代で口腔がんになる人もいますが、50代以上で患者数が増える傾向にあります。
また、女性より男性の方が、患者数が多いというデータもあります。

そのほか、口内が不衛生、虫歯を治療しないで放置している、栄養不良なども口腔がんの発症原因として考えられています。

【参考】国立がん研究センター

1-4.口腔がんの予防法

重要なのは、飲酒や喫煙を控えることです。
ほかには、以下の点に気をつけるとよいとされています。

・バランスのよい食生活を心がける
・丁寧な歯磨きを習慣付け、口の中を清潔にする
・虫歯を放置せず、治療する

タバコを控える男性の写真

2.口腔底がんの分類と特徴

口腔底がんの腫瘍には、様々な種類があります。
できた場所によって、がん細胞が進展する部位が変わるという研究もあります。

2-1.口腔底がんの分類①~がんの発生部位

口腔底がんは、発生部位によって2種類に分けることができます。
1つ目は「正中型」、2つ目は「側方型」で、正中型を発症する人が多くなっています。

どちらの型も、口腔底がん患者さんのうち、70%に舌下腺(※1)や内舌筋(※2)への腫瘍の進展がみられという報告(※3)があります。
しかし、正中型の方が、内舌筋やオトガイ舌筋への進展が多いという傾向があるようです。

※1舌下腺:口腔底の粘膜のさらに下にある唾液腺
※2内舌筋:舌の形を変えることのできる筋肉
※3この報告は、「第26回日本口腔腫瘍学会総会・学術集会」で報告されたものであり、対象とした症例は、口腔底がん20例で切除手術をおこなった際に得られたデータを元にしています。

正中型

腫瘍ができた場所が、以下に当てはまれば正中型となります。

・下顎の前歯の裏側周辺にある
・犬歯や第一小臼歯より内側にある
・歯列に近い方の口腔底にある

側方型

腫瘍ができた場所が、以下に当てはまれば側方型となります。

・下顎の奥歯の内側にある
・のど側に近い方(奥側)の口腔底にある
・左右どちらかに寄っている

2-2.口腔底がんの分類②~腫瘍の特徴で分類

口腔底がんには、腫瘍の特徴によって区別する分類方法もあります。
腫瘍の特徴によって「リンパ節に転移しやすいかどうか(※)」が変わってきます。

以下の分類は、口腔底がんのほか、舌がん・頬粘膜がん(きょうねんまく-がん)といった口腔がんを区別する上でも役に立ちます。

※リンパ節への転移確率は、症例の多い舌がんのデータです。口腔底がんにおいても同様の傾向が見られるという報告があるため、参考値として掲載しています。

表在型

口内の粘膜の表面で腫瘍が発達し、厚さ5mm以内にとどまっているものを指します。
粘膜の表面が荒れ、ただれたような見た目になることが多いです。
頸部リンパ節に転移する確率は、4.9%となっています。

外向型

腫瘍が、身体の外側に向けて大きくなっていくものを指します。頸部リンパ節に転移する確率は12.6%です。

腫瘍の外見的特徴によって、外向型はさらに3種類に分類できます。

①白板型

白く膨らんだように見える腫瘍

②乳頭型

形が定まっておらず、表面に細かな凹凸が多くあり、隆起のある腫瘍

③肉芽型

表面がなだらかに盛り上がっている腫瘍

内向型

腫瘍が、身体の内側に向けて大きくなっていくものを指します。
頸部リンパ節に転移する確率は24.9%で、もっとも高い型です。

腫瘍の外見的特徴によって、内向型もさらに3種類に分けることができます。
ちなみに、潰瘍型・膨隆型の腫瘍は、頸部リンパ節への転移確率が50.5%と突出しており、予後が悪い傾向です。

①びらん型

広く、薄く、内側にへこんだ腫瘍

②潰瘍型

内側にえぐれていく腫瘍

③膨隆(ぼうりゅう)型

内側に拡大していく、できものを生じる腫瘍

【参考1】口腔がんの浸潤:マクロ・ミクロ・モレキュラー「臨床型分類としてのYK分類」
【参考2】日本がん治療学会「口腔がん」

3.口腔底がんの一般的な治療法

次に、治療方法を確認していきましょう。
口腔底がんの治療法は、以下のポイントによって、手術の規模が変わってきます。

・腫瘍の大きさ
・リンパ節に転移しているかどうか
・下顎骨への浸潤(しみ込むようにがん細胞が広がっていること)があるかどうか

リンパ節とは、身体の中を巡るリンパ管に配置されている、節(ふし)です。
リンパ管を流れる老廃物を濾過(ろか)する役割があり、様々な臓器とつながっています。
このリンパ節にがん細胞が転移するということは、リンパ管に乗って全身に移動していることを示します。

口腔底がんの手術の説明をする医師の写真

3-1.口腔底がんを治療する際の基本は、外科手術

口腔底がんの根治を目指すためには、外科手術をおこなうのが基本です。
加えて、化学療法・放射線治療を組み合わせる場合もあります。

腫瘍が2cm程度までなら「口腔底部分切除(こうくうてい-ぶぶんせつじょ)」、2cmを大きく超えるようなら「口腔底全切除(こうくうてい-ぜんせつじょ)」がおこなわれます。

3-2.頸部リンパ節への転移があるケース

頸部リンパ節に転移している場合、「頸部リンパ節郭清(かくせい)」がおこなわれます。
リンパ節郭清とは、リンパ節を切除することです。
腫瘍が大きい場合(目安は2cmを大きく超える場合)は、リンパ節転移が見られなくても、予防のために切除することがあります。

頸部リンパ節への転移が認められる場合、かつては「コマンド手術」が一般的でした。
コマンド手術とは、口腔組織・下顎骨・頸部リンパ節をまとめて切除する術式です。

しかし、近年は下顎の骨を温存し、口腔組織と頸部リンパ節だけを切除する「プル・スロー・オペレーション」が基本になっています。

3-3.腫瘍が下顎歯肉・下顎骨に浸潤しているケース

腫瘍が「下顎歯槽の歯肉(下顎の歯茎)」「下顎骨」にまで浸潤している場合、「下顎合併切除」が必要になります。
どの程度まで浸潤しているかによって、「辺縁切除」か「区域切除」のどちらかの方法を選択します。

顎の骨を切除するので、顔の変形、会話や食事がしにくくなることが考えられます。

下顎辺縁切除

下顎骨の上部をえぐるように切除する方法です。
下部は切除しないので、下顎の骨が二つに分断されることはありません。

下顎区域切除

下顎の一部を完全に切除する方法です。
下顎の骨が二つに分断されることになります。
腫瘍が「骨髄」または「下顎骨周辺の深い部分」まで浸潤した場合、区域切除となります。

【参考】日本がん治療学会「口腔がん」

4.まとめ

口腔がんは「肉眼で発見できる部位にできるがん」でありながら、早期発見が難しいといわれています。
実際、口腔底がんが発見されたとき、「受診時にはすでにリンパ節転移が見られた」というケースが多いのが現状です。

少しでも術後の後遺症を減らし、QOLを維持するためには、何としても早期発見することが重要です。
日ごろから口の中の環境に気を配り、異変を感じるようであれば、すぐに歯科医院・歯科口腔外科を受診するようにしましょう。

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関するお悩み解決をサポートするべく、各お悩みに関する症状・原因・治療内容などのお役立ち情報を掲載。お悩み解決コラムの全記事を歯科医師が監修しています。

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