歯が溶ける酸蝕歯とは?原因を突き止めて悩みを解消

歯が溶ける酸蝕歯とは?原因を突き止めて悩みを解消

虫歯ではないのに、何だか歯の様子がおかしい…と悩んでいませんか? もし、次に挙げるような悩みをお持ちなら、原因は酸蝕歯かもしれません。

・歯が黄色っぽく変色してきた
・前歯の先端が透けてきた
・歯にツヤがなくなり、表面がざらつく
・熱いもの、冷たいものがしみる
・歯に不自然な窪みができている

原因を取りのぞかないと、酸蝕歯はどんどん進行してしまいます。また、酸蝕歯によって起きた変化は自然治癒するものではないので、歯医者さんで治療を受ける必要があります。しかし、軽度の酸蝕歯であれば生活習慣などを改善するだけでも解消する場合があります。
こちらの記事では、酸蝕歯の治療法・原因を解説していますので、ぜひ、参考にしてみてください。

【関連記事】酸蝕歯を予防する!白く輝く歯を守るための生活習慣を解説

この記事の目次

1. 酸蝕歯を治したい!歯医者さんで実施する治療法は?

酸蝕歯の症状が見られる場合、歯医者さんに相談する必要があります。「本当に酸蝕歯なのかどうか」を診断してもらうことはもちろん、酸蝕歯であれば「原因の特定」「症状を改善するための治療」をする必要があるからです。

この章では、歯医者さんで行う酸蝕歯の治療法について紹介していきます。

1-1 酸蝕歯は、歯の表面が溶けていく症状…!

「歯が酸で溶ける」という事実は、広く知られています。虫歯菌がつくる酸で歯が溶けてしまうと、その歯が虫歯になるわけです。

しかし、歯を溶かすのは、虫歯菌がつくった酸だけではありません。酸性の物質であれば、どんなものでも歯を溶かす恐れがあります。「虫歯以外の原因で歯が溶けた状態」を酸蝕歯と呼んでいます。

1-2 軽度の酸蝕歯は、進行を止めるだけでもOK!

「わずかに歯の表面がざらざらしている」「歯の先端が少しだけ透けて見える」などの軽度の酸蝕歯は、治療をしない場合も多いです。その程度ならば、とりあえず進行が止まれば実害はありません。原因となっている習慣(食生活など)を特定し、その原因を取りのぞけば十分でしょう。

この場合、原因となる習慣を改善したあと、定期的に歯医者さんを受診し、「進行が止まった」と確認できれば問題ありません。ただ、再度進行したとき早期対応できるように、定期健診は受けたほうが良いと思います。

1-3 象牙質が露出しているなら、治療が必要

エナメル質が溶けて、象牙質が露出しているようなら、治療が必要になります。食習慣・生活習慣を改善して進行を抑えると同時に、溶けて欠損した部分を補う治療をおこないます。重症度に応じて治療法が変わってきますが、一般には以下のような治療法が選択される傾向にあります。

コンポジットレジン充填

歯の表面に窪みができている場合、その窪みを埋める必要が出てきます。そこで、虫歯治療と同じように、欠損部分を詰め物で埋めるわけです。コンポジットレジンは虫歯治療に用いられる白い詰め物なので、基本的には「虫歯治療と同じようなもの」と考えて問題ありません。

フルクラウンによる治療

歯の欠損が大きい場合、かぶせ物を使った治療をおこないます。これは「神経まで達した虫歯の治療」とほぼ同じ治療法になります。場合によっては歯の神経を抜き、外側をクラウン(かぶせ物)で覆う方法です。

ラミネートベニアによる治療

主に、前歯の酸蝕歯を美しく治したい場合に採用する方法です。歯の表面を0.5mmほど削って、白い板を貼りつけます。ネイルチップのようなイメージで、歯の表面を覆うと考えてください。見た目重視の治療法なので自由診療となりますが、「酸蝕歯による前歯の黄ばみが気になる」といったニーズに応えてくれる方法です。

2.酸蝕歯になる原因を詳しくチェック!

歯の表面には「エナメル質」が存在します。このエナメル質が溶けはじめるのは、酸性の度合いが「pH5.5」になったときです。「pH(ペーハー)」は酸性・中性・アルカリ性の度合いを示す単位で、数字が低いほど酸性、高いほどアルカリ性を意味します。

2-1 食べ物・飲み物の酸で歯が溶けてしまう!?

さて、エナメル質が溶けはじめる「pH5.5」というのは、どれくらいの酸性度だと思いますか? まずは、一般的な飲食物のおおよそのpHをお伝えすることにしましょう。「酸味があるものは酸性である」という認識から、多くの飲食物が酸性であることは想像がつくと思います。私たちがふだん飲食しているものは、いったい、どれくらいのpHなのでしょうか?

《身近にある飲食物のpH》
レモン:pH3.3~4.0
リンゴ:pH3.9~4.5
炭酸飲料:pH2.6~3.4
黒酢ドリンク:pH3.3~4.0
ワイン:pH2.8~3.6
ビール:pH3.8~4.1

参照URL:https://www.lion-dent-health.or.jp/topics/pdf/okuchi_vol6.pdf

このように、ふだん何気なく口にしている飲食物のpHを確認してみると、pH5.5を割り込んでいるものがたくさんあります。pHは低いほど酸性ですから、上記の飲食物はすべて「歯を溶かすレベルの酸性」ということです。

1-2 唾液の働きである程度は防げるけれど…

ご存じのとおり、酸性の食品を口に入れたからといって、すぐに歯が溶けることはありません。柑橘類(かんきつるい)・炭酸飲料などを摂取していても、健康的な歯をしている人はたくさんいます。

すぐに歯が溶けないのは、唾液が酸を中和しているからです。食事を終えれば飲食物は入ってきませんから、あとは唾液が酸を薄めて口腔内を中性に近づけてくれます。

しかし、「食事の時間を決めずにだらだらと何かを食べ続ける」「夜、強い酸性の飲食物を摂取して、口をゆすいだりせずに寝る」などの習慣を繰り返すと、唾液による中和が追いつかなくなってしまいます。そうなると、だんだんと歯の表面が溶けて、「酸蝕歯」と呼ばれる症状が起きるわけです。

1-3 酸蝕歯の主な原因まとめ

飲食物に含まれる酸で酸蝕歯を起こすことも多いですが、原因はそれだけではありません。そこで、以下に酸蝕歯の主な原因をまとめることにしましょう。

・炭酸飲料・スポーツドリンクなどの清涼飲料水をよく飲む
・柑橘類など、酸味のあるフルーツをたくさん食べる
・酢漬け・梅干しなど酸味の強い食品を頻繁に食べる
・ワイン・ビールなどの酒類を就寝前に飲む習慣がある
・黒酢などの酢類を頻繁に飲んだり、食べたりする
・逆流性食道炎などで、胃液が口に上がってくることが多い
・摂食障害・つわりなどで嘔吐を繰り返している
・酸性ガスを吸引するような職場で働いている

飲食物のほか、胃酸によって酸蝕歯になることもあります。胃酸というのは結局のところ塩酸です。胃酸は「pH1~1.5」程度の強い酸性を示します。食事の直後なら「pH4~5」くらいまで薄まりますが、それでも「pH5.5」を割り込んでいます。嘔吐を繰り返すことは、歯のためにもよくありません。

次に「酸性ガスを吸引する職場」ですが、これは「ガラス細工の工場」「メッキ工場」が該当します。これらの職業に就いている場合、酸蝕歯は一種の職業病といえます。

また、飲食物の影響だけですぐに酸蝕歯になる心配もありません。ただし、「だらだらと長時間にわたって飲食を続ける」「長時間、口に含むような食べ方・飲み方をする」「黒酢ダイエットなど、特定の酸性食品を頻繁・多量に摂取する」など、一部のケースでは一定のリスクがあると理解してください。

3.まとめ

酸蝕歯は、「酸性の飲食物」「食習慣」「嘔吐」などの要因で生じる「歯の溶解」です。早期に手を打てば「生活習慣の改善」だけで対応できることもありますから、異変を感じたら早めに歯医者さんを受診するようにしましょう。

また、酸蝕歯の進行を止めるためにも、「酸性食品をだらだらと長時間にわたって食べ続ける習慣」は控えるようにしてください。口の中が酸性になっていると、酸蝕歯だけでなく虫歯のリスクも上がってしまいます。

 

 

先生からのコメント

暑いと清涼飲料水などさっぱりした飲み物が恋しくなりますね。しかし要注意ですよ!虫歯の原因は酸です!炭酸、乳酸、柑橘の果物などなど・・・。いくら糖分が入っていない炭酸水でも、低phの飲み物ですから非常に危険です。くれぐれもお気を付けくださいませ!

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

ページトップへ