差し歯の寿命を知りたい!交換時期・費用、長持ちさせる方法は?

差し歯の寿命を知りたい!交換時期・費用、長持ちさせる方法は?

「差し歯」は、人工の歯を付ける治療方法です。虫歯やケガで歯がほとんど無くなってしまったとき、歯の根っこが残っていればその上に土台を設置し、土台を支えとして人工の歯を被せます。

材質や箇所により10〜20年近く使い続けることができますが、歯に負担がかかり、口腔内の状態が悪い場合には差し歯の寿命は短くなってしまいます。

差し歯の寿命や費用など種類ごとの特徴のほか、寿命を延ばすためにできることも紹介します

この記事の目次

1.差し歯の寿命と特徴!種類ごとに解説

差し歯の材質により寿命は異なり、保険適用で作製できるものと自由診療のものがあります。費用負担は大きくなりますが、自由診療の材質のほうが長い傾向です。治療するのは、見た目のより気になる前歯なのか、噛みしめる力がかかりやすい奥歯なのか。自分のニーズを踏まえ検討しましょう。次に紹介する素材のほか、それらを組み合わせ、複数素材の長所を生かした差し歯もあります。治療前に、歯医者さんでメリット・デメリットをよく確認すると良いでしょう。

1-1 金属

平均年数:約7年 ※保険適用

費用負担を抑えられるメリットがありますが、銀などで作製した差し歯は自然劣化するのがデメリットです。歯の補綴物として使われた金属の劣化による寿命は7〜10年。金属が劣化すると、隙間から虫歯ができたり、根が傷んできてしまったりといったトラブルが起こりやすくなります。金属アレルギー対策としては、奥歯であればチタンなどアレルギーを起こしにくい素材を選ぶことも可能です。

1-2 硬質レジン

平均年数:約7年 ※保険適用

硬質レジンというのはプラスチックのことです。メタルコアと呼ばれる金属の土台を作って、その上に硬質レジンと呼ばれる金属にプラスチックを貼りつけて作製します。色味が白く、前歯、犬歯には保険適用されるため費用を抑えられるほか、柔軟性があるので噛んだときの衝撃を緩和して歯への負担を下げる利点があります。しかし、柔らかい分すり減りやすく、着色汚れに弱いのがデメリットです。

1-3 セラミック

平均年数:約8〜10年 ※自由診療

セラミックは耐久性にすぐれ、変色しにくい差し歯の素材として知られています。オールセラミックで作った補綴物の寿命は、きちんと管理すれば20年とも言われているほど長持ちする丈夫な素材です。硬過ぎるため奥歯には向いていないとされます。

1-4 ジルコニア

平均年数:約8〜10年 ※自由診療

ジルコニアはセラミックの一種で、硬さだけでなくしなやかさも兼ね備えています。そのためセラミックよりも強度があり、強い圧力のかかる奥歯などにも使用できます。耐久性に優れ数十年にわたり長く使えて、着色などにも強いと言われています。

2.差し歯はなぜ寿命がある?原因と予防策

差し歯が実際どのくらい長持ちするかは、材質の特徴に加え、使用環境に大きく左右されます。想定されるトラブルとしては、次のようなものがあります。それを防ぐための予防策と併せて見ていきましょう。

2-1 金属の劣化

差し歯や土台を金属で作製した場合、サビなど経年劣化が起き得ます。また、金属は天然歯より硬い材質なので負荷がかかりやすく、差し歯、差し歯を固定する接着剤、歯の間でわずかな隙間ができていくことが多くあります。隙間から虫歯などのトラブルが生じ、差し歯の寿命を縮めてしまいます。

◆予防策

・金属以外の材質で差し歯を作る

たとえばセラミック(自由診療)は劣化しにくく、隙間から虫歯になることを防ぎやすい素材です。

・グラスファイバーで土台を作る(自由診療)

土台を硬い金属で作ると歯が負けてしまう場合があるので、金属ではない素材を使うようにします。たとえば、ファイバーコアというグラスファイバーで作る土台は、歯と同じ硬さなので入れても歯が負けてしまうことがありません。

2-2 プラスチックの変色

プラスチックは色素が付きやすいのがデメリットです。金属にプラスチックを貼るタイプの差し歯では、早ければ2、3年で変色が始まります。

嗜好品が多い方は着色も進んでしまいますので、差し歯の持ちに影響を与えます。歯として使用するには問題ないことが多いですが、見た目を気にする方であれば差し歯を交換したいと考えるかもしれません。

◆予防策

・変色しにくい材質の差し歯にする

たとえばセラミックは陶器でできているため、表面が丈夫でプラスチックのように細かい傷がつかず、飲食物による変色が起きにくいとされています。

2-3 歯茎の変色

差し歯をした歯の根元が黒ずんでしまうことがあります。金属にプラスチックを貼って作る差し歯では、差し歯の金属部分から金属が溶けて歯茎が黒ずむ原因になります。これをメタルタトゥーとも言います。

一般的に5年ほどでこうした症状が起こり、差し歯としての機能には何ら問題はないものの、見た目の悪さから差し歯を交換したほうが良いケースが生じてきます。

◆予防策

・金属以外の材質で差し歯、土台を作る(自由診療)

2-4 根が折れる

歯よりも強度がある材質の差し歯を使っていると、歯が金属に負けてしまい、歯の根が折れてしまうことがあります。たとえば虫歯治療で神経を抜いた歯や老化した歯は、徐々にもろくなっていきます。残っている自分の歯が薄い、差し歯の土台が太い、長い、などの条件が重なると差し歯の根が割れやすいです。

◆予防策

・歯ぎしり、食いしばりの癖があれば直す

歯ぎしりや食いしばりは本人が自覚していない場合も多いですが、強い圧力がかかり歯へのダメージを与えます。差し歯や歯の根元へ余計な圧力をかけないように、歯と歯が接触する時間をなるべく少なくすることが大切です。負荷を和らげるためマウスピースを使う方法もあります。自分に癖があるか気になる方は、歯医者さんに相談してみましょう。

・かみ合わせに問題がないか歯医者さんで診てもらう

歯の高さが合っていないなど、かみ合わせに問題があると、歯に余計な負担がかかってしまいます。噛んだときの違和感など気になることがあれば、小さなことでも歯医者さんに伝えて確認してもらいましょう。

・柔軟性のある材質の差し歯にする

歯と同じくらいの硬さの素材で差し歯を作れば、負担を和らげることができます。歯の位置により、保険適用できるかは異なってきます。差し歯が折れるリスクをどこまで抑えられるかは、残っている歯の薄さなど状態にもよります。

2-6 歯周病

歯周病が進行すると歯を支える骨そのものを溶かしてしまうので、差し歯を支えることもできなくなっていきます。

◆予防策

・歯医者さんの定期健診を受ける

歯周病は自覚症状がないときから意識的に検診を受けることが重要です。定期検診で歯科衛生士からクリーニングを受け、正しいプラークコントロールをすることが大事です。

・歯磨き指導を受ける

毎日の歯磨きがきちんとできていないと、歯周病が進む原因になってしまいます。自分では磨けているつもりでも、磨き残していることもあるため、歯医者さんで歯磨き指導を受けてみると良いでしょう。

3.差し歯の寿命が来たら!交換の費用目安

差し歯は永久的に使えるものではなく、いずれは交換しなければならない日が来ます。保険適用される場合と保険適用のない自由診療の場合があるので、それぞれ費用の目安を確認していきましょう。

3-1 保険診療の場合

硬質レジンクラウン:約3000円

ハイブリッドセラミックレジン:約9000円

保険適用される金属を使った差し歯にするのであれば、比較的安価に新しい差し歯を入れることができます。硬質レジンクラウンの費用は3000円(3割負担の場合)程度です。

前歯は保険でも白い歯にすることが認められており、前歯の真ん中から数えて4番目と5番目の小臼歯には、白いハイブリッドセラミックレジンを保険診療で入れることができます。費用は9000円(3割負担の場合)程度です。

3-2 自由診療の場合

オールセラミック:約6万〜15万円

ジルコニア:約8万〜17万円

ファイバーコア:約1〜3万円

オールセラミックは、保険適用の差し歯よりは高くなりますが、一本数万円から作ることが可能です。差し歯の大きさによって料金は異なります。ジルコニアで作る場合は、セラミックよりも2、3割高くなります。前歯に使用する場合は、透明度を上げるためセラミックを追加するのでそのぶん割高になります。

土台を金属ではなくファイバーコアで作る場合にかかる費用は、1本当たり1万円〜3万円程度かかります。自由診療の場合、歯医者さんによって料金が異なりますから、事前にしっかり聞いておきましょう。また、自由診療の歯には3年~10年程度の補償期間がついていることが多いです。クリニックごとに異なりますので確認しておきましょう。

4.まとめ

差し歯の寿命は比較的長く、正しく使えば数十年持たせることも可能です。しかし、素材によって強度が異なりますし、材質の特徴によるトラブルも起こりえます。

また、歯ぎしりや噛み締めなどのクセによって寿命が短くなってしまうこともあります。歯科治療にはさまざまな選択肢があるので、歯の位置や状態によっては、差し歯でなくインプラントやブリッジなど他の方法も併せて検討できるかも知れません。

保険適用の有無やそれぞれのリスクについて、歯医者さんで十分相談して決めるようにしましょう。

広島大学 名誉教授
濱田泰三名誉教授監修
略歴・プロフィール

【略歴】
1969年 大阪大学歯学部 卒業
1973年 大阪大学大学院 修了
1981年 広島大学 教授
2008年 広島大学 名誉教授
東北大学 教授
2012年 東北大学 客員教授
東北大学 教育研究支援員
東北大学 学術研究員
今日に至る。

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執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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