親知らずを抜いた後、「いつから食事をしていいの?」「何を食べれば傷口に負担がかからない?」と迷う方もいるでしょう。
親知らず抜歯後の食事では、傷口を保護している血餅をできるだけ乱さず、頬や舌を噛んだり、やけどをしたりしないことが大切です。
基本的には、局所麻酔によるしびれが十分に取れてから食事を始めます。抜歯当日から数日は、やわらかく刺激の少ない食品を選びましょう。
ただし、抜歯の難易度や麻酔方法、持病などによって注意事項は異なります。実際に抜歯を受けた歯科医院から指示を受けている場合は、その内容を優先してください。
この記事の目次
1.親知らず抜歯後の最初の食事について
1-1 最初の食事は麻酔によるしびれが取れてから
親知らずを局所麻酔で抜歯した場合は、唇、頬、舌などにしびれが残ることがあります。
食事は、基本的に麻酔によるしびれが十分に取れてからにしましょう。岡山大学病院も、唇や頬を誤って噛む危険があるため、食事は麻酔が切れてから行うよう案内しています。
麻酔が切れるまでの時間は、使用した薬剤、麻酔方法、治療部位などによって異なります。2~3時間程度で感覚が戻る場合もありますが、さらに長く続くこともあるため、時間だけで判断しないことが大切です。
水分については、歯科医師から制限を受けていなければ、脱水にならないよう少しずつ取ります。
ただし、抜歯直後は次のような飲み方を避けましょう。
・熱い飲み物を飲む
・ストローで強く吸う
・勢いよく口へ流し込む
・飲んだ後に強くブクブクうがいをする
唾液へ少量の血が混じる程度は、抜歯後にみられることがあります。口の中が血の味になったからといって、頻繁にうがいをしないようにしましょう。
1-2 麻酔が残っている状態で食事をするリスク
◆頬や舌を噛む可能性がある
麻酔が効いている間は、唇、頬の内側、舌などの感覚が鈍くなっています。
その状態で食事をすると、食べ物と一緒に頬や舌を噛んでも気付かず、粘膜を傷つける可能性があります。
特に下顎の親知らずでは、麻酔によって下唇や舌など広い範囲がしびれる場合があります。
しびれが残っている間は、無理に食事をしない方が安全です。
◆熱い食事でやけどをする可能性がある
麻酔によって口腔内の感覚が低下していると、熱さにも気付きにくくなります。
スープ、お茶、コーヒーなどは、麻酔が残っている状態では熱すぎることに気付かず、口腔粘膜をやけどする可能性があります。
しびれが取れた後も、抜歯当日は熱々の料理を避け、常温からぬるめの食品を選ぶとよいでしょう。
1-3 食事を始めるまでに注意すること
◆ガーゼで圧迫止血する
抜歯後は、歯科医院でガーゼを噛むよう指示されることがあります。
これは抜歯した部分を圧迫し、止血するためです。
噛む時間は、抜歯の状態や歯科医院によって異なります。指定された時間はガーゼをしっかり噛みましょう。
ガーゼを外した後も鮮血が流れるような出血が続く場合は、清潔なガーゼを傷口に当て、20~30分程度しっかり噛んで圧迫します。日本口腔外科学会も、抜歯後に出血がある場合は、清潔なガーゼなどを噛んで圧迫止血するよう案内しています。
それでも出血が止まらない、口の中に大きな血の塊が繰り返しできる場合は、抜歯した歯科医院へ連絡してください。
◆鎮痛薬は指示どおり服用する
親知らずの抜歯後は、麻酔が切れてくると痛みが出る場合があります。
歯科医院から「麻酔が切れる前に鎮痛薬を飲む」よう指示されることもあります。
ただし、薬の種類や患者さんの全身状態によって服用方法は異なります。
処方された薬は、指示された用法・用量を守りましょう。
市販薬を追加で使用する場合も、同じ成分が重複する可能性があるため、自己判断で併用せず歯科医師や薬剤師へ確認してください。
2.抜歯後の食事での注意点
2-1 ドライソケットとは
親知らず抜歯後に注意したい合併症の一つが「ドライソケット」です。
歯を抜くと、抜歯した穴には血液がたまり、血餅と呼ばれる血の塊が作られます。この血餅は、抜歯窩を保護しながら治癒が進むために重要です。
ドライソケットは、血餅が十分に形成されなかったり、早い段階で失われたりして、抜歯窩の骨が露出し、強い痛みを生じる状態です。
通常の抜歯後でも、痛みや腫れは2~3日程度まで強くなる場合があります。
一方、ドライソケットでは、いったん落ち着くと思われた時期に痛みが強くなることがあり、一般に抜歯後3~5日程度で症状が現れることがあります。
次のような場合は、抜歯した歯科医院へ相談しましょう。
・抜歯から数日たって痛みが強くなった
・鎮痛薬を飲んでも強い痛みが続く
・耳やこめかみまで響くように痛む
・口の中に強い不快な味や悪臭がある
・発熱や全身のだるさがある
・腫れがいったん落ち着かず、さらに強くなっている
ドライソケットは自宅で血餅を作り直そうとするものではありません。歯科医院で抜歯窩の状態を確認し、必要な処置を受けます。
2-2 抜歯直後に避けたい飲食物や食べ方
◆アルコール類
抜歯直後の飲酒は避けましょう。
アルコールは出血や術後の回復に影響する可能性があり、鎮痛薬や抗菌薬などとの組み合わせにも注意が必要です。
少なくとも抜歯後48時間は飲酒を避けるよう案内している医療機関もあります。実際には抜歯内容や処方薬によって異なるため、担当歯科医師の指示に従ってください。
◆硬い物や細かく砕ける物
せんべい、ナッツ、硬いパンなど、強く噛む必要がある食品は抜歯直後には適していません。
硬い食品は傷口へ物理的な刺激を与えるほか、細かな破片が抜歯窩へ入り込む場合があります。
最初の数日は、無理なく噛めるやわらかい食品を選びましょう。
◆ストローなどで強く吸う
抜歯直後は、ストローを使って強く吸うことを避けます。
強い吸引によって、抜歯窩を保護する血餅が乱れる可能性があるためです。
吸い口の付いたゼリーパウチなども、強く吸い込む食べ方は避けましょう。
うどんやラーメン自体が禁止というわけではありません。熱くない状態にし、強くすすらず、やわらかくして少量ずつ口へ運べる状態であれば、回復に合わせて食べられる場合があります。
◆熱い物や刺激の強い物
抜歯当日は熱い料理や飲み物を避けます。
辛い料理、強い酸味がある物などは、傷口に触れると痛みを感じることがあります。
刺激を感じたからといって、強くブクブクうがいをすることも避けましょう。
抜歯当日は頻繁なうがいを控え、翌日以降は歯科医院の指示に従って優しく口をすすぎます。
◆喫煙・電子たばこ
喫煙や電子たばこは、抜歯後の治癒を妨げる可能性があります。
特にドライソケットなどの術後合併症を防ぐため、抜歯後はできる限り禁煙しましょう。少なくとも48時間は喫煙を避けるよう案内している医療機関があります。
3.抜歯後に食べやすいもの
親知らずを抜いた当日から数日は、やわらかく、熱すぎず、刺激が少ない食品を選びます。
無理に普段どおりの食事をする必要はありません。
一方で、水分や栄養をまったく取らない状態が続かないよう、食べられるものから少しずつ取りましょう。
3-1 豆腐や卵料理
豆腐はやわらかく、強く噛まずに食べやすい食品です。
冷ややっこだけでなく、刺激の少ない湯豆腐、豆腐入りのやわらかい煮物なども選択肢になります。ただし、熱い状態では食べないようにしましょう。
卵も、スクランブルエッグ、茶碗蒸しなど、やわらかく調理すると食べやすくなります。
抜歯した側を避け、反対側でゆっくり噛みます。
3-2 スープや飲み物
ポタージュなど、具材が細かくやわらかいスープも食べやすい食品です。
ただし、麻酔が切れるまでは熱い物を避け、麻酔が切れた後も熱すぎない温度にします。
スムージーを飲む場合は、ストローを使わず、コップから少しずつ飲みましょう。
また、ベリー類やキウイなど種の多い食品を使用すると、細かな種が抜歯窩へ入り込む場合があります。抜歯直後は、種や粗い繊維が少ないものを選ぶ方が食べやすいでしょう。
3-3 ゼリーやヨーグルト
食欲がないときは、スプーンで食べられるゼリーやヨーグルトなども選択肢になります。
吸い口付きパウチから強く吸うのではなく、容器へ出してスプーンで食べるとよいでしょう。
ナッツ、種、硬い果肉などが入った製品は、抜歯直後には避けた方が無難です。
糖分を多く含む食品を何度も長時間口にすることは、むし歯のリスクにもつながるため注意しましょう。
3-4 おかゆややわらかい麺類
おかゆ、やわらかく炊いたご飯、マッシュポテト、よく煮たパスタなども、抜歯後に食べやすい食品です。
おかゆは熱い状態で食べず、少し冷ましてから食べましょう。
麺類を食べる場合も、強くすすらず、短くして少量ずつ口へ運ぶと傷口への負担を減らせます。
食事を通常の状態へ戻す時期に明確な一律の決まりはありません。
痛み、腫れ、口の開けやすさなどを確認しながら、無理なく噛める食品へ少しずつ戻していきます。
4.まとめ
親知らず抜歯後の食事は、基本的に局所麻酔によるしびれが十分に取れてから始めます。
麻酔が残っている間に食事をすると、頬や舌を噛んだり、熱い食べ物でやけどをしたりする可能性があります。
抜歯当日から数日は、豆腐、卵料理、おかゆ、ヨーグルト、ゼリー、マッシュポテトなど、やわらかく刺激の少ない食品を選びましょう。
抜歯直後は、次の行為を避けることが大切です。
・強くブクブクうがいをする
・ストローなどで強く吸う
・熱い物を食べたり飲んだりする
・硬い物や細かく砕ける物を食べる
・飲酒する
・喫煙や電子たばこを使用する
・傷口を舌、指、つまようじなどで触る
抜歯後は血餅が傷口を保護しながら治癒が進みます。強いうがいや吸引などで血餅が失われると、ドライソケットなどの合併症につながる可能性があります。
また、縫合してある場合も、糸や傷口を舌や指で繰り返し触らないようにしてください。
少量の血が唾液へ混じる程度は抜歯後にみられることがありますが、清潔なガーゼで圧迫しても出血が止まらない場合は、抜歯した歯科医院へ連絡しましょう。
抜歯から数日後に痛みが急に強くなった、悪臭や不快な味がある、発熱した、腫れが悪化したといった場合も受診が必要です。
特に、腫れによって息苦しい、飲み込みにくいといった症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
抜歯後の食事やセルフケアは、抜歯の難易度や全身状態によって異なります。実際に処置を受けた歯科医師から個別の指示がある場合は、その内容を優先しましょう。
【参考サイト】
・公益社団法人 日本口腔外科学会「歯を抜いたがあとの治りが悪い」
https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/ha/naorigawarui/
・公益社団法人 日本口腔外科学会「手術、手技に関して」
https://www.jsoms.or.jp/public/disease/setumei_syujyutu/
・国立大学法人 岡山大学 顎口腔再建外科学「親知らず」
https://www.cc.okayama-u.ac.jp/~saiken/desc07.html
・北海道大学歯学部 口腔診断内科「抜歯(智歯、親不知)について」
https://www.den.hokudai.ac.jp/kouge1/case/oralsurgery/55
・University College London Hospitals NHS Foundation Trust「Dental extractions: post-operative instructions」
https://www.uclh.nhs.uk/patients-and-visitors/patient-information-pages/dental-extractions-post-operative-instructions
・Kingston and Richmond NHS Foundation Trust「Dental extraction after-care」
https://www.kingstonandrichmond.nhs.uk/patients-and-families/patient-leaflets/dental-extraction-after-care-day-surgery-unit/submit/37072
・NHS「Wisdom tooth removal」
https://www.nhs.uk/tests-and-treatments/wisdom-tooth-removal/
・American Dental Association「Dry Socket」
https://www.ada.org/sitecore/content/ADA-Organization/ADA/MouthHealthy/home/all-topics-a-z/dry-socket
1980年 岐阜歯科大学 卒業
1980年 (医)友歯会ユー歯科 箱根、横浜、青山、身延の診療所に勤務
1984年~1994年 アクアデルレイ ダイビングショップ 非常勤スタッフ
1985年 コージ歯科 開業
1996年 日本大学松戸歯学部生化学教室研究生
~2002年 歯学博士
2014年 昭和大学 客員講師
現在に至る
電話:03-3601-7051

執筆者:
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