虫歯や歯周病の予防に必要な対策は何か?

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デンタルフロスを使えば、虫歯や歯周病リスクは下がりますか?
使っている人は使わない人よりもリスクが下がるのは間違いないですし、きちんとしたデータも出ています。フロスや歯間ブラシ、電動歯ブラシ、ウオーターピックも、基本的に清掃器具を使って悪いことはないのでどんどん使ってください。 ただし、使用法を間違えていたり、やりすぎて歯茎が下がってしまったりすると、歯を削ることになりますので、かかりつけの先生によく相談してみてください。特に電動歯ブラシは電気で動くものすべて電動歯ブラシと呼んでいるので、おすすめできないものもあります。 予防の基本は歯医者に行くことよりも、毎日の歯磨きをどれくらいきちんとできるかです。歯磨きの仕方や、補助器具の使い方を歯医者に聞きに行く、それでご自分の歯磨きできれいな状態が保てるなら言うことなしです。それでも清掃できないところは歯医者でお掃除してもらいましょう。 歯科医院はもちろん病気を治すところではありますが、どういう生活習慣、歯磨きのやり方、使用器具を使えば病気にならないで過ごせるかを相談するところでもあります。 病気を治してハイ終わりではなく、今後病気にならないためにどうすればいいかをアドバイスして、患者さんが健康に生活する手助けをする―。地域の患者さんの生活に寄り添うのが歯科医師の仕事だと思います。
患者さんにとってどういう手順で行う予防が理想的ですか?
手間暇を考えなければですが、日頃の磨き残しを確認する染め出し、歯周ポケットや顎の骨がどれくらい減っているかの検査―。口腔内写真を撮って、実際に歯茎のラインが下がっていないか、腫れていないかを患者さんにも見てもらいます。目視と数字で実感してもらえれば、治そうというモチベーションに繋がりますから。ここまではお口の状態確認です。 それから、虫歯や歯周病のリスクを上げている原因の追究と改善です。口の中に起こっていることは今までの生活の結果なので、食生活に関して1週間ほど朝昼晩と何を食べたか書いてきてもらいます。砂糖の摂取量と間隔、睡眠時間はどれくらい取っているかも把握をします。 例えば、ホールケーキ1個を食べるよりも、1時間ごとに1個小さいチョコを食べたほうが虫歯になりやすいのが実情です。食事という外的要因と同じくらい、体質のほうも重要です。唾液が正常かどうかも大きく関わってきますから、保険外になりますが唾液検査も受けてもらいたいです。
アメリカでは「CAMBRA(キャンブラ)」と呼ばれる新しい虫歯の予防法が生まれたと聞きました
一昨年くらいから日本の歯科でも大きく取り上げられています。全米の歯科大学65校中40校が採用しています。リスクの段階を区分けして、それに合わせた予防手順を行っています。5歳以下の子どもの場合、2番目に高いリスクだと病院で唾液検査、フッ素塗布、シーラント、3カ月に1回は定期検診、1年に一度はレントゲン撮影などを行います。効果の高い予防法ですが、「やる気」が必要になります。
先生は最初から予防治療に力を注いでいたのですか? 患者さんに予防意識を浸透させるために苦労した点はなんですか?
開業した頃は予防よりも痛いから治しに来る患者さんがすごく多かったので、「メンテナンス」という発想も全然なかったです。ただ、「どうやって歯を長保ちさせるか」を考えるうちに予防に力を入れる必要を感じました。 予防治療を理解してもらうのは、今でも苦労しています。今まで治療に来ていた患者さんは痛いのを治してもらうためだけが目的なので、資料を見せて予防の大切さを伝えてもなかなか受け入れてもらえないです。そこは今苦しんでいるところです。   予防治療をメインに行うことで、患者さんの歯を長保ちさせることができる―。予防治療という困難な道を選ぶ濱窪先生の姿には、歯科医師としての矜持を感じ取ることができました。ただ、全ての患者さんに予防意識を浸透させることは難しいのが現状です。私たち一人ひとりが、自分の大切な歯を守ることをもっと自覚しなければならないのです。

濱窪洋平先生による動画メッセージ